■15話■
「ルーマさんもそうですか?」
ここへ向かう途中に一行に加わったダークエルフのルーマと名乗る女性にペルシーは寂しそうに尋ねた。
「いえ、私は魔王様をお見かけしたので御挨拶に伺ったのですが、あの人間に正体を隠しておられたのでそのままついてきたのです」
「おぬしはわらわに気付いておったようじゃからな。うむ、楽にするがよい」
「ははっ!魔王様にお会いできて光栄でございます」
ペルシーはフレア達が地下へ潜るまで一緒に買い物に付き合うようにルーマを誘った。ルーマは喜んで承諾した。ルーマも元々そのつもりだったようだ。
「この迷宮は別に人間の所有物というわけではないですからね、攻略にくる冒険者も人間だけではありません、結構いろんな種族が来ます。ですが、ここに来る亜人は攻略よりも買い物しにくる場合が多いですね。人間の街よりも気軽に入れますから。私も迷宮に潜るよりは買い物しに来る事の方が多いです」
「ランプにロープにろうそく、ハサミに大きなリュック、堅パンにひょうたんに入った水、便利なものがたくさん売っていますねぇ」
「これは上層の地図か。何処まで攻略描かれた地図なんだ?」
「おう、兄ちゃん、タダ見はいけないんだぜ!ちゃんと買ってから見てくれ!この地図は地下2階まで俺がマッピングしたやつだ。アイテムがよく出現するポイントとかトラップとかもちゃんと印してあるから初めて潜るなら一枚買って行った方がいいぜ!」
「そういえば俺達ってだれか金持っていたっけ?」
「ホビットは基本的に物々交換ですから、人間達の使うお金はもっていません。すみません」
「そういえばわらわも持っておらんのう」
「あ、魔王様、よろしければ私がお支払いします。あまり持ち合わせはございませんが」
そう言って武器や道具、魔法薬や探索とはあまり関係の無さそうな日用品などを見ながら大きな箱をたくさん並べた一角まで来た。
「ここは商品がならんでおらんのう」
「ここは、迷宮で見つけたマジックアイテムや魔物の死骸とかを買い取ってくれるところです」
「へぇ、そういうのもあるんですねぇ」
「あまり高くは買い取ってくれませんが、結構何でも買い取ってくれるので重宝されているようですよ」
「あ、それなら私が村から持ってきたやつで何か売れるものあるかしら」
そういってペルシーは大きなカバンを下ろし中身を掻きまわし始めた。
「ここで売ったやつはどうするんだ?」
ロリコーンは番頭に質問してみた。
「ええ、いろんな用途がございますよ。
そのままでも使えるアイテムは向こうの店にそのまま並べますし、マジックアイテムの材料は知り合いの魔法店へ持っていきます。魔物の肉や牙やら目玉なんかいい魔法薬が造れるんです。牙や骨も面白い武器が作れますし、皮もその魔物の持つ魔法抵抗力を持った防具になりますからね。まだ用途が見つかっていない魔物や部位とかでも何かしらの使い道があるのではないかと研究されています。そういうものはあまり高くは買い取れませんが、なるべく何でも買い取るようにしていますよ」
「なるほどねぇ。そういう買い取り専門の店ってどこの迷宮にもあるの?」
「迷宮の出入り口付近で安全が確保できればいるのではないでしょうか?冒険者の方たちもいちいち街へ戻るよりなるべく多く探索に時間を割かれたいでしょうしね。知り合いなど、迷宮の途中で強力な結界を貼って商売している豪の者もいます。そっちは買い取りも兼ねる薬屋ですがね」
ペルシーはなにかそれっぽいのを見つけたのか、アイテムを取り出し話していた店主にいくらで買い取れるか聞いた。
「これはレフレ草ですね、そうですねぇまだ摘んだばかりでのようで瑞々しいですから、12枚で銅貨30枚でどうでしょうか?」
「あ、それここに来る途中に摘んでいたやつか。ルーマ、この値段はどうなの?」
「私も同じものを売ることがありますが、だいたいその値段です」
「は、はい、じゃあそれで」
「ありがとうございます。銅貨30枚です」
ペルシーは銅貨30枚を受け取った。
「一食ってだいたいどれぐらいするんだ?」
「銅貨5枚ほどですよ。ロリコーン様」
「へぇ、じゃあ結構良い値段で売れるんだあの草」
「治療薬の原料ですからね。栽培するのが難しいですが需要が高いので、天然のものが見つかればすぐに取られてしまいます」
ペルシーはさっき得た銅貨から18枚使って何かを買ってきた。
そろそろ、と言いフレア一行は迷宮の深部へ降りることにした。