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おいでませアパートIKEDAYAへ

作者: kaji

 とある町外れに一軒のアパートがある。その名も『IKEDAYA』。一説には築四百年とも言われ、徳川幕府が産声をあげた時からあるという何とも信じがたい話もあるアパートだ。駅から徒歩百二十分。部屋にはトイレ風呂付き。朝晩の食事付き。一階に食堂があり朝と夕にはアパートの住人で食卓を囲む。一階が管理人室と食堂。二階が住民の部屋となっている。

 だが、このアパートの住人はとある理由があって一人しか住んでいない。オーナーは若干、六歳の中田勝なかたしょう。いい声をしている勝の祖父中田彬なかたあきらと共にこのアパート『IKEDAYA』を切り盛りしている。

 勝の父は「石が俺を呼んでいる」といって旅に出てしまった。たまに絵葉書が届くが一向に帰ってくる様子がない。母は「神の声が聞こえる……。ちょっと行ってくる」と言って出ていってそれっきり帰ってくる気配がない。

 さらに追い打ちをかけるように本日ある文書が届いた。


『お宅のお母さんが、借金のかたにこのアパートをいれました。三ヶ月以内に出ていってください。もしくは三千万円払ってください』


 という内容の文書が届いた。初めはいたずらだと思ったが、勝が気になって子供電話相談室に相談したら、どうやら法的効力がある文書らしいのだ。こんなものが!

 じいさんに相談すると

「くだらねえな。この世の中は……」

と中田りょうじばりのいい声でたばこを吹かしながら言った。勝はこのじいさんは役に立たないとそうそうに見切りをつけて唯一の住人の一人で、昔からの知り合い藤林桜ふじばやしさくらに相談することにした。

 アパートの外に出ると、藤林桜(21)はコックの格好をして屋台の修理をしていた。

「シェフ。大変だ。こんなものが届いたんだ!」

「なあに。ふむ……」

 シェフ藤林は勝が持ってきた文書を真剣な顔をして読んでいた。ちなみに藤林桜の職業は料理人。自称『屋台レストラン』のオーナーだ。昼間屋台を引いて商売をしている。アダ名は『シェフ』。シェフと呼ばないと泣くので、面倒なのでみんなそう呼んでいる。

「お宅の息子さん勝君(16)をシェフに差し上げますだって。ねえ、聞いてよ。やったー」

「やったーじゃねえ! よく見ろ! 俺の母さんがこのアパートを売りやがったんだよ!」

「そういえばお母さん見ないね。どこに行ったの?」

「え! 今その話するの!」

「お父さんも見ないね。今度はどこの国に行ったの?」

「何か俺……頭痛くなってきた」

「まあ大変。わたし、今おかゆ作るから正露丸入りの特別お・か・ゆ」

「そんなものいらん!」

「じゃあリゾット作るね。レンジでチン。簡単ね」

「シェフなんだから作れよ!」

「えー。めんどい」

 そう言いながらシェフはいつの間にか準備していたカップラーメンを食べていた。だから、シェフなんだからカップラーメンなんて食べるなよ。しかもビーフジャーキー味……。

「おい。小僧」

「はい。なんでしょう」

 振り返るとじいさんが、気怠そうに右斜め四十五度を見つめながら立っていた。

「仕方がねえなあ。このビラを街中に貼れ」

 じいさんがいい声で手に持っていたビラを見せてくれた。


『人種性別銀河系異世界その他もろもろこだわりません。深くは追求いたしません。家賃は応相談。敷金、保証金無料、木造。希望の方のみ朝、夕の食事付き』


 どうやら住人募集のビラのようだ。ただ、勝手にこんな募集なんてかけてもいいのだろうか。じいさんにそこを聞いてみた。

「ばれなきゃいいんだよ。いいか小僧……この世の中やったもん勝ちだ。覚えとけ」

「はあ……そういうものですか」

「そうだ。そういうもんだ。それにこれを貼りさえすりゃあよ。すぐにアパートはいっぱいになって三千万何てあっという間だ。奥の手もあるしな」

 といい声で言った。奥の手というのも気になったが、怖くて聞けなかった。とにかく俺はシェフと手分けして一日かかって街中にビラを貼って回った。


        ◇


 数日後、さっそくビラの罠に釣られた第二号住人がやってきた。

「シュコー。お部屋貸してください。シュコー」

 ヘルメット着用で目の部分がサングラス、ラギラした銀色のエナメルの服を着ている人がアパートの玄関前に立っていた。ギラギラ部分が太陽に反射してとてもまぶしい。俺はああ変な人が来ちゃったなと思った。

「おお。タイムトラベラーじゃねえか! よく来たな」

 奥からじいさんがいつもよりテンション高めのいい声でやってきた。知り合いなのだろうか。というかタイムトラベラーって……。この日を境にアパート『IKEDAYA』は変人の巣窟になることになった。


短編第三弾目です。この三つのどれかを連載化したいと思っていますのでよろしくお願いいたします。


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