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無能王子の生存戦略。計画された婚約破棄。  作者: トウフキヌゴシ


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1/1

第一話、無能王子。

 自分こと、第一王子、”アレックス”は無能だった。

 両親は優秀な王と聡明な王妃。

 二人とも美丈夫であり美人であった。

 かく言う自分は二人の駄目な部分ばかり継いだのか、地味でパッとしない容姿であった。

 頭もよくない。

 勉強は平凡で厳しい家庭教師をつけられた。

「のみ込みがよくない」「理解するのが遅い」「覚えが悪い」

 とよく言われたものだ。

 そのためか、六歳の時に婚約者として選ばれた、”ジーニアス”公爵令嬢はとても優秀だった。

 王子妃教育のために王宮に上がる様になると、さらに比べられるようになった。


 一つ下の第二王子、”レオナルド”も優秀だった。

 自分と比べようもなく容姿も頭も良い。

 年を重ねるごとに、二人との差はどんどん広がっていった。

 王や王妃に、二人を見習いなさいと注意されたこともある。


 王宮内で、”無能王子”と言われていることを聞いた。


 「ごめんなさい、できないものはできない……」

 夜中にうなされて起きた。


 この国は十五歳から十八歳まで貴族学園に入学することになる。

 十四歳で王太子になった。

 その時側近を紹介される。

 騎士団長の令息、魔法師団長の令息、宰相の令息、大商人の息子。

 当たり前のように自分よりはるかに優秀だ。

 違うな。

 自分が無能だから優秀な人材を集めたのだろう。

 以上、婚約者のジーニアスを加えて学園の生徒会を運営することになる。

「大丈夫。皆は優秀だ」

 ――無能な自分が生徒会長になっても

 自分に言い聞かせた。


 学園生活が始まった。

 生徒会の仕事と王太子になったので政務もしなければならない。

 自分は無能だ。

 どうしても仕事も政務も滞る。

「こちらはやっておきます」

 政務は婚約者のジーニアス公爵令嬢が代わりにしてくれた。 

「ふう」

 ――こんなこともできないの

 という彼女のため息だ。


 同じように生徒会の仕事も優秀な側近たちがやってくれた。 

「(無能)王太子の間違いをなおすので、倍、時間と手間がかかる」

 と側近たちが笑いながら言っていたのを、入ろうとしたドア越しに聞いた。

「……すまない」 

 頭を下げその場から逃げ去った。


 婚約者の無表情な淑女の顔。

 影で笑っている側近たち。


 ――考えなければいけない

 何かを……だ。


 この時期に、”フェリシア”男爵令嬢に会った。

 元は平民で男爵家の庶子。

 優秀なので男爵家に引き取られ学園に来た才媛だ。

 入学当時から学園の首位を保っている。

 木の上の猫を助けているところを近づいた。

 やはり元平民だったのでマナーなどが至らないところがあるが、天真爛漫で癒される。

 ある計画のために事情を話して協力してもらうことにした。

 真剣な表情で聞いてくれた。


「そっか…… 王太子殿下は無能では……」

「何でもないです…… 協力します。 殿下」

 少し切なそうな表情で答える。


 それから、フェリシアと学園ではほぼ一緒に行動した。

 自分を、”アレク”と愛称呼びで呼ばせ、彼女のことは、”フェリ”と呼んだ。

 生徒会につれ込んだ。

 婚約者との交流も少しづつ減らしていった。

 学園で二年生になって第二王子、レオナルドが入学してからは、生徒会の仕事も政務もしなくなった。

 ”ジーニアス”と、”レオナルド”、側近たちに丸投げしたのである。

 学内でフェリシアと一緒にいるところを見せつけるようにふるまう。

 フェリシアと浮気しているとか、無能王子、”アレックズ”などのうわさが流れた。

 じつは、レオナルドは野心家で継承権争いで国を割る可能性がある。

 うわさも彼が流しているのだろう。 

 学園内で全生徒から後ろ指をさされるようになった。


「仕方がないんだ、……でもつらい」

「……いいんですよ、泣いても」

 学園の端にある目立たないベンチ。

「……くうう」

 フェリシアのお腹に顔をうずめて泣いた。

 その場面を見られていたらしく浮気が確定された。


 自分の評判は最悪のまま三年間の学園生活が終わる。

 明日は卒業パーティー、最後の仕上げをしなければならない。

 フェリシアにドレスを送りエスコートをする。

 計画通り、”ジーニアス”公爵令嬢は、”レオナルド”第二王子にエスコートされているようだ。


 さあ、行こう


 ギュッとフェリシアの手を握る。

 彼女が小さくうなずいた。


「ジーニアス公爵令嬢っ、ここに婚約を破棄するっ」

 王陛下と王妃の驚く顔を確認した。

「真実の愛に目覚めたからだっ」

「フェリシアと結婚するっ」

「フェリシアに嫌がらせや階段から突き落としたなっ」

 嘘だ。

「王太子妃にふさわしくないっ」

 声が震える。

 フェリシアが心配そうに自分の腕に体を寄せる。


「そのようなことはやっておりません」

 ジーニアスが言った。

「証拠はどこにあるんだ?」 

 レオナルドがジーニアスを自分の肩に寄せながら言う。

 側近たちも後ろでうなずいていた。


「そこまでだ」

 王陛下の声である。

 フェリシアと目配せした。

「学園に入学した時から、お前とジーニアス嬢には、”王の影”をつけてある」

 そのはずだ。

「ジーニアス公爵令嬢の無罪を保証しよう」

「アレックス、生徒会の仕事も政務もせず、そこの男爵令嬢にうつつをぬかすとは……」

「王籍をはく奪し、王都から追放する」

「そこの女と結婚でも何でもするがよいっ」

 よしっ、フェリシアに害がおよばなかった。

「このものたちを追い出せっ」

 レオナルドやジーニアス、側近たちは、”ざまあみろ”という表情で追い出される二人を見ていた。


 その日のうちに王都から出た。


「フェリシア男爵令嬢、今回は迷惑をかけた」

 無能は去り王宮内は平和が保たれる。

 ジーニアス公爵令嬢はレオナルドと再婚約されるだろう。

 フェリシアは王都の社交界には参加できなくなった。

 だが、男爵家の近隣の貴族と結婚は可能だろう。

 別れて歩き出そうとすると、

「どちらにいくつもりですか、元殿下」

「……無能は消え去るのみだ」

 国を割るより無能がのたれ〇ぬ方がましだ。

 

 ギュッ


 突然視界が暗くなる。

「元殿下、いえ、アレク」

「あなたは無能ではありませんよ……周りが優秀すぎただけで普通です」

「普通……か」

 小さな時からずっと比べられ周りから劣るとされてきた。

「ええ、普通です」

「くううう」

 フェリシアの胸で泣いた。

「ふふっ」

 フェリシアがアレクを愛おしそうに抱きしめた。 


 ちなみに、ここで逃げないとレオナルドに暗殺されていた二人である。


 その後、アレックスはフェリシアの男爵家に婿入りした。

 優秀なものは出来ないものの気持ちはわからない。

 無能とされるアレックスの追放で、レオナルドやジーニアス、側近たちは出来ないものを下に見るようになる。

 レオナルドが王になった後、アレックスの時の教訓から無能とされるものを王宮から追放し始めた。

 また、ジーニアスとの間に、三人王子を生むが後継者争いで王子同士が殺し合い、第一、第三王子が暗殺された。

 王宮内は殺伐とし、無能と呼ばれ追放されたものたちからクーデターが起こり、結局レオナルドを含む王家は処刑されることになった。


 辺境の小さな男爵領でアレックスとフェリシアは平和に暮らしている。


「ね、アレク」

 大きくなったおなかをさすりながらフェリシアが言う。

「何だい」

「あなたは無能ってよく言っていたけど、危険から逃げる力はとても優秀だと思うわ」

「そうかい?」 

「ふふっ、そうよ」

 その後、クーデターが起きた時はアレックスの手腕により男爵領に影響はなかったのである。


 二人は五人の子供をもうけ、たくさんの孫に囲まれて天寿を全うすることになった。


二人の墓石には、”真実の愛に目覚めた普通の夫婦ここに眠る”と書かれている。

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