表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
錬金系の落ちこぼれ四男、辺境領主として無双する  作者: 穏やかな旅人


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

71/136

第69話 :蒸汽爆発




金色の光と、冷熱が交差する世界が、舞台の上で鮮明な対比を描いていた。


今のオースティンは、完全に別人だった。左手からは刺すような冷気が放たれ、右手からは灼熱の炎が燃え上がっている。二つの相反する力が、彼の体内で完璧に共存していた。


先ほどまで凍えていた指先、肘、膝——冷気を使いすぎて硬直していた体の各部位が、炎の熱で完全に回復している。今や全身が完璧に機能していた。


「どうだ、レオン?」


オースティンの声が、氷のように冷たく響いた。


「これが、お前の見たかったもの——俺の本当の力だ」


『小僧、気をつけろ!』


オーグリの声が、レオンの脳裏に響いた。


『あの野郎、完全に覚醒しやがった! 冷気と熱気を同時に操るなんて、並の四つ星にできる芸当じゃねえ!』


レオンは歯を食いしばった。


(くそ……ゴールデンフォームの維持で、魔力をかなり消耗している……)


全身を黄金の光で包み続けた代償だ。今のレオンに残された魔力は、もう多くない。


「さあ、レオン」


オースティンが一歩踏み出した。


「本当の勝負を始めよう」


◆◇◆


「フレイム・ランス!」


オースティンの右手から、炎の槍が射出された。


レオンは横に飛んで避けた。だが——


「アイス・ランス!」


左手からは、同時に氷の槍が放たれていた。


「くっ——!」


レオンは体を捻り、辛うじて避けた。だが、着地の瞬間、膝が微かに震えた。


(まずい……体が重い……)


魔力の消耗が、確実に体に影響を及ぼし始めていた。


「どうした、レオン!」


オースティンが叫んだ。


「さっきまでの威勢はどこへ行った!」


オースティンは両手を前に突き出した。


「デュアル・バレット!」


氷の弾丸と炎の弾丸が、同時に放たれた。無数の弾丸が、レオンに向かって殺到する。


「ゴールデンフォーム——」


レオンは全身を黄金の光で包もうとした。だが——


光が、薄い。


さっきまでの輝きが、明らかに弱まっている。


「がっ——!」


炎の弾丸がレオンの肩を掠め、氷の弾丸が脇腹に直撃した。


レオンの体が、よろめいた。


『小僧! 魔力が足りねえ! ゴールデンフォームを維持できなくなってるぞ!』


「分かってる……!」


レオンは歯を食いしばった。だが、体が言うことを聞かない。


◆◇◆


「はあ……はあ……」


レオンは膝をついた。肩と脇腹から血が流れ、息が荒い。


(くそ……魔力が……もう……)


全身を覆っていたゴールデンフォームは、今や右腕にしか残っていなかった。それすらも、薄く点滅している。


「終わりか、レオン」


オースティンがゆっくりと近づいてきた。


「お前の金色の光、綺麗だったぞ。だが——」


オースティンの両手に、冷気と熱気が渦巻いた。


「——所詮は二つ星だ。四つ星には勝てない」


『小僧、逃げろ! 今のお前じゃ、あの攻撃を防げねえ!』


オーグリが叫んだ。


だが、レオンの足は動かなかった。魔力の枯渇で、体が限界に達している。


「立てよ、レオン」


オースティンは冷たく言った。


「立って、俺に降参しろ。そうすれば、これ以上傷つけずに済む」


「降参……だと……?」


レオンは顔を上げた。その目には、まだ闘志が燃えていた。


「俺は……絶対に……降参なんか……」


「そうか」


オースティンの目が、冷たく光った。


「なら、力ずくで終わらせる」


◆◇◆


オースティンは両手を頭上に掲げた。


左手の冷気と、右手の熱気が——一点に収束していく。


「これは……」


観客席から、驚愕の声が上がった。


「冷気と熱気を、一つに……?」


「あんなことをしたら……」


氷と炎が、オースティンの頭上で螺旋を描きながら融合していく。白い蒸気が立ち上り、凄まじいエネルギーが渦巻いた。


「デュアル・インパクト——」


オースティンが叫んだ。


「——蒸汽爆砕!」


圧縮された蒸気の塊が、レオンに向かって放たれた。


『避けろ、小僧!!』


オーグリの絶叫が響いた。


レオンは咄嗟に体を捻った。残された魔力を全て足に集中させ、横に飛ぶ。


蒸気の塊が、レオンのすぐ横を通過した。


(避けた——!)


だが、次の瞬間——


◆◇◆


ドォォォォォォンッッッ!!!


蒸気が舞台の床に着弾した瞬間、凄まじい爆発が起きた。


高温高圧の蒸気が、一瞬で膨張した。爆風が舞台全体を吹き荒れ、石畳が砕け散った。


「きゃあああ!」


「な、何が起きた!?」


観客席から悲鳴が上がった。白い蒸気が舞台全体を覆い尽くす。


「がっ——!」


レオンは直撃を避けたはずだった。だが、爆発の衝撃波が、彼の体を容赦なく吹き飛ばした。


コントロールを失い、舞台の端へと——


その先には、先ほどのアイス・フィールドで生み出された、巨大な氷柱が林立していた。


『小僧、後ろだ!!』


オーグリの警告が響いた。


だが、遅かった。


◆◇◆


ドガァッ!!


レオンの背中が、巨大な氷柱に激突した。


「がはっ——!」


口から血が噴き出した。背骨に激痛が走り、視界が白く明滅する。


さらに——


パキィッ!


激突の衝撃で氷柱が砕け、鋭い氷の破片がレオンの体を切り裂いた。腕に、脚に、頬に——無数の切り傷が刻まれる。


「ぐっ……あ……」


レオンは氷柱の根本に崩れ落ちた。全身が悲鳴を上げている。背中の痛みで、息をするのも辛い。


蒸気が晴れていく。


オースティンが、ゆっくりとレオンに近づいてきた。


「まだ立てるか、レオン?」


その声は、冷たくも——どこか悲しげだった。


「……っ」


レオンは震える腕で体を支え、立ち上がろうとした。


だが、足が——動かない。


見下ろすと、両足首が氷柱の破片に凍りついていた。砕けた氷が足に張り付き、地面に縫い止めている。


「くそ……」


レオンは魔力を込めて氷を砕こうとした。だが、もう魔力がほとんど残っていない。ゴールデンフォームは完全に消失し、体は傷だらけだ。


「終わりだ、レオン」


オースティンが、レオンの前に立った。


「お前は良く戦った。だが——」


オースティンは右手を掲げた。炎が、その掌に灯る。


「——これ以上は、無意味だ」


『小僧……』


オーグリの声が、静かに響いた。


『……どうする?』


レオンは血に濡れた顔を上げ、オースティンを睨んだ。


その目には——まだ、光が消えていなかった。


「無意味……だと……?」


レオンは、笑った。


血に塗れた顔で、不敵に笑った。


「俺が……諦めるとでも……思ったか……?」


「何?」


オースティンの眉が、僅かに動いた。


「俺は……まだ……負けてない……」


レオンの目が、鋭く光った。


「この程度で……倒れると思うな……兄上……!」


【続く】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ