表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
錬金系の落ちこぼれ四男、辺境領主として無双する  作者: 穏やかな旅人


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

66/136

第64話 激突

「始め!」


審判の声が、演武場に響き渡った。


◆◇◆


観客席の片隅で——


エイドリアンは、舞台の上のレオンを見ながら、唇を歪めた。包帯を巻いた右腕が、無意識に疼く。


「へへへ、あいつ、本当に運が悪いな……」


エイドリアンは冷笑を浮かべた。


「レイノルドは、俺よりずっと強い。三つ星中期の実力は伊達じゃない」


言葉を途中で止め、エイドリアンはニヤリと笑った。


「レイノルドには、ちゃんと『情報』を渡しておいたからな……」


◆◇◆


一方、観客席の中央部では——


オースティンが静かに座っていた。青い目が、第三舞台を見つめている。


(レオン……この弟は、果たして戻ってきたのか)


無表情のまま、だが視線には僅かな関心が宿っていた。


◆◇◆


貴賓席では——


ティモシーが僅かに眉をひそめていた。


「レイノルドとは……厳しい相手だな」


隣で、ルーシーが両手を握りしめている。小さな顔には心配の色が満ちていた。


「ルーシー、あまり心配するな。レイノルドは三つ星中期だ。負けても、恥ではない」


ティモシーは静かに言った。彼はレオンのことを密かに気にかけていた。


だが、ルーシーは何も言わなかった。瞳は舞台の上の少年を見つめている。


(レオン様は……簡単には負けません)


小さく呟き、ルーシーは拳を握りしめた。


◆◇◆


観客席の別の場所では——


エヴィルがレオンを見つめていた。紫の髪が風に揺れ、紫の瞳には複雑な感情が浮かんでいる。


(レオン兄様……)


彼女は唇を噛んだ。レイノルドの実力は知っている。三つ星中期の魔力——それは、二つ星後期とは比べ物にならない。


(どうか、無事でいて……)


◆◇◆


第三舞台の上では——


レオンとレイノルドが、向かい合っていた。


レイノルドは背が高く、金髪を後ろで束ねている。その目には、冷たい光が宿っていた。


「レイノルド」


金髪の少年は、レオンの向かいに立ち、冷たく名乗った。


「レオン」


レオンは少しも怠慢せず、厳かに礼をして、低い声で言った。


「手加減はしない」


レイノルドはレオンを睨みつけながら言った。その目には、嫉妬と敵意が燃えていた。拳を握りしめ、全身に魔力を溢れさせる。


(この男は、俺をエヴィルの恋敵だと思っているのか……)


レオンは内心で苦笑した。


「望むところだ」


レオンは淡々と答えた。


レイノルドの両手に、赤い光が集まり始めた。火系の魔力——その気配は、図書館で会った時よりも遥かに強い。


「二人とも舞台に上がったのなら、始めよう」


審判は少し心配そうにレオンを見て、それ以上何も言わず、手を振って叫んだ。


「始め!」


◆◇◆


ドン——!


審判の声が落ちた瞬間、レイノルドの目は鋭くなった。足が地面を蹴り、土埃を巻き上げながら、レオンに向かって突進した。五指を開き、炎の魔力を纏わせながら、レオンの胸に向かって打ち込んだ。


——速い。三つ星中期の速度だ。


レオンは退くどころか、多くの驚愕の視線の中、一歩前に踏み出した。右手が素早く伸び、レイノルドの手首を掴み、手のひらで軽く叩いた。魔力を込めて、弾き飛ばす。


パシッ——!


「なっ——!」


レイノルドの攻撃が弾かれた。手首に痺れが走る。


——こいつ、二つ星後期の癖に——!


手首が弾かれた瞬間、レイノルドの体は突然移動し、レオンの反撃を避けた。両手に炎を集め、突然レオンの顔面に向かって放った。


「フレイムエッジ!」


炎の刃が連続で飛来し、まるで嵐のようだった。空気を焼く音が響き、その勢いは、誰もまともにぶつかろうとは思わないほどだった。


「フレイムエッジか」


レオンは眉を少し上げた。


——三つ星中期。魔力の密度が違う。


後退できないなら、正面からぶつかるしかない!


「ゴールデンフォーム!」


レオンの両腕が、金色の光に包まれた。


パシッ、パシッ、パシッ——!


金色の腕が、炎の刃を次々と弾いていく。


「ゴールデンフォームだと——!?」


観客席で、多くの者の目に驚きの色が浮かんだ。明らかに、レオンがこの年齢でゴールデンフォームをここまで修練しているとは思っていなかったようだ。


「部分硬化の制御が……前より遥かに精密になっている」


観客席の片隅で、ティモシーも驚きの表情を浮かべた。


「ふむ、悪くない……」


貴賓席で、グレアム公爵は髭を撫でながら、ゆっくりと頷いた。彼はレオンをムーンウェルに送り込んだ張本人だ。この程度の成長は、予想の範囲内だった。


「だが、レイノルドのフレイムエッジも、相当な腕前だ。しかも、三つ星中期の魔力がある。勝ちたいなら、まだ少し難しいだろう……」


その隣の老人は依然として鋭い目で形勢を見抜いていた。


◆◇◆


「ふん、ゴールデンフォーム程度で俺を止められると思うな!」


レイノルドは冷笑を浮かべ、さらに攻撃を強めた。炎の刃が次々と放たれ、レオンを追い詰めていく。


レオンは後退しながら、両腕で弾き続けた。魔力の消耗が激しい。汗が額に滲む。


「逃げるのか? 臆病者め!」


レイノルドは嘲笑しながら追撃した。


「エヴィル様は俺のものだ!」


「……」


レオンは無言で後退を続けた。舞台の端まで、追い詰められる。


観客席では、多くの者がレオンの敗北を予感していた。


「やはり、星の差は大きいな……」


「レオン、頑張ったが……」


だが——


その瞬間。


レオンの目が、鋭く光った。


『今だ、小僧!』


オグリの声が響いた。


◆◇◆


「フラッシュ!」


パァァッ——!


突然、眩い光がレオンの手のひらから放たれた。


「くっ——!」


レイノルドは思わず目を閉じた。視界が真っ白になる。


「ゴールデン・レイ!」


ドォン——!


一発目の黄金の光線が、レイノルドの腹部に直撃した。


「がはっ——!」


レイノルドは吹き飛ばされたが、何とか踏みとどまった。


「くそっ……!」


「ゴールデン・レイ!」


ドォン——!


二発目。


レイノルドは慌てて炎の盾を展開したが、体が大きく揺らいだ。


「ゴールデン・レイ!」


ドォン——!


三発目。


レイノルドの炎の盾が砕けた。


「がはっ……!」


レイノルドは地面に転がったが、すぐに立ち上がり、レオンを睨んだ。


「三発目だな……!」


レイノルドは勝利を確信し、冷笑を浮かべた。


「お前のゴールデン・レイは——最大三発が限界だ!」


体に残った魔力を全て集め、レイノルドは最後の攻撃を準備する。


「これで終わりだ!」


「フレイムバースト!」


巨大な火球が形成された。


「消え失せろ——!」


◆◇◆


だが——


レオンは、静かに手のひらをレイノルドに向けた。


「アビス・デヴァウラー」


小さく呟くと——


「なっ……!?」


レイノルドの体が、突然レオンの方へ引き寄せられた。


「何だこれは——!」


レイノルドは空中で無様に手足をばたつかせる。


その瞬間——


レオンは吸引力を解除し、手のひらに再び黄金の光を集めた。


「ゴールデン・レイ」


パァッ——!


四発目の黄金の光線が、レイノルドに向かって放たれた。


「馬鹿な——! 四発目だと——!?」


ドォォォン——!


◆◇◆


レオンの四発目のゴールデン・レイは、まるで黄金の槍のようにレイノルドを貫いた。


レイノルドの体は吹き飛ばされ——舞台の外の地面に、激しく叩きつけられた。


「がはっ——!」


レイノルドは血を吐き、地面に倒れた。立ち上がることさえできなかった。


◆◇◆


「おおおっ——!」


「勝った——! レオンが勝った——!」


審判は呆然としていたが、我に返って声を張り上げた。


「しょ、勝者——レオン・セレストーム!」


その声が響き渡ると、演武場は歓声と拍手に包まれた。


舞台の上で、レオンは深く息を吐いた。魔力の消耗が、激しい。


レオンは舞台を降り、倒れているレイノルドの前に立った。


「……エヴィルは、誰のものでもない」


静かに言った。


「彼女自身のものだ」


そう言い残し、レオンは観客席に向かって歩き出した。


◆◇◆


観客席では——


アレンが、目を輝かせて叫んでいた。


「レオン兄さん、すごい——!」


隣で、ルーシーは涙を拭いていた。


「レオン様……よかった……」


エヴィルは、静かに微笑んでいた。紫の瞳が、レオンの背中を見つめている。


◆◇◆


貴賓席で——


グレアム公爵が、僅かに頷いた。


「よくやった」


ティモシーも、満足げに笑みを浮かべた。


傍らの執事は、顔色がやや暗くなり、口を閉じて一言も発しなかった。


観客席の片隅で、エイドリアンは顔面蒼白になっていた。


「馬鹿な……」


包帯を巻いた手が、震えている。


◆◇◆


一方、観客席の中央部では——


オースティンが、静かに立ち上がった。


青い目が、レオンの背中を見つめている。


無表情のまま。だが、その視線には——僅かな認識が、宿っていた。


(レオン……お前は、確かに戻ってきたな)


オースティンの唇が、僅かに動いた。


(次は、俺と戦うことになるかもしれない)


(その時が——楽しみだ)


◆◇◆


レオンは観客席に戻り、席に座った。深く息を吐き、体内の魔力を整える。


『よくやった、小僧』


オグリの声が、脳裏に響いた。


『だが、まだ終わりじゃない。次の相手は——もっと強い』


(分かっている)


レオンは目を閉じた。


ベスト8——ここから先が、本当の戦いだ。


【続く】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ