表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
錬金系の落ちこぼれ四男、辺境領主として無双する  作者: 穏やかな旅人


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

50/136

第49話 二人の選択



離れに戻ったレオンは、椅子に腰を下ろし、二つの巻物を机の上に並べた。


一つは『閃光』、もう一つは『聖光の盾』。


クロード叔父から授かった、アシュモア家の秘伝だ。


「二つとも光系のスキルか……」


レオンは巻物を見つめながら呟いた。


正直なところ、レオンは以前から強力な防御魔法に憧れていた。『聖光の盾』という名前を聞いた時、少し心が動いた。


『小僧、迷うな。お前が選ぶべきは閃光だ』


オーグリの声が脳内に響いた。


「なぜだ? 聖光の盾の方が、防御力は高いんじゃないか? オースティンの熱力魔法を防げるかもしれない」


『お前は弟のアレンとは違う』


オーグリは厳しい師匠のような態度ではなく、まるで慈父のように説明し始めた。


『あの子は心が一つで、静かで集中力がある。聖光系の真髄に通じている。だから大祭司の下で聖光魔法を学び、聖光の盾を修行するのが最適だ』


「俺は違うと?」


『ああ。聖光の盾は、維持型の魔法だ。発動中は常に魔力を放出し続け、集中力を切らさずに保たなければならない。少しでも気が散れば、盾は崩れる』


「維持型……」


『お前は性格が落ち着きなく、一つのことに集中し続けるのが苦手だ。戦闘中に盾を維持しながら、相手の動きを観察し、反撃の機会を窺う——そんな器用なことが、今のお前にできるか?』


レオンは黙った。


確かに、オーグリの言う通りだ。自分は一点集中型ではない。複数のことを同時にこなすのは苦手だ。


『それに、聖光の盾は防御に特化している。盾を維持している間、攻撃に回す魔力がなくなる。お前のゴールデンフォームは攻撃型だ。防御に魔力を割けば、攻撃力が落ちる』


「なるほど……」


『対して、閃光は瞬発型の魔法だ。一瞬で発動し、一瞬で終わる。集中力を長時間維持する必要がない。お前の性格に合っている』


「閃光って、どんな効果があるんだ?」


『強烈な光を放ち、相手の視界を一時的に奪うスキルだ。目くらましの技——単純に聞こえるかもしれんが、戦闘では極めて有効だ』


「目くらまし……」


『考えてみろ。オースティンは四つ星の熱力系魔法師だ。熱力系の魔法を発動するには、対象を「見る」必要がある。視界を奪えば、魔法の精度は大幅に落ちる』


レオンの目が、わずかに輝いた。


「つまり、閃光で視界を奪って、その隙にゴールデンフォームで攻撃する……」


『その通りだ。この二つを組み合わせれば、四つ星相手でも勝機がある』


「なるほど……」


『だが、それだけではない。閃光を選ぶ本当の理由は、別にある』


「本当の理由?」


『閃光は、上位スキルの前置魔法だ』


オーグリの声が、少し真剣になった。


『極めた先には、「聖なる閃光」というA級スキルがある。これは単に視界を奪うだけでなく、相手の魔力回路を一時的に麻痺させる効果を持つ』


「魔力回路を麻痺……!」


レオンは息を呑んだ。


『つまり、敵は一定時間、魔法を使えなくなる。戦闘において、これほど有利なスキルはない』


「すごいな……」


『さらにその先には、「裁きの閃光」というS級スキルがある。これは閃光と攻撃を同時に行う究極の技だ。視界を奪うと同時に、純粋な光のエネルギーで敵を焼き尽くす』


「S級……!」


『もちろん、今のお前には遠い話だ。S級スキルを習得するには、最低でも七つ星以上の実力が必要だ。だが、道は繋がっている』


オーグリの声が、少し穏やかになった。


『聖なる閃光は、閃光を極めた先にある上位スキルだ。閃光で練り上げた「光の凝縮体」を昇華させたものであり、一脈相承だ。だから、閃光から始めても——』


「なるほど、つまり閃光は前置魔法で、将来的には聖なる閃光に発展できるということか。それなら確かに閃光を選んだ方が——」


「おい」


突然、背後から声がした。


レオンは驚いて振り返った。


クロード叔父が、扉の前に立っていた。腕を組み、呆れたような顔でレオンを見つめている。


「叔父上……! いつから……」


「五分前からだ」


クロードは溜息をついた。


「ずっとブツブツ独り言を言っていたぞ。『なるほど』『目くらまし』『魔力回路を麻痺』……一体、誰と話していたんだ?」


レオンは顔が熱くなるのを感じた。


しまった。オーグリとの会話に夢中になりすぎて、声に出していたのか。


「い、いえ、その……自分で考えを整理していただけです」


「ふむ」


クロードは怪訝そうな顔をしたが、それ以上は追及しなかった。


「で、どちらを選んだんだ」


「閃光にします」


レオンは即答した。


「ほう、迷わないのか? さっきまで随分と長く考え込んでいたようだが」


「考えた結果、閃光の方が自分に合っていると思いました。聖光の盾は維持型の魔法で、集中力を切らさずに保つ必要がある。正直、俺にはそれが難しい」


クロードの目が、わずかに光った。


「自分の弱点を理解しているか。悪くない」


「それに、閃光は上位スキルの前置魔法だと……」


レオンは慌てて言葉を切った。


それはオーグリから聞いた情報だ。普通の十二歳が知っているはずがない。


「前置魔法? 誰から聞いた」


「え、その……本で読んだことがあって……」


「ふむ」


クロードは再び怪訝そうな顔をしたが、深くは追及しなかった。


「まあいい。お前の言う通りだ。閃光は「聖なる閃光」への入り口になる。良い選択だ」


クロードは部屋に入り、窓辺に立った。


「それで、お前に話がある」


「話、ですか?」


「明日、時間はあるか」


「明日……? はい、ありますが」


「お前を、ある場所に連れて行きたい」


「ある場所……?」


レオンの心臓が、少し跳ねた。


『ほう、興味深いな』


オーグリの声が脳内に響いた。


「詳しくは、明日話す」


クロードはレオンの肩に手を置いた。


「今日はゆっくり休め。明日は早朝に出発する」


「……はい、叔父上」


「それと——」


クロードは少し言葉を区切った。


「独り言は、もう少し小声で言った方がいいぞ。誰かに聞かれたら、頭がおかしいと思われる」


「……はい」


レオンは顔を赤くしながら頷いた。


クロードは小さく笑い、部屋を出て行った。


◆◇◆


クロード叔父が去った後、レオンは大きく溜息をついた。


「危なかった……」


『ふん、お前が悪い。老いぼれとの会話に夢中になりすぎだ』


「師匠の話が面白かったんだ。仕方ないだろう」


『まあいい。それより、明日の修行場だ。光属性の魔力が濃い場所……期待できるな』


「ああ。母上が修行した場所か……」


レオンは窓の外を見つめた。


母親——エレーぜ・アシュモア。


病で亡くなった、優しい母。


その母が修行した場所で、自分も修行する。


何か、運命的なものを感じた。


『まあ、明日になれば分かる。今日はゆっくり休め。明日から本格的な修行が始まる』


「ああ」


レオンはベッドに横になった。


閃光——B級の光系スキル。


これを習得すれば、オースティンとの戦いで有利になれる。


そして、その先には「聖なる閃光」、さらには「裁きの閃光」という道が続いている。


二週間後——必ず、オースティンを倒す。


アレンのためにも、父のためにも、叔父たちのためにも。


そして——母の名に恥じないためにも。


負けるわけにはいかない。


【続く】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ