第36章 対決(上)
エイドリアンは相変わらず得意げだった。次の瞬間、レオンを足元に踏みつける光景を、すでに頭の中で想像しているようだ。
一方、レオンの様子は、多くの者を意外に思わせた。緊張した表情は見られない。むしろ、とても落ち着いているように見える。
傍らのエヴィルは、複雑な眼差しでこの少年を見つめていた。今日のレオンは、まるで五年前——まだ「天才」と呼ばれていた頃の、あの意気揚々とした少年を思い起こさせた。
本当にエイドリアンと戦うつもりなのか? 二人の間の実力差を知らないのか? エイドリアンが彼に恥をかかせようとしていることが分からないのか? それとも、本当に自信があるのか?
この瞬間、エヴィルの心は千々に乱れていた。少年を見つめながら、少し呆然としていた。
「本当に……戦うの?」
ついに、レオンが少女の傍を通り過ぎようとした時、彼女は小声で尋ねた。さりげなく、一筋の心配が滲み出ていた。
「ここから始める」
深く息を吸い、レオンは足を止め、低い声で言った。
その眼差しは、少女を長い間呆然とさせた。まるで悠久の時を超え、千年の滄桑を経てきたかのような、古びた長剣のように、人の心を揺さぶる。
レオンが彼女の傍を通り過ぎて初めて、少女は我に返った。振り返り、その背中を見つめた。彼が確固たる足取りで、ゆっくりと場の中央へ歩いていくのを見て、なぜか、この瞬間、彼女の心が少し痛んだ。
人混みの中で、議論が沸き起こっていた。場内の二人を見て、多くの者が面白がるような表情を浮かべている。
「あの出来損ないが人に挑戦するだと? 自殺行為だな!」
「まったくだ。でも、あいつは自ら恥をかきに行くのが好きらしい。へへ、しっかり見物しようじゃないか。きっと面白いことになる」
「本当にな。フェルディナス中で恥をかいたのでは飽き足らず、今度は自ら死にに行くとは。身の程知らずにも程がある!」
議論の声が、一つ一つ耳に入ってくる。一言一句、レオンの耳にはっきりと聞こえていた。
エイドリアンの顔の笑みはますます濃くなっていく。一方、レオンは沈黙していた。死んだような沈黙。冷たい目で周囲の者たちを見回し、口元に冷笑を浮かべた。
「今なら降参しても間に合うぞ」
場の中央に立ち、レイノルドは二人を見て、レオンに向かって言った。
普段はレオンと特に関わりはなく、むしろこの出来損ないを少し見下してさえいたが、この瞬間、わずかな同情が湧いてきた。この少年の境遇を思うと、一抹の憐憫の情が生まれた。
そのような眼差しに対して、レオンはむしろ嫌悪感を覚えた。憐れみなど要らない。自分で全てを証明できると信じている。
『小僧、周りの連中は皆、お前の醜態を見ようと待ち構えているぞ。思いきりやれ。こいつをぶちのめせ。ちくしょう、この老いぼれを舐めているのか。俺が力を取り戻したら、指一本でこの雑魚どもを片付けてやるのに。自分が何者だと思っているんだ!』
レオンの中で、オーグリは外の様子を全て見ていた。不満げに鼻を鳴らしている。
「始めよう」
深く息を吸い、レオンは毅然と言った。
体内の魔力がゆっくりと動き出す。次の瞬間、奔流のように激しく流れ始めた。
気勢が一瞬で高まり、周囲の者たちを一瞬呆然とさせた。だが、すぐに、彼らはそれを自分の気のせいだと片付けた。この出来損ないに、こんな気勢があるはずがない。
「へへ、小僧、自ら死にに来たんだから、遠慮はしないぞ!」
逃げ出さないのを見て、エイドリアンは陰険な笑みを浮かべて言った。
「無駄口を叩くな。戦うなら戦え!」
眉をひそめ、レオンは低い声で言った。
今、二つ星の後期に達した彼だが、実戦で使えるスキルはゴールデンフォームだけだ。普通の者なら、二つ星になった後、いくつかの基礎スキルを学び始める。だが、彼にはそれがなかった。彼の唯一の武器は、このゴールデンフォームだ。
だが、レオンは信じていた。このスキルがあれば、今日、エイドリアンに一矢報いるには十分だ。
「ウォーターバレット!」
予想通り、勝ちを急ぐエイドリアンが真っ先に大声を上げ、攻撃を仕掛けてきた。
ウォーターバレット——セレストーム家に伝わる基礎水系魔法の一つ。水の魔力を凝縮し、弾丸のように放つ術だ。
威力はそれほど高くないが、連射が可能で、牽制には最適だ。三つ星のエイドリアンが放てば、その速度と威力は二つ星のレオンを圧倒するはずだ。
たちまち、エイドリアンの両手から、次々と水の弾丸が放たれた。足を踏み出し、距離を詰めながら、容赦なく攻め立てる。
このスキルは、場にいる誰もが知っていた。セレストーム家の最も基礎的なスキルの一つ。二つ星になれば習得できる。
「こいつ……」
傍らのレイノルドが、眉をひそめて呟いた。
ウォーターバレットは基礎スキルに過ぎないが、三つ星の魔力で放たれれば、その威力は一般のスキルより強烈だ。最初からこれほど力を込めるとは、エイドリアンはレオンに重傷を負わせるつもりらしい。
漫天の水弾を見て、周囲の人々の中には、すでに幸災楽禍の眼差しを浮かべる者もいた。おそらく、レオンはこの攻撃の下、三秒も持たずに重傷を負うだろう。
後方で、エイドリアンの動きを見て、エヴィルの目にも一筋の冷たい光が閃いた。眉間に憂慮の色が浮かび、表情が少し心配そうになった。
「この程度の水遊びで、俺を倒せると思っているのか!」
迫りくるエイドリアンを見て、レオンは冷たく鼻を鳴らし、低い声で言った。少しも慌てた様子を見せない。
言葉が落ちると同時に、足が動いた。
幼い頃からバートン騎士に教わった体術——七年以上の修練で、この体術はすでにレオンの体に染み込んでいた。魔力が封じられていた五年間も、この体術だけは欠かさず鍛え続けてきた。今や、呼吸するように自然に使いこなせる。
目の前に、水弾が漫天に広がり、まるで全ての逃げ道を塞いでいるかのようだ。耳元では、水弾が空気を切り裂く音がヒュンヒュンと響く。
しかし、この瞬間のレオンは、心が水のように静かだった。魔力が両足に流れ込み、絶えず歩を進める。水弾が自分に当たろうとする瞬間、巧みに躱していく。
彼はまるで自分だけの世界に入り込んだようだった。外界の全ては彼と無関係になり、足元で熟練した歩法を踏み、目の前のエイドリアンはまるで排除されたかのように、彼の世界には自分一人しかいない。あの体術を修練しているかのように。
徐々に、何かがおかしいと感じる者が出てきた。元々騒がしかった観衆が、次第に静まり返っていく。目を見開き、エイドリアンが息を切らしながら、ウォーターバレットを次々と放ち、追撃を続けているのを見つめていた。
だが、レオンの体には、かすり傷一つ負わせることができていない。
三つ星のエイドリアンが全力を出しているのに、久しく攻め落とせない。触れることすらできていない。
一体、どういうことだ?
皆、顔を見合わせ、首を傾げた。レオンの歩法は一見単純に見えるが、肝心な瞬間にいつも攻撃を躱している。信じられない光景だった。
元々三秒も持たないと思われていたレオンが、今まで持ちこたえている。瞬く間に、エイドリアンはすでに数十発の水弾を放っていたが、全て躱されていた。
ザワッ——
短い静寂の後、人混みが沸き立った。目を見開いて、あの無表情な少年を見つめ、見物人たちは騒然となった。
どうして、この出来損ないが、三つ星のエイドリアンの全力攻撃の下で無傷でいられるのか。
よく見ると、目の鋭い者たちは問題の所在に気づいていた。一見単純に見える歩法に、玄妙な奥義が秘められている。
「どうしてこんな……」
最も近くにいたレイノルドが、真っ先に問題に気づき、顔色を変えて思わず呟いた。
遠くで、心配そうな表情を浮かべていた少女も、この瞬間、何かに気づいたようだった。眉が徐々に緩み、口元に淡い微笑みが浮かんだ。
「くそっ、この出来損ないが、逃げてばかりいないで正面から来い!」
攻撃が連続で空振りし、エイドリアンの心には怒りが充満していた。一撃一撃が、まるで海綿に沈み込むような、全身に不快感を覚える感覚だった。
次第に、焦りと苛立ちから、彼は攻撃の手を止めた。息を切らしながら、レオンに向かって怒鳴った。
一連の攻撃で、かなりの魔力を消耗していた。三つ星とはいえ、魔力は無限ではない。あっという間に三分の一を消耗し、何の成果も得られず、エイドリアンは発狂しそうだった。
「馬鹿か。俺がここに立って、お前に打たれろとでも言うのか?」
冷笑を浮かべ、レオンは軽蔑の目でエイドリアンを見た。
「くっ……いいだろう、お前、なかなかやるじゃないか。なら、正面から来い。俺は片手だけで相手してやる!」
周囲の囁き声に、エイドリアンは面目を失ったと感じ、全ての怒りをレオンにぶつけ、挑発的に言い放った。
「両手でも俺に触れられなかったくせに、片手で勝てると思っているのか?」
口の端を歪め、レオンは冷たく嘲笑した。
また、周囲から笑い声が漏れた。
エイドリアンの顔は、すでに豚の肝臓のような色になっていた。荒い息を吐き、レオンを睨みつけ、目が血走っている。
後方で、レイノルドの顔色も鉄のように青ざめていた。元々、エイドリアンに威張らせようと思っていたのに、まさかこんな結果になるとは。あの出来損ないは、いつの間にこんな歩法を身につけたのだ。
同時に、エイドリアンの不甲斐なさと馬鹿げた言動に、顔が赤くなるのを感じた。
【続く】




