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第31話 B級のスキル

レイノルドが去った後、閲覧室に静寂が戻った。


「さて」レオンは立ち上がった。「本来の目的を果たすか」


「本来の目的?」エヴィルが首を傾げた。「刻印の解読だけじゃなかったの?」


「ああ。ついでに、スキルの資料も探しておきたい。二ヶ月後の家族魔闘会に向けて、な」


エヴィルは頷いた。


「それなら、スキルの書架は向こうよ。案内するわ」


二人は書架の間を歩いた。三階の閲覧室には、古代典籍だけでなく、一族に伝わるスキルの資料も収められている。


「ここがスキルの区画よ」エヴィルが立ち止まった。「でも、ここにあるのはほとんどがE級かD級。C級以上は長老の許可がないと閲覧できないの」


「分かっている。今の俺の等級じゃ、高等なスキルは借りられないからな」


レオンは書架を眺めた。《基礎剣術》《魔力強化》《風歩》——確かに、どれも基礎的なスキルばかりだ。


エヴィルが気を遣うように言った。


「でも、基礎をしっかり固めるのは大事よ。E級やD級でも、極めれば——」


「ああ、そうだな」


レオンは数冊の巻物を手に取り、管理人のところで登記を済ませた。エヴィルと軽く談笑しながら、図書館を出た。


◆◇◆


エヴィルを離れの門まで送り、自室に戻る。


扉を閉めた瞬間、レオンは肩の力を抜いた。巻物を机の上に放り投げ、椅子に座り込む。


「ふう……」


水差しから水を注ぎ、一気に飲み干した。


「あいつ、本当によく歩くな……」


午後いっぱい、エヴィルに付き合って屋敷の中を歩き回った。刻印の解読、レイノルドとの一件、そしてスキルの書架——正直、疲れた。


『あの小娘、なかなか面白い来歴をしているようだな』


突然、部屋の中に老人の声が響いた。


気だるげに目を上げると、いつの間にかオーグリの霊魂体が部屋の中に浮かんでいた。幽鬼のように突然現れるのは、もう慣れた。


「エヴィルの来歴を知っているのか?」


『まあ、少しはな……』オーグリは目を細め、にやりと笑った。レオンが興味津々な目を向けると、急に口を閉ざした。『お前が知っても何の得にもならん。詮索しない方がいいぞ。言えるのは、あの小娘の背景はかなり強大だということだけだ』


レオンは白目を剥いて、心の中でオーグリに中指を立てた。


『ところで——』


オーグリは机の上に近づき、レオンが持ち帰った巻物を適当にめくった。その顔が、呆れたものに変わる。


『お前、こんなゴミを取りに行ったのか? 暇を持て余しているのか?』


「ゴミだと?」


レオンは口の端を引きつらせ、力なく呻いた。


「俺は今、ろくなスキルを持っていないんだ。昔は魔力の修行ばかりで、スキルなんて学んだことがない。一族で自由に学べるのは、このE級やD級のスキルだけだ。これを学ばなかったら、二ヶ月後の家族魔闘会で何を使って戦えばいいんだ?」


『ふん、どうせ老いぼれからスキルをせしめようって腹だろう……』


オーグリは老いた目でレオンを一瞥し、あっさりとその魂胆を見抜いた。


心の中を見透かされたが、レオンは恥ずかしがりもせず、肩をすくめて、期待に満ちた目でオーグリを見つめた。


『スキルなど、何が大したものか。お前が将来、錬金術を身につければ、高級スキルなど、向こうから献上しに来るわ』


オーグリは淡々と笑い、レオンの恨めしそうな顔など気にもしなかった。


「でも、今すぐ高級スキルが必要なんだよ、師匠!」


レオンは鬱々とした声で言った。


オーグリはレオンの鬱陶しそうな様子を見て、二度ほど大笑いし、首を振ってから、からかうように笑った。


『仕方ない。こんな哀れな弟子を持った運命だ。お前が人に叩きのめされて再起不能にならないよう、少し教えてやろう』


その言葉を聞いて、レオンの目が輝いた。この謎めいた師匠が、一体どんな等級のスキルを持ち出してくるのか、興味津々だった。


『「ゴールデンフォーム」という術がある。光の魔力を硬質化させ、自在に形を変える術だ。要求もそれほど高くない。二つ星の魔力があれば、ある程度の威力は発揮できる』


「何級だ?」


レオンは目を輝かせ、唇を舐めながら急いで尋ねた。


『等級か……まあ、B級というところだな。この術は昔、ある王国の宮廷魔法師が泣きながら俺に受け取ってくれと頼み込んできたものだ。彼の王国に伝わる秘術でな。だが、俺はこういうものにはあまり興味がなくて。あまりにもしつこく絡まれて面倒になったから、仕方なく引き受けて丹薬を練ってやったんだ』


オーグリは何でもないことのように言った。まるで道端のゴミの話でもしているかのような口ぶりだった。


「B級? 宮廷魔法師が泣きながら受け取ってくれと頼んだ?」


レオンの頭の上に黒い線が何本も垂れた。


自分の一族では家伝の絶学として崇められている最高のスキルでさえ、せいぜいB級止まりだ。なのにオーグリは口を開けば当たり前のようにB級、しかも王国の秘術を「興味がない」と……この強烈な落差に、レオンは笑っていいのか泣いていいのか分からなかった。


『目を閉じて精神を集中しろ。伝授してやる』


オーグリはさらりと命じると、指を伸ばし、レオンの額に軽く触れた。


頭が少し痛んだ。突然、大量の情報が脳内に流れ込んできた。突如として押し寄せる情報に、頭が少し膨張するような感覚があった。


《ゴールデンフォーム》——B級スキル。光の魔力を硬質化させ、自在に形を変えて操る術。


剣に変えれば、鋭い斬撃を放てる。


槍に変えれば、貫通力のある突きを繰り出せる。


盾に変えれば、敵の攻撃を防げる。


鎖や鞭、拳や爪——使い手の発想次第で、あらゆる武器に変形できる。極めれば、複数の形態を瞬時に切り替え、A級スキルにも匹敵する威力を発揮できる。


頭が徐々にはっきりしてきて、流れ込んできた情報を噛みしめた。しばらくして、レオンは軽く息を呑んだ。


B級スキルが、使い方次第でA級に匹敵する?


唾を飲み込み、レオンの目が少しぼんやりした。もしこのスキルを本当に習得したら、自分のこの二つ星の魔力だけでも、あの傲慢なエイドリアンに一矢報いることができるかもしれない……


『そう興奮するな』


オーグリの淡々とした言葉が、冷水のようにレオンの興奮を一気に冷ました。


『ゴールデンフォームは魔力の要求こそ高くないが、使い手の技量と発想力に大きく依存する。光をどう硬質化させるか、どんな形に変えるか、どのタイミングで変形させるか。お前のような頭でっかちには、うってつけの術だ』


「頭でっかちとは何だ」


『褒めているんだ。力任せに殴り合うより、頭を使って戦う方が向いているということだ』


レオンは少し複雑な顔をしたが、反論はしなかった。確かに、今の自分の魔力量では、正面からの力比べは不利だ。


「どうすれば習得できる?」


『まずは基礎からだ。掌に魔力を集中させ、光に変換し、硬質化させる。それができるようになったら、形を変える練習をする。やってみろ』


レオンは左手を持ち上げた。


掌に意識を集中させる。魔力を練り、光に変換し、硬質化させる——


淡い金色の光が、掌の上に凝縮した。


まだ弱々しい。小さな欠片程度の大きさしかない。だが、確かに硬質化している。指で触れると、固い感触があった。


「ゴールデンフォーム……」


『初めてにしては上出来だ。だが、その程度では小石にも劣る。投げつけても痛くもかゆくもないな』


「厳しいな」


『当然だ。二ヶ月で実戦レベルまで引き上げるんだぞ。甘いことを言っている暇はない』


オーグリは腕を組んだ。


『今夜から、毎晩修行だ。薬湯での魔法回路の修復、錬金術の基礎、そしてゴールデンフォームの練習。三つを並行して進める』


「睡眠時間は?」


『削れ』


レオンは顔を引きつらせた。


『冗談だ。半分はな。効率よくやれば、睡眠時間も確保できる。だが、楽な道はないぞ、小僧』


「分かっている」

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