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飲んだくれ無職のオッサン、公園で美少女に拾われ、迷宮に帰る  作者: たけすぃ


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過去は追いかけるには遠すぎて、未来は追いかけるには速すぎる9

 瞬間ドローンの映像がホワイトアウトする。

 ダンジョンアタック中に、人間が一人どこからか現れた。明らかな異常事態に俺はジャッジにコールを連打する。公式戦なので人間の審判も当然いる。


「何が起きたの?」


 モニターが一瞬のホワイトアウトから復帰すると同時に、御堂の声がヘッドセットから流れてくる。指示通りに飛んでくれたおかげで巻き込まれていない。


「魔法を弾いた(パリィ)したんだ」


 名前を呼ぼうとして躊躇する。


「彼女の得意技だ。リスクが高くて公式戦では一度も使ってないけどな」


 ついでに言うと、弾いた魔法がどこに飛ぶかも分からないし、弾いた瞬間にやたらと発光して周囲の人間が視界を奪われるので、俺が禁止した。


「“わお”最高にイカれてるわね」


 同じ近接アタッカーである御堂がその難しさを想像したのか、呆れたと言いたげに肩を竦める。


「それはそうと早く止めないと。マナトーカーは彼女を私達だと思ってるわ」


「ああ、そうだな」


 そう思いながら早くジャッジが動いてくれと、コールを連打する。

 試合中に相手チームとの通話は基本的にできない。


 早くコールを通して――。


「伏せろ!」


 そう叫んだ時には、御堂は退避した通路で伏せていた。

 当たり前だ、現場の方が情報量は多いし、彼女たちプレイヤーの反射神経は常人のそれを凌駕している。


 戦術担当が現場に細かい指示を飛ばすだなんて、何をやっているんだ俺は!? 彼女たちプレイヤーは、ゲームのキャラじゃないんだぞ!

 マナトーカーの遠距離アタッカーは初撃で仕留められなかったと悟り。今度は魔法を連打する。後先を考えていない猛攻に、絶対に一枚落とすという強い意志を感じる。


 感じるが、目標が違うんだと叫びたくなる。


「貴方の恋人イカれてるわ!」


 御堂が轟音と閃光から目と耳を守りながら叫ぶ。

 ドローンのカメラは白飛びしっぱなしで、役に立たない。


 退避できるなら通路の影まで下がれ、と指示を出したら無茶を言うなと文句を言われた。

 ジャッジからの返事はまだかと、催促のコール。


「何が起きてるのか分かりませんけども!」


 そこに四ツ橋からの通信。

 駄目だ、俺は本当に駄目だ。今になってやっと気が付いた。


 四ツ橋たちが移動を開始している。本来ならば御堂が奇襲を受けたのを確認してから動きだすはずだったので、彼女たちは俺の指示を無視した事になる。

 彼女たちは自分で考え判断し、行動する。


 戦術担当をゲームプレイヤーに喩える馬鹿が、関係者から嫌われる理由がこれだ。


「三人で合流してからそちらに向かいますわ!」


 一瞬考え、了解のビープ音を返す。できるだけ早く手札を増やすよりも、確実に手札を届けるというのが四ツ橋の現場での判断だった。俺はそれを尊重する。

 四ツ橋は意外と戦術担当の才能があるかもしれない。


「こちらジャッジです」


 男性の声、やっとで繋がったか。


「テトラコードの監督兼戦術担当です。今すぐマナトーカーに攻撃をやめさせるように伝えてください。彼女はプレイヤーではありません」


「了解しました、すぐに伝えます」


「できれば相手との通信の許可を――」


 ばばばば。

 あまりに驚きすぎて、脳内で言葉がバグった。


「何やってんの御堂さん!?」


 マナトーカーの魔法攻撃が途切れた瞬間に、御堂が再び大部屋にエントリー。

 そのまま一直線に左手通路に向かって走っていく。


「私が直接話して攻撃をやめさせる!」


 プレイヤーにジャッジとの会話は共有されていない。

 すでにジャッジとは連絡できたので御堂がリスクを負う必要はないのだが、彼女の思い切りの良さが想像以上だった。


 ついでに言うと御堂の脚力も想像以上だった。

 すぐにでもジャッジから連絡がいくはずだ、そう伝える間もなく躊躇なく通路にエントリー。遠距離アタッカーが待ち構えている細い通路に真正面から突っ込むのは蛮勇にすぎる。


 御堂のボディカムの映像がとんでもない軌道を描く。

 通路の壁を使った三角飛びどころじゃない。


 俺の動体視力がかろうじて、頭上を通り過ぎていく御堂を嘘だろ? みたいな顔で見上げるマナトーカーの選手二人の顔をとらえる。

 御堂が通路にエントリーした事で通路のドローンからの映像が使えるようになる。


 一瞬だけボディカムから目を離して、通路のドローン映像を引っ張ってきたら御堂がマナトーカーの一人を背後から羽交い絞めにして、喉に剣を押し付けながら相手を脅す所だった。


「攻撃をやめなさい、イレギュラーが発生しています」


 十七歳の少女が出してよい声音ではないよね。

 モニター越しで聞いてる俺も背筋が伸びそうになる。


「何を言ってるんだ?」


 ダンジョンアタック競技で人質を取られるという、おそらく人生どころかダンジョンアタック競技史上初の奇妙な光景に、マナトーカーの遠距離アタッカーが困惑している。


「貴方たちが攻撃しているのは、私達のメンバーじゃない」


 聞くだけで“うっす”と返事したくなるような声を出しながら、御堂が言葉を探すように黙る。

 ドローンがとらえた御堂の顔に、信じてもらえるだろうか? みたいな不安が見えた。


 急に年相応な顔を見せられ、久しく会っていない甥っ子に会いたくなる。


「その……、貴方たちが攻撃していたのは、五年前にダンジョンで行方不明になった日比谷 彩芽選手よ」


「アヤッち!」


 御堂に羽交い絞めされているヒーラーが叫んだ。


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