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飲んだくれ無職のオッサン、公園で美少女に拾われ、迷宮に帰る  作者: たけすぃ


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過去は追いかけるには遠すぎて、未来は追いかけるには速すぎる3

「あ……はい、わたくしの事も京と呼んでいただければ」


 声ちっさ! ツッコミを叫びたいのを我慢する。

 さっきまで自信満々というか高飛車というか、まさに縦ドリルヘア、みたいな京選手が急に顔を赤らめながら俯いて囁くような小声になる。キャラの急変が漫画じみていて心が追い付かない。


 急に直剣を胸に抱いてモジモジしだす京選手に御堂も戸惑っている。周囲がはっきりモノ言う人間ばかりなので対応に困っているのだろう。

 やめろ御堂、そんな助けを求めるような目で見られても、これは戦術担当の仕事じゃない。というかオッサンに求める物として間違ってるぞ。


 というか関西人以外に、お前急にキャラ変わりすぎやねーん、とか言うのは駄目なんだぞ? 俺は東京でそれを学んだ。


「お嬢! 突然素直に可愛さ出すのはやめてくだしゃあ! 相手さんが困ってるでしゃ」


 お前なんだその訛り、どこの訛りだ。

 再び関西人にツッコミを我慢させたのは、マナトーカーのタンク、森小路もりしょうじきよしだ。見た目が完全にチャラいヤンキーなのだが、マナトーカーで一番警戒すべき選手だ。


 前回は御堂、四ツ橋、谷町の三人で集中攻撃させても落とせなかったのだ。

 三人を無理やり通路に押し込まれた時は思わず声が出た。


 モンスター相手と違って人間相手には引き付けのスキルは効かない。人間は考えるからだ。対人にも対モンスターにも長けたプレイヤー、それが森小路選手だ。


「テトラコードのお歴々《れきれき》も困ってらっしゃるしゃ。ほらお嬢もこれ以上はキモさが出ちまうんで、さっさと戻るっしゃよ」


 森小路選手はこちらに頭をペコペコ下げながら京選手の襟首を掴むと引きずって行ってしまう。奇妙な訛りと見た目のせいで警戒心が削られるが、身のこなしが強者なのが怖くてたまらない。

 ああいう人が本当に苦手。


「うちの選手がほんと、すいません」


 でも大丈夫、三国監督を見ると安心できる。イケメンの癒し枠って大事だな。

 いやあお互いに大変っすなぁ、みたいな愛想笑いを浮かべあう。


 キュッと細くなる三国監督の両目。


「今回は前回のように“砂に”足を取られないように気をつけさせて頂きますね」


 もうやだー、この人たちほんとやだー。

 ギュッと力強い握手を交わして去っていく、実は腹黒イケメン枠だった三国監督の背中を見送る。相手が試合開始前に緊張していたのではなく、闘志を募らせていたのだと知ってげんなりする。


「随分と警戒されてるわね」


「俺を警戒した所で意味ないんだけどな。俺は御堂たちに勝てる方法を教えるだけだし」


「あら? 私達を緊張させたいのかしら?」


 御堂の言葉が分からなくて首を傾げてしまう。

 何が面白いのか御堂がクスクスと笑う。


「勝てる方法を教えて勝てなかったら、私達プレイヤーのせいって事でしょ?」


「ああ、なるほど」


 そんなつもりは無かったが、確かにその通りである。そういう風に取られても仕方がない。訂正しようと口を開きかけた所を御堂に制止させられる。


「いいわ、戦術担当。必ず完遂せしめてあげる」


 差し出される御堂の右こぶし。


「貴方が私に勝利を約束するように、私も貴方に勝利を約束するわ」


 オッサンになってもこんな事でテンションが上がるもんなんだな。

 俺は御堂の拳に自分の拳を打ち付けた。


 *


「あれが砂崎徹か」


 三国みくにれんは、五年前に起きた悲劇を機に姿を消した天才と会話したことがちょっと信じられなかった。

 自分たちの世代にとって、砂崎徹という戦術担当は伝説だった。


 まずもって経歴が異常だった。十六歳から高校の部活動ではなく、プライベーターとして同い年のメンバーだけでチームを結成し四部リーグに参戦。そのままストレートに二部リーグにまで昇格し、挙句にスポンサーを持たない完全なプライベーターのままで二部リーグを制覇している。

 極度の取材嫌いという事で、当時から謎多き人物だった。


 そのまま一部リーグに参戦するのかと思われた中での突然の解散の報道は、三国もよく覚えている。解散の理由がメンバーが就職するからと、珍しく取材に答えた砂崎徹の映像は衝撃的だった。

 その後、本当にチームは解散し、砂崎徹の本当の伝説が始まった。


 一部リーグのトップチームの一つ、ライトニングワイバーン。彼が選んだチーム。

 派手なアタッカー四枚構成は、ファンからの支持は厚かったが、成績自体は上位勢下位。


 実質的には中段勢のトップだったチームを、砂崎徹は戦術担当として参加した初年度に無敗の王者にさせた。

 三国は震えるほどに感動したのを覚えている。


 プレイヤーとしてはパッとせず、ダンジョンアタックから身を引こうとしていた自分に、再び火を灯したのは砂崎徹だった。

 その後に起きた悲劇により、砂崎が姿を消した事は三国にとっては表現しずらい程の悲しみだった。


 三国には確信があった、自分がダンジョンアタックを愛しているように、砂崎もきっとダンジョンを愛していると。そうでなければこんな野蛮なスポーツを何年もやらない。

 そのダンジョンに裏切られた彼はいったいどうなるのだろうか?


 それは想像するだけで恐ろしい事だった。

 だがそんな彼が帰ってきた。

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