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飲んだくれ無職のオッサン、公園で美少女に拾われ、迷宮に帰る  作者: たけすぃ


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サンドシザーの帰還3

 *


 自分でもビックリするのだが、彼女たちと知り合ってから、今日で三日目だ。

 そうなのだ、たった三日なのだ。


 たった三日で、俺はダンジョンアタック競技の戦術担当の席に付き、指揮を執り、そして旧友達と再会して酒を飲んだ。

 今までの五年間が嘘すぎて困る。思い出そうとしても思い出せない。


 いや当然か、かなり虚無ってた毎日だ。思い出そうにも思い出す内容がない。


「というわけで、これからのテトラコードの方針を話すわ」


 御堂がリビングルームで宣言する。

 ちなみに御堂が一人掛けのソファ、他は三人掛けのソファに座っている。そして俺は正座だった。フカフカのラグが膝にありがたい。


 時刻は十二月六日、土曜日の午前十時とちょっとだ。


「はい! リーダー!」


 青髪オレ少女の堺凛堂が手を上げる。


「お菓子食べていいか?」


「存分に食べなさい。でも掃除は後で自分でするのよ」


 初手で腰を折りにいく堺に御堂はまったく動じない。堺も気にした風もなくボリボリと持ち込んだ袋菓子を貪り始める。学生時代の緑髪を思い出す。


「私は正式に砂崎透に監督兼戦術担当を任せようと思う」


「オレは別に良いぜ、昨日勝てたし」


「杖でボッコボッコ」


 堺と谷町が、明らかに深く考えてないまま賛成する。谷町のは賛成かどうかは議論の余地があるが、まあとりあえずは賛成にしておこう。


「私は反対です!」


 四ツ橋が俺を指さしながらハッキリと反対だと告げる。


「無職のオッサンですよ!?」


 ぐうの音も出ない正論が飛び出してきた。


「今はテトラコードの監督兼戦術担当の職を得てるわ」


「椿ちゃんはそれで良いんですか? こんな国民年金も払えていそうにないオッサンで」


「失礼な払っとるわ」


 俺の反論は無視された。


「私は彼の指揮を信じるわ」


 御堂の声が俺に向いたのが分かった。何か言いたげ、というのは分かるがオッサンに求めるには高すぎる能力だ。


「その……あの……」


 たぶん御堂が言い淀むってのは珍しいんだろうな。俺以外の三人が驚いて息を飲んだ気配がする。


「私を……ムニャムニャムニャ」


 御堂が聞き取れないような小声で何かを呟く。俺とは違いダンジョンに潜っているせいで五感が常人離れしている四ツ橋には聞こえたのだろう。それでもです! と声を上げる。


「そうであっても! それは昔の話で……」


 四ツ橋が更に反論の言葉を続けようとして言い淀む。

 ちなみに俺は四ツ橋に無職のオッサンと呼ばれた時点から、じっと床を見つめている。


 つい数日前なら、おどけて無職のオッサンでーすと開き直れたと思うが、何故か今は強烈にぶっ刺さる。

 そんな顔しなくても、とは四ツ橋の声。


 誰の顔がそんな顔なのか? 気になって顔を上げたが、みんな普通の顔だった。

 四ツ橋が大げさに溜息を吐く。


「分かりました、分かりましたわ」


 初対面の時も思ったけど、コイツは演技っぽい仕草をする事で本音を隠すタイプだな。


「それじゃあ、暫くは様子を見る。それで駄目なら」


 四ツ橋がゴミを見る目で俺を見てくる。

 これは演技じゃなくて素だな、おじさん泣きそう。


「その時に改めて考えましょう」


 四ツ橋のその提案を御堂が受け入れた事で、俺の処遇は決まった。

 つまりこれからも彼女たちの指揮を執れる。


 自分でも驚くほどホッとしている事に気が付く。三日前の自分に言ったら信じるだろうか? 再びダンジョンアタック競技で指揮を執れる事に喜ぶ事になると。

 世界は本当に良く分からない。何が起きても好き勝手に回り続けるくせに、時折こんな風に理解しがたい急展開を与えてくる。


 〝だから楽しいんじゃない、ダンジョンも世界も。そして人生も〟

 そうか……そうだったな。懐かしい声を聞いた気がして胸が痛くなる。


 とりあえず今は彼女たちに言わなければならない。俺の正直な気持ちを。

 俺は手を上げて口を開いた。


「すまんが俺にも椅子をくれ、足が痺れた」


 俺は手を上げた拍子に、崩れたバランスを取り戻せずに顔面から崩れ落ちた。


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