表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/83

第3話「狭間を見つめる者」

淡い光の海の中で、私は静かに漂っていた。


見渡す限り、無限に広がる光の粒子。

まるで宇宙に散りばめられた星々のように、無数の魂たちがゆらゆらと揺れ、淡い光を放っている。


目を凝らせば、それぞれの魂が放つ色や輝きに個性があるのがわかる。

幼い魂の光は柔らかく、温かみがある。

老いた魂は深みを帯び、落ち着いた波紋を広げる。

善良な魂は澄んだ光を放ち、罪深い魂は濁りながらもどこか抗えない力を秘めている。


この広大な光の海に漂いながら、私は、天国と地獄を隔てる微細な均衡を感じ取ることができる。


狭間は、魂の力と意志の均衡で保たれている。

しかし、その均衡は決して揺るがないものではない。

近い将来、必ず、何かが触れ、波紋が広がる。


——近い。


胸の奥で、警告のような予感が淡く震えた。


私はこれまで、数え切れないほどの魂を案内してきた。

生まれたばかりの幼い魂、力に満ちた英雄の魂、罪を背負った悪しき魂、大小関係なく、すべての魂を見守り、導いてきた。光の道を辿る魂たちは、私の目からは一瞬たりとも逃れない。


天国に向かう魂も、浄化の試練のために地獄へ導く魂も、そのひとつひとつが狭間の均衡を微妙に揺らす。


だが、近い未来――この均衡は必ず崩れる。


血気盛んな地獄勢が狭間に踏み入り、混沌の火種を撒き散らす日が来るだろう。

歴史上の大罪人たちは、魂を操り、地獄の軍勢を率いる。

その時、天国側も黙ってはいない。

善良な魂を結集し、狭間を守ろうとする。

しかし、防壁である狭間の結界には限界がある。


私はその未来を、静かに予測している。

だが、あまり多くを語ることはできない。

言葉にしてしまえば、狭間の均衡に干渉する者たちに察知されるかもしれない。

だから、必要最小限の予測だけを心に留めている。

そのために、希望となる魂を探していた――狭間を救う可能性を秘めた存在。


そして、私は彼を見つけた。


生前、彼はあまりにも強大な魂を持っていた。

しかしその力は、彼の体とは釣り合わなかった。

病に蝕まれ、弱く細い体の中で、魂だけが輝き続ける。

その不均衡こそが、狭間を救う鍵になる――私は直感した。


私は決めた。


彼が狭間を選ぶだろうと。

私は直接彼を救うことはできない。

介入すれば魂の本来の成長を阻害するかもしれない。

私ができることは、サポートとして、必要な存在を彼に届けることだけ。

そのために、選ばれた魂――ソラの魂を、彼の元へ送ることにした。


だが、計画は完璧ではない。


地獄勢の微かな干渉がある。

意識のわずかな揺れ、魂の軌道のずれ。

思った通りに届かない可能性もある。

荒野の外れに降り立つかもしれない。


しかし、それでも構わない。

届く魂は、彼にとって必要な存在であるはずだ。

導かれるべき魂には、必ず出会いが訪れる。

偶然か、運命か、それは私にも完全には分からない。

もしかすると、予期せぬずれが、未来に奇跡を生むのかもしれない。

それもまた、狭間の計画の一部だ。


私は光の海に身を委ね、無数の魂たちの中で静かに待つ。

目に見えぬ未来を見据え、彼の歩む道を、そして狭間に生まれる新たな物語を、見守るために。


揺れる均衡の端に触れるたび、胸の奥がざわめく。

近い――その時、世界は大きく変わるだろう。


しかし、彼と出会う魂が存在する限り、希望は消えない。


私はさらに深く光の海に溶け込み、静寂に包まれる。


無数の魂が漂い、各々の光が交錯する。小さな光が連鎖する様は、まるで遠くの未来を暗示しているかのようだ。

どの魂が重要か、今は誰も知らない。

ただ、必然的に何かが動く――それだけが分かる。


そして、私は待つ。


彼の魂が目覚める瞬間を、荒野で立ち上がる瞬間を、まだ誰も知らない物語の始まりを。


微かに揺れる均衡の中、私は自らの役割を胸に刻む。

希望の芽は、必ずここで育つ。


未来は、まだ光に包まれた海のように、柔らかく揺れているだけだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ