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追放された王宮魔導師、下町で探偵業を始める。~腐敗した元職場がどうなろうと知りません。自分は助手の少女と自由気ままに生きたいと思います~  作者: あざね
オープニング

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1.初めての依頼。





「それで、ダリ? こっちの女の子は誰なんだ」

「オレにも分からないんだけどさ。ただ少しばかり、トラブルに巻き込まれてるんだ」

「……トラブル、って?」



 俺は二人を招き入れる前に、ひとまず座席周辺だけを整頓。

 その上で彼らから話を聞くことにした。相も変わらず遠慮しないダリは、数年振りというのにすぐソファーに腰を落ち着ける。しかし女の子の方はといえば、いささか怯えているのだろうか。身を縮めたまま座りもせずに立ったままだった。


 身だしなみから察するに、下町よりもさらに外れにある貧困街出身だろうか。

 ぼさぼさの黒色の髪にやや日に焼けた肌には、いくらか泥による汚れがそのままになっていた。手入れこそされていないのだが、磨けば光りそうな愛らしい顔立ちをしている。


 そんな年端もいかない少女が、いったい何のトラブルに巻き込まれたのか。

 俺が首を傾げていると、答えたのはやはり幼馴染みだった。



「昔から通りに、露店を出してる偏屈な爺さんいるだろ? そいつが店前を歩いていた彼女に、いきなり言いがかりをつけたんだよ」

「言いがかり、ってのは……?」

「――わ、私は盗ってません!!」



 少女が声を上げたのは、その時だ。

 震えるそれで、彼女は俺に向かって訴える。赤い色をした瞳いっぱいに涙を浮かべて、真っすぐにこちらを見つめてきた。

 そんな主張に対して、ひとまずゆっくり頷き返して落ち着くよう促す。

 そして、次にダリの方へと視線を戻した。



「物盗りの疑いをかけられた、と?」

「あぁ、そういうことだな」

「爺さんがボケ始めた、って可能性は?」

「そうだったら楽なんだが、あの爺さん金勘定も完璧だからな」

「…………ふむ」



 金勘定はともかく、ダリの目から爺さんの勘違い、ってことはないらしい。

 それなら話を次に進めるとするか。



「それで、盗られた品はどこに?」

「それがいつの間にか、アリアちゃんの懐にあったんだよ。小さなアクセサリーで、偽物の宝石が付いた安っぽいものだ」

「アリア――あぁ、この女の子の名前か」

「……うぅ」



 少女ことアリアをちらりと見ると、彼女はまた泣き出しそうに首を左右に振った。

 どうやら俺の視線の意図を勘違いしたらしい。だがしかし、その誤解をどうにかするより話を続けた方が早そうだった。そんなわけで、俺はダリに訊ねる。



「それだったら、どうしてお前はアリアが犯人じゃない、と?」

「いや、オレもその場にいたんだけどよ。不思議なことが起こったんだよ」

「不思議なこと……?」



 すると幼馴染みは頭を掻きながら、こんなことを言うのだった。



「信じられないかもしれないけどよ、オレには品物がアリアちゃんの懐に勝手に入ったように見えたんだ。宙に勝手に浮いて、スポって……な」――と。



 そのことを聞いて、俺はなるほど、と顎に手を当てる。

 ダリの話し方から察するに、その場面を実際に目撃したのはこいつだけ。他にも同じ証言があるのならば、このような事態にはなっていないだろう。

 品物が当人の意思に関係なく、勝手に懐に入るなんて――。



「――信じて、もらえるはずないです」

「ん……?」



 そう考えていると、絞り出すようにアリアがそう口にした。

 俺たちが彼女の方を見ると、このように続ける。



「お爺さん、言っていました。貧困街の子供なんて信用できない、って」

「………………」



 その言葉に俺は思わず閉口した。

 実際に貧困街の少年少女による犯罪は、絶対にないとは言い切れない。ただ必ず犯罪に走るかと言われれば、それはきっと違うのだ。それに『いまのアリアの状況』は、それこそ――。



「だからもう、ボクは――」

「そんなことないさ。少なくとも、俺とダリは信じる」

「……え?」



 諦めに満ちた彼女に、俺はそう告げた。

 当然、俺だって何でもかんでも信用する馬鹿ではない。ただ今回に限っては、どうしたってこの少女を無視することはできないのだった。

 だからおもむろにソファーから腰を上げ、アリアに言う。



「絶対に解決できるとはいえないけど、任せてみてくれないか?」



 努めて笑顔で、真っすぐに。

 すると少女は驚いたあと、泣き出しそうな表情になってから頷いた。




「よろしく、お願いします……!」



 


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