プロローグ 濡れ衣を着せられた魔導師。
新作です(*'▽')ノ
ハイファンですが、なんというか推理ファンタジーになるかな。
バトルもあるのでジャンルはここにしましたが、後々変えるかも???
「アクス、お前は本日限りで解雇だ。……王宮から追放処分とする」
――ある日のこと。
俺がいつものように業務を開始しようとしたら、嫌味たらしい上官の呼び出しを受けた。そして言い渡されたのは、理由不明の解雇。しかし普通なら狼狽えるような事態でも、不自然なほどにこちらの心は凪いでいた。きっといつか、こんな目に遭うと理解していたからか。
「意味が分からないが、一応は理由を教えてもらえますか?」
しかしながら、その原因くらいは訊いておこう。
そう考えて上官に問いを投げると、彼は眉間に深い皺を寄せて答えた。
「その口振りだと、反省していないようだな。卑しき平民出身らしい浅ましさだが、我々の目は欺けない。大金に目が眩んだのだろうが、まさか公費の私的な無断流用を行うとは……バレないとでも思っていたか?」
「念の為に確認しますが、その一件に自分が関与した証拠はあるのですか?」
「証拠など、後からいくらでも見つかるだろう。由緒正しき家柄の者たちが働く場において、金に困っていよう無様な奴は一人しかいないのだからな」
「…………」
どうやら取り付く島もない、というやつらしい。
それどころか決定的な証拠すらなく、こちらの出自だけで一方的に罪ありきと断じてきているのだった。ここまで頭が腐っているとは流石に思っていなかったのだが、どうやらある種で俺は彼らのことを見くびっていたらしい。
そして、そんな場所に留まる理由こそない。
俺はそのように思ったので、念のため上官にこう訊ねた。
「処分は解雇、追放だけですか? それなら俺は今日にでも出て行きますが」
「あぁ、この一件は国王陛下の耳に入れるまでもない。あの方の心をかような些事で、不要に波立たせるわけにもいかないからな」
つまり上には報告せず、名目上は俺が依願退職したことにするのか。
上官の不自然な対応と言動から、今後の動きについておおよその憶測が立てられた。もっとも今後のことなど自分には関係のないこと。こんな奴らと縁が切れるのなら、そのように処理された方が万倍もマシだと感じられた。
そんなわけなので、俺は形式的に礼をしてから上官の執務室を出る。
退室の際に嘲笑うような声が聞こえたが、まったく気にならなかった。
そうして俺、アクス・オーレイルは数年勤めた王宮を解雇。
紛れもなく無職の庶民へと戻ったのだった。
◆
扱いこそほぼ解雇であるが、名目上は依願退職。
取り立てて制約があるわけでもなく自由になったので、これまでの貯金がそれなりに手元に残っていた。これだけあれば、生まれ育った下町でしばらく生活するには十分だろう。
次の仕事は追々探すことにして、まずは――。
「しばらく帰らない間に、ずいぶんと寂れたな……」
空き家も同然となっていた実家の掃除から。
中に足を踏み入れると、そこにあったのは大量の魔導書や関連する資料。無造作に積み上げられた本には、さらに分厚い埃が被せられていた。亡くなった両親が遺してくれたもので、俺が魔導を学ぶキッカケになったもの。
王宮勤めを始めてから帰省できず、ずいぶん悪いことをしてしまった。
だったら、数年ぶりの親孝行から再開しよう。
「えっと、それじゃ――」
「おーい!? アクス、本当に帰ってきたのか!!」
そう思って掃除道具を手にすると、ずいぶん懐かしい声が玄関先で。
俺は窓から軽く外に身を乗り出して来訪者を確認した。
するとそこには、髭面の巨漢。
「なんだ、やっぱりダリか。でも――」
一人は俺の幼馴染みであるダリ。
脂っこい体格に、粗暴な出で立ち。見慣れた姿に安堵した一方、俺は――。
「隣の女の子は、誰だ……?」
彼の傍らで小さくなってうつむいている少女。
その存在に、首を傾げるのだった。
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