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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

幸せ真っ只中のあなたへ、絶望のどん底を

奈落のような絶望のどん底を

作者: カカオ豆100%
掲載日:2025/10/03

幸せなハッピーエンド………?の続きで、中編です。こっちを見てから見ることをお勧めします

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ふにゃふにゃと笑い、僕の指を小さな手が力強く握っていた。なんて愛らしいんだろうか。ああ、これ以上の幸せはない。

僕たちは今、バルコニーで、持ち運びのできる玉座に座っている。

輝かしい栄光の中で。


「この子、アルに似て目が青と黄緑ね。」

「ああ、髪色は君に似ているよ、リリス」


愛しい我が子とリリスが目の前にいる。これで幸せでないはずがないのだ。

この子はまだ名前を付けていない。付けるのはひと月後で、この国の文化に準えて子がひと月無事に過ごせたら名付けする。

どんな名前がいいだろうか。まだ気が早いだろうか。この子はどんな子に育つだろうか。

そんな期待が膨らんでいく。


「名前はどんなのがいいかな。」

「こんなのはどうかしら?、レックスとか。」

「ああ、良い名だ。だが名付けはひと月後だな。さて、民に愛しき我が子が生まれたと伝えようか。」


侍女に王子を手渡しだことを見届けてから、僕は立ち上がり、バルコニーの柵の前へと移動して演説を行う。

国民たちを見れば喜びに満ち溢れている。

演説を終えればワッと歓声が沸き、花弁がばら撒かれる。

なんて、良い日だろうか。

我が子の誕生が国中から祝福される。

ああ、幸せだ!


ふと、歓声の中から悲鳴が聞こえた、そして歓声が静まり、悲鳴に変わっていく。

銀色がふわりふわりと紅を撒き散らしながら、こちらへと向かってくる。

そしてこちらを見上げたその顔は……忘れていた彼女のものだった。


バンッ

ドアが勢いよく開かれたと思えばそこには近衛騎士がいた。


「陛下!彫刻が!ラディア・アノンが…消えました!!」

「…本当か!?」

「アルっ!!」


僕を呼ぶリリスの声に振り向けば、髪色が違うが、きらめく細身の剣を僕に突きつけるのは、紛れもない。僕の婚約者であった人…


「アノン侯爵家長女、ラディア・アノン。アルフォンス国王陛下、並びにリリス王妃殿下にご挨拶申し上げますわ。」


そう感情もなく冷たく言い放ち、彼女は全てを見透かしたような笑みを浮かべた。その上っ面だけの笑みを見るとゾワッと背筋が凍った。


☆☆☆


銀髪に不気味に色の変わる瞳をした女がこちらを見て、薄っぺらい笑みを浮かべ、アルに細い剣を突きつける。


ラディア…アノン…?


「ど、どうして…?!どうして動いているの?!」

「どうして、ですって?…わからないのですね。」


私が思わず口にしたことをラディアはクスクスと嘲笑した。


「では教えてあげましょう。このわたくしが誰かを。…私は光の女神ルミナーラ・フローラが娘、ラディア。真の名をアウローラ・ガウディア。其方らの言う神の御子だ。愚かな人間よ。ふふっ」


先ほどの令嬢のような口調は見下すような口調に変わっていく。

女神様の子供だなんてそんなわけがない…

こんな…こんな女が…


私より優れているだなんて…

私がこの世で一番美しいのに!

一番美しくて一番優れている私がただの人間で、こんな女が神の御子なわけがない!


「う、うそよ!神の御子があなたなわけない!御子は、愛されているのは私よ!」

「己こそが御子だと言う其方は、我が母ルミナーラの姿を言えるか?」


女神様の姿だなんて見たことあるわけない!

御子は女神の愛し子だと、そう語られているのに…!


「そうであろう、言えぬであろう?御子は神から生まれるものではないと。そういう者とされてきたからなぁ?」


コロコロと鈴の音のように笑うこの女はどこまで知っているの…?

そういう者とされてきた?

隠されていたって言うの?!


そんなこと、認められるわけがない

私は、私は女神様と同じくらいに、幸せじゃないといけないのよ

全部、全部私が幸せになるためにあるのに!


「そんなことあるはずないわ。嘘だもの。私の幸福のためなのに。それなのに…なんで、 どうしてあんたが私より綺麗なのよ!この世で一番綺麗なのは私であるべきなのに!」


どうして!!


「ラディア!、御子がただの愛し子ではなく、女神様の子供なら、君が子供だって証拠がないじゃないか!?」

「ふふっ、では私に魔術をかけた魔術師はどうなった?魔術が使えなくなっただろう?これがどう言うことかわかるだろう?」

「なぜ…お前がそれを!…いや!そんな…まさか本当に…!」


神から生まれたなら、子は肉体を持つ神様…?

あの魔術師が魔術を使えなくなったのは……


「そんな…そんなの…嘘よ…」

「何一つ偽りなく、ただの事実だが、認められないか?そうだろうな、神を陥れたのだから。」

「…まさか、リリス…お前?!!」

「ち、ちがうわ!違うのよ!」


アルフォンスは私を疑い始める。


でも、私は悪くない

あの女が私より優れてさえなければこんなこと起こさなかった。


「私は悪くないのよ!あ、あんたが!あんたが悪いのよ!私より優れているあんたが!」

「私が其方より優れているのは当たり前であろう?人である以前に神なのだから」

「うるさいうるさいうるさい!!」


うるさい!

神なんてもうどうでもいいのよ!

誰が何を言おうと私は特別なのよ!


☆☆☆


リリスが豹変した。

聖女のように純粋な心を持った人だったのに。

今はまるで我儘な子供のようだ…


そう思うとリリスが心底気持ち悪いと感じてしまう。

でもどうしてあんなにもリリスのことしか考えないようになったんだ?

リリスに話しかけられる前は…

…リリスのことが、嫌で仕方がなかったはずだ


僕はリリスに、この女に魔術で操られていたんだ!!


「ら、ラディア!聞いてくれ!僕はリリスに操られてたんだ」

「なっ!アルっ、私を裏切ろうって、」

「そんなことは知っている。」

「っ!でも僕は!本当に君をっ!」


愛していたんだ、そう言おうとしたがラディアが薄っぺらい笑みを浮かべながら僕に目を合わせた。

その目は凍りつきそうなほどで、思わず息を呑んだ。


「だが、其方は私の言葉に聞く耳を持たなかった。お前にも非がないとは言わせない。」

「で、でも、お願いだ。助けてくれ!」


だって、いつまで経っても僕はラディアのことを愛している。だから僕のことを、助けてくれるだろう。

殺すなんてことしないだろうから。

僕は彼女に近づいてそっと彼女の顎に触れた。


そしてキスをしようとした。

彼女に信じてもらうために。

きっと受け取ってくれる。

そう思っていた。


そう思っていたのにラディアは無表情でなんの感情もなく僕の首に剣を突きつけた。

そしてなんの感情もなくただその言葉を発した。


「わたしはもう貴方を愛してなんかないわ」


いつもの口調でそう言い放った。

さっきの神のような口調で言われた方がどれだけ良かったか。

それほどまでに彼女の言葉は僕を絶望に突き落としたのだ。

僕は膝をつき、膝のズボンを握りしめた。


ああ、僕はなんてことをしてしまったんだろう。

僕があの時ラディアの言葉を聞いていれば。

婚約者がいる身でこの女に縋りつかれていい気にならなければ。


ふわりと白くて華奢なラディアの手が後ろから僕の耳を塞いだ。

そして何かを歌い始めた。



何も聞こえない。でも昔母上が話してくれた物語の中にこんな話があった。


太古の昔、愚かな1人の人間は神の怒りを買った。

怒った神は歌を歌った。美しく、儚く、それでいてどこか不安が募るような。

神の歌声には力が宿る。その感情が強ければ強いほどより強く、より強力に。

愚かな人間はみるみるうちにその身が溶け出すが何故か死なない。彼は神によって永遠の苦痛に縛られた。

神の怒りの歌は人間たちのその本能に、神の歌を聞くことがどれだけ危険で、絶望が待っているのか、叩き込んだ


これが神の歌についての伝承である。



ああ、 僕は彼女に歌を歌わせてしまった。


青かった空は薄暗く、澄んだ空気は澱み、そばにいたリリスはみるみるうちに老婆のようにしわくちゃになりガラスに映った自分を見て何か叫んでいる。


歌い終わったラディアは何かが足りなかった。


花が咲くように笑って、周りが笑っているのを見て嬉しそうにするラディアをこんなふうにしてしまった。

原因は僕にある。


すっと耳から手が離される。


「ラディア……すまなかった…」


そう言ってもラディアは虚な目向けるだけで、もう笑いもしないし泣きもしない。


それが分かると視界が潤んだ。


「アルフォンス、貴方は国外に送るわ。この国じゃ、もう生きていけないもの。」


ラディアはそういうと転移魔術の魔術陣を構築始める。

涙を溢さないようにしながら僕はラディアに質問をする。


「っ、君はっ…僕を、地獄に落とさなくて…いいのか?」

「だって貴方も陥れられた一人だもの。"アル"…昔は貴方といるのが楽しかったわ」


ラディアはいつからか僕のことを"アル"と呼ばなくなった。

きっとその時から僕は操られていたんだ。

ポロポロと涙が頬を伝う。


「じゃあね。さようならアルフォンス」


そう言われた瞬間僕は朝日のような光に包まれた。


僕はきっとこの罪悪感を抱きながら、生きていくんだ。

でも、それでも…いつの日か。

ラディアがまた、心から笑える日が来ることを願ってる。




ーーーー。


ーーーーーーーーーーー。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー。




アルフォンスの耳を塞いで、私は歌を歌った。


アルフォンスに歌を聴かせなかったのはリリアに操られたアルフォンスだけは国外に逃がすためだ。


「いやぁ!こんなっ、こんなの私じゃないっっ!!」


リリスはガラスに映った自分を見て狂ったように叫び出す。


私が塞いだ耳を離すとアルフォンスはただ茫然とその様を見ていた。

そして立ち上がって私を見た。


「ラディア……すまなかった…」


そう私に謝ってきた。顔を合わせるとアルフォンスは悲痛に眉を寄せていた。


「アルフォンス、貴方は国外に送るわ。この国じゃ、もう生きていけないもの」


何を言えばいいか分からず、逃がすことを伝え、転移用の魔術陣を構築し始めると、アルフォンスは目に溜まった涙を流さないようにするためか、少し上を向いた。


「っ、君はっ…僕を、地獄に落とさなくて…いいのか?」

「だって貴方も陥れられた一人だもの。"アル"…昔は貴方といるのが楽しかったわ」


久しぶりに"アル"と呼んだ。

初めて会った日は私が5歳。アルは6歳だった。

ちょうど、こんな場所で出会った。


それからというもの私たちはいろんなことをして遊んだ。

あの時が一番楽しかった。


アルフォンスはポロポロと涙を流す。

無情にも着々と魔術陣は完成していく。


アルフォンスとはもうお別れなのだ。

どれだけ恨もうと、どれだけ憎もうと

リリスに操られていた被害者で。

愛する友人であり、婚約者であったことは変わらないのだ。


もし、もしリリスが一番じゃなくていいと思っていたら

あの時忙しくても、違うと言っていたら

こんな結果にはならなかったかもしれない。


でももう何もかもが手遅れだから。


「じゃあね。さようならアルフォンス」


そう言った途端アルフォンスを朝日のような光が包み込んで消えていく。


「あぁっ!家が!私の子供たちがぁぁぁぁっ!!」

「いやだぁぁぁああああっ!!」

「きゃぁぁぁぁぁぁぁああああああああっ!!」


光が消えるの対称的に、みるみるうちに国中から絶叫が上がっていく。

それも当然だろう。幸せの源が全て崩れていくのだから。


牢に入れられた時。

誰一人として私の言葉に聞く耳を持たなかった。

アルフォンス以外。誰も操られてはいなかった。


私を悪だと言って刑に処した結果がこれだ。

愚かとしか言いようがない。


彼らができるのは、その命が尽きるまで、絶望するのことのみ。

どれだけ願おうと、抗おうと、絶望から這い上がることはできない。

希望は瞬く間に刈り取られる。そしてまた絶望を味わうのだ。


「ふふふっ……」


思わず出た笑い声が乾いた笑いで、自分でも驚いた。


狂ってしまったリリスを見ても何も感じない。


清々しい気持ちになるかと思ったが、何故か何もない。


喜びも、怒りも、悲しみも、楽しみも、感じられない。

まるで私の中の大切な何かが、なくなってしまったように。

そう思うと、上っ面だけでも浮かべていた笑みが剥がれ落ちた。



私はリリスを残して細身の剣を持って玉座の間に向かった。



まだ、私にはやるべきことがある。

この国を最後まで見届けるのだ。



でも、誰もこの地獄からは逃しやしない。


私に立ち向かってくるならば命はない。


子が生まれたなら、子を奪ってやる。

また、復讐の火種を生まぬように。


それが私を嗤った者たちへの復讐だから。


私は玉座に座った。




ーーー。




アウローラが玉座に座る。


それは絶望を与えられた者にはこう見えたのだ。


まるで伝説の魔王のように


冷たく、恐ろしいものに。


『インゲニクラテ』


そう言って彼女は天から地へ向かって指を振り下ろす。


次の瞬間に城には誰もいなくなった。


城にいたものは皆、外へ飛ばされたのだ。


その時代の者たちは口を揃えて彼女をこう呼ぶ。


『氷絶の悪夢』と。

なんかアルフォンスが見る人が見れば胸糞かなと思いました。

でも、罪悪感背負って生きていってくれると思いますけどね。

後編が大体はできてるのでそのうちまとめます。

なんかアルフォンス、書いてるうちにキャラが変わってる気が……?

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