第09話 始まりの町の混乱
──ドォォン!!
大地を揺るがす轟音と共に、空高く黒煙が立ちのぼった。
「はじまりの町で何かあったみたいだ!」
アキラが険しい表情を浮かべる。
「急ごう!」サクラが走り出し、タケルもモチを抱えて続いた。
石畳の街道を駆け抜け、やがて城壁の大きな門をくぐる。だが、町に足を踏み入れた途端──視界は煙に覆われ、辺りは混乱に包まれていた。
「何が起きたんだ!?」
「爆発だって聞いたけど……」
「ミラモンの暴走じゃないのか!?」
人々のざわめきが渦巻き、誰もはっきりとしたことは分からない。
その時、数人の大人たちが人々を押し分けて現れた。
先頭に立つ大柄な男が声を張り上げる。
「落ち着け! 俺はガロス、この町のギルド長であり管理人だ! まずは怪我人を確認しろ!」
ギルド員たちが散っていき、負傷者を探す。
だが煙は濃く、視界を遮っていた。
「……このままじゃ状況が掴めん。誰か、煙を吹き飛ばせるミラモンを!」
ガロスの声に、一人の女性が進み出た。
「任せてください! アクセス! ウィンドレア!」
召喚されたのは、風をまとった鳥型のミラモン。羽ばたいた瞬間、強風が巻き起こり、濃い煙が一気に吹き飛んでいく。
現れた光景に、人々は息を呑んだ。
建物の一角が崩れ、瓦礫が散乱している。
「……くそ、やられたか」ガロスが歯ぎしりした。
「去年は反対側の門を狙われた。だからそっちに警備を割いたのに……まさか空からとは」
アキラが低く呟く。
「……つまり、計画的な襲撃か」
ガロスは苦々しく言い放った。
「そうだ。しかも──よりによって狙われたのは“新人支給用の物資倉庫”だ」
「え……!」サクラが目を見開いた。
「ってことは……」タケルが呟く。
ガロスは両手を広げ、新人たち全員に告げた。
「残念だが、予定していた新人支給品はすべて失われた!」
「「ええええーーっ!!」」
新人たちの絶叫が一斉に響き渡る。
「どうするんだよ! 物資がなかったら、生き残れないじゃないか!」
「ひどい……これじゃ冒険どころじゃない!」
不安と怒号が渦巻く。
ガロスは肩をすくめ、わざとらしくぼやいた。
「まったく……厄介ごとばかりだ。いっそ何もなかったことにしてしまうか?」
「ギルド長、それはいけません!」
秘書役の女性、ミナがすかさず制止する。
真面目な声色に、一瞬だけ笑いが生まれた。
だがガロスはすぐに真剣な声へと切り替える。
「……現実は変わらん。繰り返す──物資はすべて奪われた。これから先、お前たちは“何もない状態”から始めてもらう」
その時、タケルの腕のモンマスが〈ピコン!〉と光った。
【新人支給が中止されました】
【残念ですが、最初からハードモード突入です】
「……お前は空気読め!」
周囲から総ツッコミが入り、場にかすかな笑いが広がる。
しかしその笑いも、すぐにかき消された。
だが、それでも消えない現実は重かった。
厳しい言葉の余韻が、新人たちの胸にのしかかっていった。




