第05話 宣言とリンク
山神殿の大広間に、再び静寂が訪れる。
残るはただ一人──タケル。
神官が低く告げた。
「タケル。お前の選ぶ道は──?」
観客の視線が一斉に突き刺さる。
「タケルって、適道なしだろ?」
「どうせ育成に流されるんじゃね?」
「いや、バトルなんて無理!」
笑い混じりのひそひそ声が広がる。
タケルは拳を握りしめ、唇を噛んだ。
(父さん、母さん……俺はもう決めたんだ)
「俺は──バトルの道を行く! ガイアスみたいなバトルマスターになるんだ!」
その声は広間に響き渡る。
観客がざわめき、どよめきが広がった。
「バトルだって!?」
「適道なしで!?」
「無謀すぎる!」
「でも……あの目は本気だ」
サクラが両手を握りしめて叫ぶ。
「タケル……すごい!」
アキラも静かに頷く。
ヒカルは鼻で笑った。
「はっ、落ちこぼれの夢物語だな」
空気が揺れ動き、神官が一歩前へ出る。
「──これで全員、己の“適道”を決めたな。
では次の段階──いよいよ“初めてのミラリア接続”を行ってもらう」
観客がざわめき、子どもたちは息を呑む。
「ミラリア接続は、人とミラモンを真に結ぶ儀式。これより先は、ただの遊戯ではない。心して臨め」
その言葉が重く響いた瞬間──。
辺りが暗闇に包まれ、観客が「また!?」「停電!?」とざわつく。
その時、天井から光のマイクがゆっくり降りてきた。
「Yo! 子どもたち、準備はいいかーっ!!」
ノリノリの声とともに、炎のエフェクトが弾ける。
「「またDJブレイズだーーっ!!」」
「待ってましたー!」
会場は一気に熱狂の渦へ。
光の中から現れたのは、実況でおなじみの男──DJブレイズ。
彼はマイクを掲げ、観客に煽る。
「ミラリア行きたいかーー!?」
「おおおおおおーー!!」
「おいおい、それじゃ聞こえねぇぞ! ミラリア行きたいかーーーッ!!?」
「うおおおおおおーーーッ!!!」
子どもたちの歓声は地鳴りのように響く。
DJブレイズは満足そうに笑い、指を鳴らした。
「OK! それじゃあ接続のお手本を任せようか。解説にふさわしいのは……そう! ミラリンピックの女王! 風より速く、美しきマリアぁ!」
舞台に光が集まり、長い髪を風になびかせる女性が現れる。
ミラリンピック女王・マリア。
観客から「キャー!」「本物だ!」と歓声が飛んだ。
マリアは優雅に一礼し、微笑む。
「皆さん、接続は難しくありませんわ。初期設定の接続ワードは──“ミラリア・リンク”。モンマスを目の前に掲げて唱えるだけで、ミラリアへ渡れます」
子どもたちが一斉に頷く。
だがマリアはモンマスを高く掲げ、静かに言った。
「けれど……私は、自分の言葉で誓います」
周囲の空気が張り詰める。
「風よ、我を包み、未来を導け!」
その瞬間、烈風が広間を巻き込み、マリアの身体を包んだ。
光が弾け、彼女の姿は消える。
「「すげえええーー!!」」
子どもたちは歓声をあげ、観客は圧倒された。
DJブレイズが笑う。
「見たか! これが接続だ! みんなも準備はいいか?」
真っ先に動いたのはヒカル。
「俺が一番乗りだ!」
モンマスを掲げ──「ミラリア・リンク!」
稲妻のような光に包まれ、姿を消した。
サクラとアキラが顔を見合わせる。
「ついにだね……」サクラが息をのむ。
アキラは口元を緩める。
「向こうで待ってろよ、タケル」
「お、おう……」
サクラはモンマスを掲げ──「ミラリア・リンク!」
ピンクの光が花びらのように舞い、観客席から「かわいいー!」の大合唱。
アキラは目を閉じ、静かに掲げる。
「……ミラリア・リンク」
青白い光が身体を包み、静かに消えていった。
残されたのはタケル。
「タケルもやるのか?」
「失敗するんじゃね?」
「いや、祈ればできるんだろ?」
観客のざわめきが重く響く。
タケルは震える手でモンマスを掲げる。
(俺だって……行けるはずだ! 信じろ!)
「──ミラリア・リンク!」
強く叫んだ瞬間、タケルの身体が白い光に包まれた。
視界が消え、浮遊感が走る。
──広間からタケルの姿が消えた。
「おお……!」「この瞬間は、何度見ても初心を思い出すな……」
観客の声が静かに広間を満たした。




