第45話 チヨの力、次なる村へ
光が収束し、宙にステータス画面が浮かび上がった。
【チヨ:変化キツネ衆】
ランク:D(忍)
レベル:7
HP:46
攻撃:21
防御:18
特性:影走り(素早さ上昇/回避性能アップ)
特殊効果①:【変化の力】
一定時間、人間の姿で活動できる。主人のモンマスレベルに応じて持続時間や姿が成長する。
特殊効果②:【勝手気まま】
主人のピンチ時や、自分の意思でモンマスから飛び出し、戦闘支援や助言を行う。
「……これ、すごいよね!」
サクラが感嘆の声をあげる。「人間の姿で一緒に旅できるんだよ!」
「ピンチの時に勝手に飛び出してくるとか、心強すぎ!」
タケルが思わず身を乗り出す。
「Dランクでこの数値……普通に即戦力だな」
アキラも頷いた。
すると、光の中からチヨがひょっこり顔を出した。
「拙者、役に立てるよう頑張るでごじゃる!」
少し照れた笑みを浮かべるチヨに、三人は思わず笑みを返した。
―――
「そういえば……」
サクラが画面を閉じながら思い出したように言った。
「私のモンマスレベル、3から4に上がってたの!」
「まじか! いいなー!」
タケルが羨ましそうに声をあげる。
「……なるほどな」アキラが顎に手をやる。
「つまり2体目のミラモンを仲間にすることが、レベルを上げる鍵かもしれない」
「それなら、次に進むのが楽しみだね!」
サクラの目が輝く。
「よし! 俺もアキラより早く2体目を仲間にしてやる!」
タケルが拳を握ると、アキラも負けじと笑った。
「いいだろう。勝負だ」
―――
「で、次の村ってどこにあるんだ?」
タケルの言葉に、アキラがモンマスを掲げる。
「リード! 地図表示!」
モンマスが本型に変化し、立体的な地図が宙に浮かび上がった。
「ここだ……ノワール村」
アキラが指差す。
「ノワール村?」タケルが首をかしげると、背後から声がした。
「ノワール村に行くんだね」
村のおばあちゃんが近づいてきた。
「ここから一日半くらいの距離さ。ただ気をつけな。あそこのノラミラモンは癖が強い。勝てばアイテムをくれるなんて話もあるけど、負けると一文なしや身ぐるみ剥がされる……なんて噂もあるよ」
「一文なし!?」サクラの顔が青ざめる。
「ゲームでよくあるやつだ!」タケルは逆に興奮気味だ。
「どの道、他のルートを回る余裕はない。行くしかないな」アキラが冷静に結論を出す。
―――
出発の時。
「エンド!」
アキラがモンマスを掲げると、光が収束し、再びスマートウォッチ型へと戻った。
「拙者も準備はできているでごじゃる」
チヨも背筋を伸ばす。
そこへタヌキ親分が見送りに現れ、腹をドンドン叩いて叫んだ。
「わしも腹太鼓で応援するどす!」
「応援は声でやれ!」タケルが即座にツッコミを入れ、場は笑いに包まれる。
タケルが拳を突き上げた。
「さらなる冒険へ――レッツゴー!」
「おー!」サクラとアキラの声が重なり、一行は新たな旅路へと踏み出した。
―――
半日ほど歩いたころだった。
「ふぅ、そろそろ休憩しようぜ。お腹すいた〜」タケルが大きく伸びをする。
「そうだな。いったんご飯休憩するか」アキラがうなずく。
「じゃあ、あそこの岩場にしましょう」サクラが指差した先へ三人は腰を下ろした。
―――
「オープン!」
タケルはモンマスをバインダー型に展開させ、得意げにカードを取り出す。
「セット!《ホロホロ鳥獣》の串焼きと、《フロスト根菜》の丸焼き!」
次の瞬間、香ばしい匂いを漂わせながら、料理が目の前に現れる。
「カードで食材持ち運べるって便利だよな!」
「ほんとね」サクラも頷いた。
だが次の瞬間――。
アキラが周囲を見渡し、眉をひそめる。
「……風が、変だな」
チヨの耳がぴくりと動く。
「この森……何か隠しているでごじゃる」
サクラが不安そうに振り返る。
「え、ちょっと怖いんだけど」
そのとき――木々のざわめきが、ぴたりと止まった。
ふわりと冷たい風が吹き抜け、森の道全体を濃い霧が覆った。
「うわっ、真っ白!?」タケルが慌てて立ち上がる。
「すごい霧ね」サクラが楽しそうに呟いた。
「なぜこんな急に霧が……」アキラの声が低く響いた。
―――
気づけば、並べた料理が忽然と消えていた。
「お、おれの非常食ーー!?」タケルが半泣きで叫ぶ。
霧の中には、いくつもの分かれ道が幻のように浮かび上がる。
そして――影のように黒いウサギが跳ね回り、挑発するようにこちらを見ていた。
「待ちやがれコラァ!返せー!」タケルが飛び出しかける。
「落ち着け。罠だ」アキラが鋭く止めた。
―――
そのとき、チヨが一歩前に出た。
瞳を閉じ、手を胸に当てる。
「……影しっぽ忍法・第六感!」
風の流れが変わり、霧の奥の“歪み”が浮かび上がるように感じられた。
「この風……幻影の向こうに本当の道があるでごじゃる!こっちだ!」
「まじかよ、直感!?」タケルが思わず叫ぶ。
「信じるしかないわね」サクラが頷いた。
三人はチヨに導かれ、霧の迷路を抜けていく。
―――
だが影ウサギが再び跳ね回り、進路を塞ぐ。
「チッ、しつこい!」タケルが構える。
モチが飛び出し、身体をぷるんと膨らませた。
瞳が淡く光り――。
【簡易発現】――からの【弱点攻撃】!
見抜いた影ウサギの急所を直撃し、黒い靄が弾ける。
さらにチヨが影しっぽ忍法・高速移動術で素早く動き、影ウサギを斬り抜けた。
「これで終わりでごじゃる!」
モチとチヨの連携技が決まり、影ウサギは霧の奥へ消え去った。
―――
「やったー!非常食、戻ってきた!」
タケルは大事そうに料理を胸に抱えかけ――
「ちょっと!服にタレがつくでしょ!」
サクラが素早く止めた。
「おっと……危ねぇ危ねぇ。大事に食べなきゃな」
タケルは慌てて持ち直し、料理を丁寧に包み直した。
「……やっぱり、チヨがいると助かるな」アキラが静かに言う。
「うん。頼もしい仲間が増えたね」サクラも微笑む。
ふと空を見上げると、すでに日は西に傾いていた。
「……今日は、ここまでだな」
アキラが静かに言う。
「さすがに夜道は危険よね」
サクラがうなずく。
三人は街道脇に簡易キャンプを張り、交代で見張りをしながら一夜を明かした。
「推薦申込書の提出まで、残り十日!」
―――
翌朝。
冷たい空気の中、鳥の鳴き声で目を覚ました三人は、手早く野営を片付ける。
「行こう。ノワール村までは、もう半日もかからないはずだ」
アキラの言葉に、二人がうなずいた。
再び街道を進み始めて、しばらくしたときだった。
朝の光が差す街道の先に、人影が倒れていた。
「お、おい! 人が倒れてるぞ!」タケルが駆け寄る。
「急いで助けなきゃ!」サクラも続く。
近づいてみると、倒れていたのはまだ若い村人風の青年だった。
衣服は泥にまみれ、顔色は悪い。手に握りしめたカードホルダーの中身は奪われ、残っているのはガラクタばかりだった。
倒れている青年が、かすかに震える唇を動かした。
「……た、助けて……」
―――
つづく




