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第44話 白狐の舞とチヨの決断

 白布が風に舞うように衣をまとい、灯籠の炎が彼女の足取りに呼応して揺れる。


 姫は舞の合間に、澄んだ声で言葉を紡いだ。

「……護りの森の姫として祈ります。ハルネ村に、そしてミラリアに、神の加護が届きますように」


 その瞬間、場の空気そのものが震え、変わった。

 宙に散った光の粒は夜空の星座のように連なり、広場の頭上に偽りの天を描き出す。

 大地は淡く発光し、社の柱は光の帯に包まれて神殿のようにそびえ立った。

 舞う袖から零れた花びらは現実の風を越え、観客の周囲に舞い降りて、森全体を幻想の庭園へと変えていく。


「……守り神の舞だ!」

 誰かの震える声が広がり、会場全体が息をのむ。


 親分タヌキの太鼓がドン、と鳴ると、姫の舞は一層華やぎ、灯籠の火が炎の鳥のように揺れ踊った。

 村人も旅人もただ見惚れ、時を忘れて立ち尽くした。


―――


 舞を終えた白狐の姫は、タケルたちの前に歩み寄った。


「き、綺麗すぎる……!」

 タケルは顔を真っ赤にして後ずさる。

「昨日の白狐の姫じゃん」

 サクラがあっさりと言うと、タケルは二度見した。

「えー! あの弱々しかった白狐なの!?」

「さっきの登場シーンどこ見てたんだ」アキラが呆れる。


 姫は微笑み、軽く頭を下げた。

「昨日は助けてくださりありがとうございます。力を取り戻し、こうして直接お礼を言えます」

「アキラさん、戦う姿がとても凛々しかったわ」

「サクラさんも、皆を導く姿が素敵でした」

 アキラとサクラは照れ笑いする。


 タケルが慌てて一歩前に出た。

「お、おれは!?」

「タケルさんは……モチと一緒に最後まで諦めずに戦っていましたね」

「……お、おぉ!」タケルは胸を張る。


―――


「チヨ、隠れてないで出てきなさい」

 姫に促され、チヨが影から現れる。


「昨日は……姫を助けてくれてありがとうでごじゃる」


 姫は仲間たちに頭を下げると、続けて言った。

「みなさんにお願いがあります。昨日、里に戻ってから……ずっとチヨが元気がなくて。

チヨは本当は、皆さんと一緒に冒険がしたいのです。どうか連れて行ってもらえませんか?」


「私は構わないけど……ね、二人とも?」

 サクラが仲間を見やる。


「俺たち、一緒に戦った仲間だし」

 アキラも真剣に答える。


「忍者娘がいたら旅がもっと面白くなるな!」タケルが笑う。


 しかしチヨは目を伏せた。

「でも……私は姫様を守る役目が……」


 そこへ長老が現れる。

「チヨ。姫のことは心配いらん。今回の件で、里も反省した。新たに護衛をつけることにしたからな」


「忍者娘、安心するでごわす!」

 親分タヌキが胸を張った。

「わしら変化タヌキ衆も協力するどす! 姫のことは任せるでごわす!」


 そう言った瞬間、手にしていた太鼓のバチをツルリと落とし、慌てて拾う。

「……ほんとに大丈夫か?」

 タケルがジト目で呟き、周りから笑いが漏れた。


―――


 サクラは一歩近づき、手を差し伸べた。

「チヨちゃん、一緒に旅しない?」

「どうするの、チヨ?」と姫も促す。


 チヨはしばらく俯いていたが、やがて顔を上げた。

(本当は……ずっと一緒に行きたかったでごじゃる。でも、ようやく言える)

「……仕方ないなでごじゃるな」


 その瞬間、サクラのモンマスが光を放ち、通知が浮かぶ。

【変化キツネ衆のチヨが仲間になりたがっています。仲間にしますか?】


「もちろん! チヨちゃん、ありがとう!」

 サクラがぎゅっと抱きつくと、チヨは赤面しつつも小さく頷いた。


「よろしく頼むでごじゃる!」

 チヨの頬に笑みが浮かび、観客から拍手が起こった。


「これで、また賑やかな旅になるな」

 タケルが笑い、アキラもうなずいた。


「……よろしくな、チヨ」アキラも短く言う。


「でめたし、でめたしですな」

 親分タヌキがドヤ顔で言う。


「もとはといえば、タヌキ親分のせいやろ!」

 タケルがツッコむと、場はどっと笑いに包まれた。


「推薦申込書の提出まで、残り十一日!」


―――


 翌朝。

「タケル、アキラ、おはよう!」サクラが声を弾ませる。

「おはよう」アキラは淡々と返す。

「なんか、いつもよりテンション高いな」タケルが首をかしげる。


「ねえ! 昨日仲間になったチヨのステータスを見てたんだけど……すごいことに気づいちゃったの!」

「えっ、何だよ!?」タケルとアキラが同時に声を上げる。


 サクラがモンマスの画面を掲げると、再び光が広がり――。


―――

つづく


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