第42話 幻影地獄決着! 白狐を解き放て
親分タヌキが再び腹をドンドンと叩くと、広間全体に幻影が渦巻き始めた。
「ケケケッ! 姫の力をもっと引き出すのじゃぁ!」
ドンドン、ドドドン──。
低い衝撃音が広間全体を震わせ、赤い灯籠がゆらめく。
次の瞬間、壁から天井まで影があふれ、変化タヌキの幻影が膨張した。
巨大な顔が壁いっぱいに浮かび、無数の手が伸びて仲間たちを掴もうとする。
巨大な影は天井を埋め尽くし、退路を完全に塞いでいく。
「やば……出口がねぇ!」
タケルが歯を食いしばる。
「こんなの……!」
サクラの声も震える。
檻の中の白狐の姫が苦しげに鳴き、助けを求める声が広間にこだました。
―――
「行くぞ!」
アキラの《成長する刃》がついに刀の形を取り、斬撃が光の弧を描く。
まとめて数体の幻影を切り裂き、霧散させた。
「おお……! 一段と鋭くなってる!」
サクラが息をのむ。
アキラは口元を引き締めた。
「この刃は俺の覚悟を映す。迷いがあるうちは、まだ鈍い」
そして、強く目を開く。
「でも今は違う――仲間を信じる力が、刃を通して伝わるんだ!」
その刀身は脈動するように光を強め、まるで仲間の想いと共鳴しているかのようだった。
―――
一方タケルは、モチを抱えて叫ぶ。
「モチ! なんか手がかり出して!」
ふわふわ文字がモンマスに浮かぶ。
モチスキル発動
【簡易発現:幻影は腹鼓のリズムに同調 → リズムを狂わせれば崩壊。ただし音痴注意】
「音痴注意!? どんな警告だよ!」タケルが叫ぶ。
「リズム……そうか!」
タケルは拳を打ち鳴らす。
「リズムを乱せばいいんだな!」
―――
親分タヌキがアキラに気を取られている今がチャンス!
タケルがモチを放り投げる。
「いっけぇ! モチ鼓アタック!」
モチがぽよんと弾み、親分の腹にペチンッ!。
「ぐおぉ!? や、やめろぉ!」
すかさず、モチが親分の腹に飛びつく。
「わ、わしの腹が勝手にラップしておるぅ!?」
「韻踏んでる場合か!」タケルが即ツッコミ。
「わ、わしの腹が勝手にドンドコしておるぅ!? わしの腹は楽器じゃないぞぉ!」
親分が涙目で叫び、幻影のリズムが崩れ出す。
―――
「クロウルガー!」
アキラが叫ぶ。
クロウルガーが飛び出し、親分タヌキの動きを押さえ込む。
「リリーフェア、檻を照らして!」
光が檻を包み、白狐の周囲の影が一瞬揺らいだ。
その隙を狙い、アキラの《成長する刃》が親分の腹を直撃。
「ぐぶぉぉ!」
親分がのけぞった。
「ぐぬぬっ!? わしのリズムが……!」
腹鼓の調子が完全に乱れ、幻影がふらついた。
「よっしゃ効いてる!」
タケルがガッツポーズ。
さらに追い討ちをかけるように、成長する刃が親分の腹へ再び直撃!
「ぐわあああっ!」
―――
しかし次の瞬間、幻影が逆に膨張した。
「な、なんだ!?」
リズムが崩れ、親分の制御を離れた幻影が暴走を始めたのだ。
広間は埋め尽くされ、壁がきしむ。
「助けてくれぇ! 幻影が……止められぬ!」
親分タヌキの声は悲鳴に変わっていた。
檻の中の白狐が潰されそうに震えている。
「このままでは姫が……!」
サクラが叫ぶ。
―――
「拙者が行く!」
チヨが影を蹴って跳び上がった。
「今度こそ、姫を守るでごじゃる!」
「チヨ、一人じゃ無理よ!」サクラが叫ぶ。
「仲間を信じて! 私たちもいる!」
だが幻影の波が押し寄せ、足場を崩していく。
サクラは必死に幻影を押し返しながら叫んだ。
「絶対に姫を救う! どんなことがあっても……!」
その気迫に、チヨの胸が震えた。
「……仲間を……信じるでごじゃる!」
「二人とも、姫を守るわよ!」
サクラが鋭く指示を飛ばす。
「了解!」
「了解でごじゃる!」
アキラとチヨが同時に返した。
「よし!行くぞ!」
アキラが刃を掲げる。
成長する刃が檻の紋様を斬り裂き、サクラの光が補助する。
チヨは渾身の忍法で檻に飛び込み、姫を抱きかかえる。
「今度こそ……守り抜くでごじゃる! 弱い自分はもういない!」
―――
「姫様ぁぁぁ!」
チヨが白狐を抱きかかえた瞬間、まばゆい光が広間を満たした。
白い花びらが宙を舞い、森を渡る風が流れ込む。
広間全体を包むその光は、幻影を一掃し、村を守る結界へと変わっていく。
森全体を覆うような穏やかな加護が戻ったのを、誰もが感じた。
「……成功した……!」
サクラが安堵の息をつく。
親分タヌキは地面に転がりながら呻いた。
「ケケケ……参ったわい……。だがの……わしの腹鼓は、芸としては一流なんじゃぞ……」
「いや、芸にすんな!」
タケルが即座にツッコミ。
サクラとアキラも思わず吹き出し、張り詰めていた空気がふっと緩んだ。
白狐は静かに鳴き、結界の力を取り戻したことを告げていた。
その声は、確かな安らぎを仲間たちに伝えていた。
―――
つづく。




