第41話 忍者狐の覚悟と成長する刃
奥の広間に突入すると、そこは赤い灯籠に照らされた異様な空間だった。
広間の奥には檻があり、中で白狐の姫が小さく震えている。
「ケケケッ!」
腹をドンドンと叩きながら、親分タヌキが大きく笑った。
「姫の加護がある限り、この幻影は無限よ! いくら斬っても湧き出すぞ!」
再び影が広がり、幻影のタヌキたちが列をなして現れる。
倒しても倒しても消えない──理不尽さに空気が張り詰めた。
―――
「オープン!」
アキラがモンマスをバインダー型に展開し、一枚のカードを取り出す。
「セット! 《成長する刃》!」
ぱっと現れたのは──ただの木の棒みたいな剣。
「なんだよ、それ! 竹刀かよ!」タケルが笑う。
だが幻影を斬るたび、棒の表面が削れ、光がにじみ出していく。
一度、二度、三度──刀身は確実に鋭さを増していた。
「……アキラ、前より鋭くなってる!」サクラが目を見張る。
アキラは口元を引き締めた。
「この刃は、俺の覚悟を映すんだ。斬れば斬るほど強くなる!」
―――
一方タケルは、転がっていたモチに声をかける。
「おいモチ、遊んでる場合じゃねえぞ!」
すると、タケルのモンマスにふわふわした文字が浮かび上がった。
モチスキル発動
【簡易発現:腹部が弱点。腹鼓と連動して幻影操作。】
「もっち〜……」という眠そうな文字フォント。
「お前、字まで眠そうだな! 寝ながら解析してんのかよ!」タケルがツッコむ。
「でも役立ってるわよ!」サクラが真顔でフォロー。
「……確かに」タケルが頭をかく。
「……よっしゃ! モチが弱点を見つけた! 俺たちでぶっ飛ばすぞ!」
タケルが拳を握ると、モチはのそのそ起き上がり、親分の腹に「もっち〜」と軽くペチン。
「ぐぬっ!?」
親分が一瞬たじろぎ、腹を押さえた。
弱点が確かに効いていることを示す一撃だった。
―――
リリーフェアが光の花びらを放ち、幻影を一時的に散らす。
「チヨちゃん、今助ける!」サクラが叫ぶ。
天井に吊られたチヨは、逆さのまま力なく呟いた。
「拙者は……忍者失格でごじゃる……。幼き頃、何もできぬ拙者を救ってくれたのは……白狐の姫……。今度は助けたかったのに……。忍者なのに、弱い自分が悔しいでごじゃる……。これが失敗したら、また一人ぼっちに……」
サクラは強く声を投げかけた。
「諦めたらダメ! 私たち仲間でしょ。仲間を守るのは当然でしょ! 少し待ってなさい! すぐに助ける。あなたは一人じゃないの!」
「仲間……」
チヨの瞳が揺れ、胸に熱いものが込み上げてくる。
―――
だがそのやり取りに、親分タヌキが気づく。
「ほぉ、忍者娘を庇うか……ならば優先的に葬ってやろう!」
幻影が一斉にチヨへ殺到する。
「狙いすぎだろ!」タケルが思わずツッコむ。
「……させない!」
サクラがモンマスを展開した。
「オープン! 二枚同時セット! 《共鳴の笛》《フラワーライト》!」
二枚のカードが同時に輝き、音色と光が広間を包む。
幻影は動きを止め、光に照らされて一瞬弱まった。
「二枚同時セット!? 反則だろそれ!」タケルが叫ぶ。
「リリーフェア! 今よ。チヨちゃんの縄を切って!」
リリーフェアは光の花びらでチヨの縄を切り落とした。
リリーフェアが光で支え、チヨが無事に着地する。
「……救われたでごじゃる……仲間って、こんなにも温かいものか……」
チヨの胸に、初めて「仲間」への信頼が芽生えた。
「サクラ……ありがとうでごじゃる」
チヨが素直に頭を下げる。
サクラは微笑んで頷いた。
「いいのよ。ここから反撃するわよ。気合いを入れなさい。気を抜いたらまた捕まるわよ」
「……あいあいさ! 影しっぽ忍法はこれからでごじゃる!」
チヨが拳を握り、逆さ吊りの恥ずかしさを誤魔化すように叫んだ。
タケルが思わず吹き出す。
「いやいや、影しっぽで捕まってたのお前だからな!」
「う、うるさいでごじゃる!」チヨは顔を真っ赤にして言い返す。
―――
「ケケケッ! だが甘いぞ!」
親分タヌキが檻をドンッと叩いた。
白狐の瞳がかすかに光り、苦しげな声をあげる。
檻の周囲に浮かんだ神聖な紋様は、歪みながら幻影をさらに強化していった。
「白狐が……守りの力を奪われて、操られてる……!」サクラの顔色が変わる。
親分は腹を揺らし、さらに嘲笑する。
「姫の力はまだこんなものではないぞ! 見せてやるわ!」
幻影が膨張し、広間全体を揺らす。
緊張が走る中──次の決戦が始まろうとしていた。
―――
つづく。




