第33話 推薦の知らせ
現実世界の教室。
タケル、アキラ、サクラの三人が並んで座っていた。
◇◇◇
「なあ、ガロスからのお知らせって何だろうな?」
アキラが腕を組む。
「タケル、また何かやらかしたんじゃないの?」
サクラがじと目。
「えっ、おれ!? やってないって!」
「いや、お前しかおらんだろ」
「即答ガーン……!」
◇◇◇
ガラッと扉が開き、先生が入ってくる。
「お前たちに知らせだ。ギルドから《グランディア中央学院》への推薦状が届いている」
「推薦……入学?」
「いや、タケル、アキラ、サクラ──お前たち三人は“推薦入試”だ」
「入試か……」
「つまり、受かるかどうかはまだ分からないってことね」
「が、ガーン!」
◇◇◇
先生が手紙を広げる。
「『この度、はじまりの町での《ブロルホーン討伐》における功績に伴い、ミラリア中央都市《グランディア中央学院》の推薦入試に推挙する。対象者タケル、アキラ、サクラ──以上三名』」
タケルは目を丸くする。
「……俺たちの名前が……」
◇◇◇
その時、さらに扉が勢いよく開いた。
「すみません、遅れました」
ヒカルが堂々と入ってくる。
「お前かよ!」
「ヒカル、お前のことも書いてあるぞ」
先生が視線を向ける。
「俺の?」
「『なお、天城ヒカル殿は特殊討伐部隊のリーダーとして素晴らしい活躍をしました。始まりの町ギルドは特待生として推薦入学に相応しいと認めます』……とのことだ」
「推薦……入学!? 入試なしで!?」
「その通りだ。ヒカルは“特待生推薦”。入学確定だ」
◇◇◇
ヒカルは鼻で笑う。
「フッ、当然でしょ。天城家は代々主席卒業なんだ。俺が落ちるはずない」
「でも、お前らは“推薦入試”。実力なければ普通に落ちるって有名だぞ。……せいぜい頑張れよ、雑魚タケル」
「ガーン!!」
◇◇◇
先生がプリントを配る。
「推薦入試を受ける者は、この紙をギルドに提出してくれ。詳細はギルドで説明される。……ミラリアの学校に通ったからといって、必ず成功できるわけじゃない。以上、解散!」
◇◇◇
「やった! なんかついてる!」
タケルが拳を握る。
「チャンスをもらった以上は、絶対ものにしてやる」
アキラの目が光る。
「私も……負けない」
サクラが静かに決意する。
「……フン。俺は特待生推薦。お前らとは土俵が違う」
ヒカルが背を向けたまま言った。
「それに──タケル。お前モンマスランクGだろ。最低でもEランクないと推薦、まず受からないって聞いたぞ」
〈ピコン!〉
タケルのモンマスが光る。
【統計開始以来、Eランク以下での推薦合格者は──】
――存在しません。
どんまい、タケル!
「……お前、心に刺さることをサラッと言うなよ」
タケルは肩を落とす。
「ぐぬぬ……なんか不安になってきた……」
「タケル、明日ギルド集合ね。紙、忘れないでよ」
サクラが釘を刺す。
「わ、忘れないって!」
こうして三人はそれぞれ帰路についた。
◇◇◇
タケルはまっすぐ家に帰らず、おじいちゃんの家へ。
「おじいちゃん、この前すすめてくれた《スパイスボアカレー》食べたよ」
「ほっほっ、どうじゃった?」
「激うま! 一口目から衝撃でさ!」
笑いが落ち着くと、タケルは息をのみ、真顔になる。
「……実は、グランディア中央学院の推薦入試、受けるかどうか悩んでるんだ」
「ほう……推薦入試を受けられるレベルとはやるのー」
「いや、まだまだだよ。でも──」
少し黙ったあと、おじいちゃんはゆっくり話す。
「タケル……お前の夢はなんじゃ?」
「俺の夢は……ガイアスみたいな《バトルマスター》になること!」
「そうか。ならば行くべきじゃろうな」
「えっ?」
「ガイアスは今でこそ伝説の名を持つが、入学時には“落ちこぼれ”のレッテルを貼られておったんじゃ」
「……あのガイアスが? 信じられない!」
「誰もが最初から強いわけではない。大事なのは挑んだことじゃ。お前も、やってみればいい」
◇◇◇
夜、タケルが帰宅すると両親が迎える。
「学校、何だって?」
母が聞く。
「グランディア中央学院の推薦入試、受けるかどうか聞かれた」
「ほう……それはすごいな」
父が頷く。
「一般入試の合格率は、数%にも満たない。推薦なんて、ごくひと握りだ」
「そ、そんなに……」
「父さんも挑戦したが、ダメだったな」
少し間を置いて、父は続ける。
「……だからな。推薦入試を受けられるだけでも、正直、鼻が高い」
「ちょっと! タケルにプレッシャーかけないでよ」
母が肘で小突く。
「自分のやりたい道を行きなさい」
「にいに、がんばって!」
妹サトが抱きつく。
「……ありがとう。みんな。明日ギルドに行くまでに、ちゃんと考えるよ」
◇◇◇
夜。
タケルは布団に入り、天井を見つめる。
(推薦入試……。俺なんかに、本当にできるのか……?)
まぶたを閉じると、ブロルホーンとの戦いが蘇る。
恐怖と興奮。そして──仲間と立った瞬間の胸の熱さ。
(ガイアスみたいになりたい。バトルマスターになりたい……!)
〈ピコン〉
――何や、お前悩んだって仕方ないやろ。
「……また心の声?」
――ランクGやけ。可能性なんてそもそもない部類や。
宝クジだって、買わな当たらんよ。
――我なんて今週の《ミラマス・ロト7》、
ついに一個違いやったんや……
「いやそれハズレじゃん」
――うるさいボケ!
絶対次は当てたる。それぐらいの気合いを見せてほしいわ!
「……よし! やるか!」
強く願った瞬間、胸の奥がかすかに光った。
それが何かはまだ分からない。ただ──
タケルを前に進ませるには十分だった。
――推薦入試提出まで、あとわずか。
タケルの挑戦は静かに動き始める。




