表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

32/46

第31話 狙われた幻

 話は少し──いや、ほんの少しだけ前に戻る。


 三代目《福ちゃんの味》の前には、長蛇の列ができていた。

 その最後尾付近で、ひときわ目立つ三人組が揉めていた。


「なんで私が、カレー屋に並ばなきゃいけないのよ!」

 マリナが腕を組み、不機嫌そうに足を鳴らす。


「そうだモン。並ぶのはゴロウの仕事モン」

 ピッコルが鼻を鳴らした。


「ちょ、ちょっと待ってくださいよ姐さん!」

 ゴロウが慌ててスマホを掲げる。

「ほらっ! SNSで“幻のスパイスボアカレー”って大バズり中なんすよ! 一日限定っす! これは絶対食べなきゃ後悔しますって!」


「……たしかに、美味しそうではあるわね」

 マリナは一瞬、看板を見て喉を鳴らした。黄金色のカレーの写真に「売り切れ御免」の文字が踊っている。


「でしょ?」ゴロウはにんまり笑う。


 だが、そのとき。


「おい、お前ら。あそこ見るモン」

 ピッコルが小声で指をさした。


 三人の視線の先、列に割り込むようにして店へと入っていく少年たちの姿があった。

 その腰には、大事そうに下げられた“地図S”がきらりと揺れている。


「……あれは地図Sよ。間違いない」

 マリナの瞳が鋭く光る。


「やっとツキが回ってきたわね。食べ終えて出てきたところを尾けるわよ」


「え、ええー!? カレーは!?」ゴロウが情けない声をあげる。


「黙ってな、ゴロウ。今は任務優先よ」

「……トホホ」ゴロウは肩を落とした。


「ピッコル。準備は?」

「秘密兵器No.1、出すモン」ピッコルが得意げに笑う。


「よし。今度こそ前回の借りを返すわよ」

 マリナの号令と共に、三人は建物の影に身をひそめた。


 こうして、タケルたちは地図Sを狙うコミック団に、再び目をつけられることになった。


――


 その後。草原でモチの成長を確認し終えたタケルたちは、研究者・御影博士と別れることになった。


「幻ランク……私も長く研究しているが、実物を見たのは初めてだ。ぜひ今後も記録を取らせてもらいたい」


 博士は通話バッチを渡し、しばらく町に滞在する予定だと語った。

「君たちも気をつけて」そう軽く言い残し、去っていく。


「博士って、ちょっと変わってるけど悪い人じゃなさそうだね」サクラが呟く。

「まあ、あれくらい熱心じゃなきゃ研究者なんてやってられんだろ」アキラが肩をすくめる。


 タケルはモチを見下ろし、小さく拳を握った。

「幻ランク、か……。お前となら、どこまでだって行ける気がする」


――


「いいぞ、もっと喋れ……全部聞いてやるモン」

 ピッコルが指先で操る虫型ミラモンが、タケルたちの近くで羽音を立てていた。


「姐さん! 聞きました!? タケルっていう少年のスライムが“幻ランク”だって!」ゴロウが興奮して声を上げる。

「ふふ……想定外ね。地図Sに加えて幻ランクまで。あのガキ共、ただの新人じゃないわ」マリナが口元を吊り上げる。


 だが次の瞬間――


「きゃー! 虫はやだ!」サクラの悲鳴と同時に、モチがベロのような触手を伸ばし、虫型ミラモンをぺろりと飲み込んだ。


「な、なにィィィ!?」

「やっべぇ! 盗聴ミラモン食われたモン!」

「お、俺たちの録音データがぁぁ!」


 三人は草原の岩陰で慌てふためく。


「……ま、まぁ……途中までの情報は拾えたわ。幻ランクの存在さえ分かれば十分」

 マリナが必死に取り繕うと、二人も何とか落ち着きを取り戻した。


「しばらくは泳がせるモン。その方が利用価値があるモン」ピッコルが歯を見せて笑う。

「うむうむ! あのタケルって少年の地図もスライムも、まとめて奪えば出世間違いなしっすよ!」ゴロウが拳を振り上げる。


「ふふ……いいわね。これは大きな獲物になりそうだわ」


 こうして、タケルたちは再び──いや、これまで以上にしつこくコミック団に狙われることになった。

 だがこのときの彼らはまだ知らない。

 翌日、ギルドで交わす言葉が──自分たちの旅の目的を大きく変えていくことになるのを。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ