第03話 落ちこぼれのモンマス
──光はすべての子どもたちに降り注ぎ、腕にモンマスが宿った。
ただ一人を除いて。
大和タケルの腕だけが、いまだに空白のままだった。
「え……タケルに来てない?」
「やっぱり落ちこぼれか……」
「かわいそうに」
観客席のざわめきが重く突き刺さる。
天城ヒカルは口元を歪め、小声で吐き捨てた。
「ほら見ろ、やっぱりな。お前には何も選ばれない」
胸が締め付けられる。だが──その隣で、親友が目を閉じていた。
「……タケル」
神谷アキラが、両手を胸の前で組む。
「モンマス神に祈れ。信じろ……きっと来る」
「アキラ……」
タケルは唇を噛み、空を仰ぐ。
そして──両膝を石床に突き、腕をぐっと天に掲げた。
「来い! 俺のモンマスーーーッ!」
一瞬、会場が爆笑に包まれる。
「土下座ばんざい!?」「必死すぎるだろ!」
「神頼みかよ!」
だが、タケルはやめなかった。
夢を追うなら、どんなに格好悪くても構わない。
⸻
そのときだった。
天井の奥から、ふらふら〜っと弱々しい光が漂ってきた。
他の核のような輝きではない。火の消えかけたホタルのように頼りない。
「……何だあれ?」
「遅れて来た? でも光が弱すぎる!」
観客がざわつく。
神官も戸惑ったように眉をひそめる。
(……やば、間に合ってねぇ!?)
その声が、タケルの心に直接響いた。
(やっべ〜、昨日ぷ⚪︎ぷよで全消しに夢中でさ。完全に寝坊したわ!)
「えっ……!?」
(マスターには、絶対その日だけは遅れるなって言われてたのに……マジ後悔〜)
タケルが困惑する中、弱々しい光はふらふらと揺れながら──
ゆっくり彼の目の前に降りてきた。
まるで、タケルという存在を確かめるように、目の前でぷかぷかと漂う。
(……まあいいや。一応だけ聞いとくか。お前の夢はなんだ?)
「俺は──英雄ガイアスみたいな、最強のバトルマスターになる!」
(マジかよ!? 一番向いてねぇ道選ぶなよ……!)
次の瞬間、弱々しい光はタケルの腕に吸い込まれ、
銀色のスマートウォッチ型のモンマスへと変化した。
⸻
神官が咳払いをして声を張り上げる。
「こほん……では、皆のステータスを開示せよ。“ステータスオープン”と唱えるのだ!」
子どもたちが一斉に声を合わせる。
モンマスから光のスクリーンが投影され、各自の情報が映し出された。
「すごい……! サクラちゃん、ランクDだ!」
「ピンクのモンマス、かわいい〜!」
「神谷アキラはランクC……やっぱり堅実だな」
「おお……天城ヒカルはランクA! やっぱり天城家の子は別格だ!」
「十年に一度の逸材だ!」
会場が熱気で沸き立つ中、最後にタケルのステータスが表示された。
大和タケル
ランク:G(幻)
レベル:1
適道:適用なし(若干育成)
保管可能数:1
ミラモン:なし
「……ランクG!? そんなのあるのか?」
「幻? 欠陥品の間違いじゃ……?」
会場は再び爆笑に包まれた。
「タケル〜! 幻ランク(笑)」
「適用なしって、若干育成って、なにそれ!」
タケルは顔を真っ赤にしながら、必死に画面を見つめる。
「て、てきみち……? な、なんだよそれ……どういうことだよ……!?」
直後、モンマスが鋭くツッコむ。
(いや“てきどう”だバカ! しかも“適用なし”って……お前、存在意義やばくね?)
「存在意義って言うなぁぁ!」
観客はさらに笑い転げる。
だがタケルの胸の奥では、じわじわと冷たい影が広がっていた。
──俺、本当に……大丈夫なのか?
──つづく。




