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第27話 取り名人との出会い

ギルドで情報を集め始めた三人。

だが、取り名人の居場所を知る者は少なく、話は錯綜した。


「名人なら山奥の庵に住んでるはずだ」

「いやいや、もう町に下りて隠居したって話もあるぞ」

「この前は、川辺で釣りしてたって噂も聞いたな」


三人は振り回され、別人を追いかけてしまったりと、空振りばかり。

「おいアキラ、あの人名人じゃねぇか?」

「ただの薪割りの老人よ!」サクラが呆れる。


そんな小さなドタバタを繰り返しながらも、少しずつ手がかりを集めていった。


――


その中で、古株のハンターがふと思い出したように語った。

「そういや昔、名人が“あの獣道を抜けた先にしか落ち着けねぇ”ってぼやいてたことがあったな」


「獣道……?」アキラが目を細める。

「町外れの森に一本だけある、崖沿いの細道だ。普通の奴は怖くて通らねぇよ」


――


その言葉を胸に、三人は森を進んだ。

獣道を抜けると、湿った空気と苔むした岩肌が広がる。


そのとき――。

ガサッ!

木々の影から、二回りも大きいノラのミラモンが姿を現した。


「やば……! あの凶暴そうな熊型ミラモン、強そう」サクラが息を呑む。


すかさず、アキラがモンマスを掲げる。

「リード! 解析!」


モンマスが本型に展開し、空中に光の文字が浮かび上がった。


【ミラモン:フォレストベア】

【ランク:D】

【特徴:極めて凶暴。巨体の爪は要注意】


「……フォレストベアだって!」アキラが目を細める。

「ランクD!? ヤバない!?」タケルが叫ぶ。


巨体を揺らす熊型のミラモン。その瞳には、確かな敵意の炎が宿っていた。


「行け、クロウルガー!」

「頼む、リリーフェア!」

「むちゃするなよ、モチ!」

三人は次々にモンマスを展開し、ミラモンを召喚した。


「ブモォォォ!」

フォレストベアは突進し、一撃でタケルのモチを吹き飛ばした。


「モチィィィ!」タケルが慌てて駆け寄る。

「強すぎる! かてねー!」

「……自力が違いすぎる!」アキラも必死に防戦する。


押される三人。勝機は見えない――。


「アクセス! 雷迅狼ライジンロウ――サンダーボルド!」


突然、稲光が走った。

空気が焦げるほどの電撃がフォレストベアを直撃し、その瞳が恐怖に揺れる。

次の瞬間、巨獣は慌てて森の奥へ逃げていった。


「な、なんだ今の……?」タケルが目を丸くする。


木陰から、一人の老人が姿を現した。

腰を曲げながらも、背筋は凛としている。


「よくやったわい、雷迅狼。戻ってよいぞ」

老人はミラモンを呼び戻し、ゆっくりと三人へ視線を向けた。


「はて……わざわざ、こんな所まで遊びに来る者もおらん。

――ワシに会いに来たのであろう?」


――


老人は三人を見やり、ゆっくり口を開いた。

「こんなとこで立ち話もあれやからな。この道の奥に、わしの家がある。――そこで話そうか」


三人は顔を見合わせ、うなずき合った。

老人の背に続き、獣道をさらに抜けると、苔むした岩壁に寄り添うように、小さな木造の小屋が現れた。


中は質素だが整えられており、壁には古びた罠や網が掛けられている。まさしく「取り名人」の住処だと一目で分かる空気だった。


「……あんたが、取り名人?」

アキラが一歩前に出る。


老人は眉をひそめ、しばし三人を見つめてから、静かにうなずいた。

「そう呼ばれておったのも、もう昔の話よ。今のワシはただの隠居老人じゃ」


――


サクラが進み出る。

「カレー屋の福ちゃんが、取り名人を探してます。スパイスボアをもう一度捕まえてほしいって」


「福の坊が……そんなことを」

老人の目が細くなり、遠い記憶を思い出すように頷いた。

「スパイスボアが戻ってきたようじゃな。あのカレー屋には、先代の頃から世話になったもんじゃ……」


だが次の瞬間、老人は首を横に振る。

「助けてやりたい気持ちはある。じゃが、もう無理なんじゃよ」


「でも……スパイスボアを捕まえるには、あんたの力が必要なんだ!」

タケルが勢い込んで叫ぶ。


老人はしばらく黙っていたが、やがて腕に装着されたモンマスを掲げた。

中央の光核が赤く点滅し、淡い脈動を刻んでいる。


「……生命活動ゲージが二割を切った。長くミラリアに身を置くことはできんのじゃ」


三人は息を呑む。

「じゃあ……」

「そうだ。ワシにはもうスパイスボアを追う力も、猶予もない」


老人の声が少し震え、遠い目をした。

「本当は……息子のどちらかに継いでほしかったのだがな」


「息子……?」アキラが問い返す。


「二人おる。一人は現実界でアイドルの追っかけに夢中になってしもうた。もう一人は……酒と博打に溺れ、今では“堕落のガイ”などと呼ばれておる」

老人の声には、悔しさと諦めが入り混じっていた。


サクラが一歩近づき、真剣な眼差しを向ける。

「じゃあ……私たちが、その息子さんたちを探してきます」


「そうだな!」タケルが拳を握る。

「どっちかを説得できれば、名人の技を受け継げるんだろ?」


老人は目を細め、静かにうなずいた。

「……あやつらが再びスパイスボア取りを選ぶなら、ワシも技を託そう。だが、あくまで本人の意思次第じゃ。無理強いはできん」


「分かりました」アキラが真剣な眼差しで答えた。

「必ず二人を探し出して、答えを聞いてきます」


しばしの沈黙ののち、老人は背を向け、小屋の奥へと歩みながら言葉を残す。

「――ならば行け。ワシは待っておるぞ」


三人は顔を見合わせ、うなずき合った。

その胸には、それぞれ違う感情があった。

アキラには責任の重み、サクラには不安と希望、そしてタケルには言葉にできない高揚感。


こうして次なる課題――「名人の息子探し」が幕を開ける。


――つづく。


――


◆ミラリア用語解説◆

【生命活動ゲージ】

余命を示す指標。

20%を切るとモンマスの光核が赤く点滅し、“余命宣告”が下る。

10%を切るとミラリア接続は不可能になる。


【モンマスの光核コア

モンマスの中央にある小さな宝玉。使用者の生命活動やミラモンの状態を映し出す。

通常は青や白に輝き、危機が迫ると赤く変化する。


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