第23話 ミラリンピック日本決勝(前編・地上戦)
大会前日。
大和の家に三人は集まっていた。
机の上には大量のお菓子とジュース、そして広げられた決勝戦のパンフレット。
「おれはこれを見るために、生まれてきたのかもしれない」
アキラが真顔で言う。
「おおげさすぎるだろ」タケルが呆れる。
「……分からんでもないけどね」サクラも苦笑。
「ガロスさんが特別に、祝賀会のあと、このミラリンピック日本決勝戦のチケットをくれたんだぞ!
決勝戦なんて倍率何百倍だと思ってんだ!」
アキラはパンフレットを叩きながら声を上げる。
「テレビで見るんじゃない。会場の大型立体投影装置で、まるで選手と同じ空間にいるような迫力を体感できるんだ……最高だろ!」
興奮するアキラに、タケルとサクラは顔を見合わせて笑った。
◇◇◇
そして翌日、会場。
巨大スタジアムに、数万人の観客が詰めかけていた。
空を舞う光のスクリーンが競技フィールドを映し出し、立体映像が観客を包み込む。
「イェェェーイ! ミラリンピック日本決勝にようこそォォ!」
DJブレイズの声が轟く。
「三本勝負だ! 地上、空、海の三ステージ!
空を駆ける者! 海を制する者! そして地を走る者!
三つの領域を制するのは――果たして誰だぁぁ!!」
観客席が一斉に沸騰する。光と音が波のように広がった。
「ミラモン三体、補欠二体、さらにカードは一枚だけ!
駆け引き必至の戦いを見逃すなぁぁ!!」
DJブレイズがマイクを掲げ、光のスクリーンが空中に展開される。
「さぁ、ここで改めてルールをおさらいしようじゃないかぁぁ!
今回の日本決勝戦は――三本勝負!」
映し出されるのは、「地上」「空」「海」の三つの巨大フィールド。
観客席がざわめき、期待の熱が高まっていく。
⸻
【ミラリンピック・日本決勝戦ルール】
① 三本勝負! 地上・空・海の三ステージのうち、二本先取で勝利!
② 出場登録は五体!
地上用・空用・海用のミラモンを一体ずつ必ず登録し、残り二体は補欠枠だ!
③ 補欠とカードの使用について。
補欠の投入は――三ステージを通して一度きり! 一体のみ!
さらに、切り札となる**「ミラモン専用カード」**も一枚だけ! 一度きり!
どのステージで使うかは、プレイヤーの戦略次第だ!
④ 競技内容はランダム!
ステージごとに異なるルールが設定され、開始一時間前にプレイヤーへ通知される!
⑤ 選手登録の締め切りは第一試合の開始十分前!
補欠の変更は、各ステージの開始十分前まで許可される!
⑥ 全ステージは、ミラモンたちの世界内に用意された特設フィールドで実施!
⑦ そして――どのミラモンを登録したかは、試合が始まるまで相手には完全非公開!
⸻
「さぁ、それじゃあみんなお待ちかねだろー!? 準備はいいかぁぁぁ!!」
DJブレイズの声がスタジアム全体に響き渡る。
「「「おおおおーーーっ!!」」」
観客席の熱気が一気に跳ね上がる。
「それではいくぞ! 大型立体投影装置――オープン! カモンッ!!」
ブレイズがマイクを掲げると同時に、
会場中央の巨大装置が起動した。
光が奔り、空間がねじれる。
次の瞬間――スタジアム全体が、まるで“異世界”へと変貌する。
観客たちの周囲にリアルな地形が立ち上がり、風と砂埃まで再現された。
仮想と現実の境界が消え、まるで自分が競技場の真ん中に立っているかのような臨場感。
「うわっ……な、なんだこれ!?」
タケルが目を見開く。
「すごい……! 本当に現地にいるみたい!」
サクラが手を伸ばし、映像の草をそっと触れる。指先をかすめる風が、確かに“そこ”にあった。
「これがミラリアの立体演算装置……!」
アキラが息を呑みながら、眼鏡を押し上げた。
「ワクワクするだろ!」
DJブレイズが高らかに叫ぶ。
「第一ステージ――地上フィールド、オープンッ!!」
◇◇◇
そこは、広大な迷路と障害物が入り組んだフィールドだった。
石造りの迷路が複雑に入り組み、通路は三叉路や袋小路が続く。
地面には落とし穴や崩れかけた橋、さらに転がる巨大岩のトラップ。
さらに――壁そのものがごうん、と音を立てて動き、進んだルートを塞ぐ仕掛けが仕込まれている。
迷路の上層には吊り橋や傾斜坂があり、突破にはスピード・突破力・持久力すべてが試される構造になっていた。
「こ、これは……地獄迷路か!」タケルが息をのむ。
「ただ速いだけじゃ突破できないフィールドだな」アキラが分析する。
「面白そう……」サクラの目が輝いた。
◇◇◇
「選手入場ォォ!」
DJブレイズが叫ぶ。
「ミラリンピックの女王――マリア!!」
風をまとい、金髪をなびかせ登場。観客は「マリア様ー!」と総立ち。
「対するは、怪力無双の戦士――ヴァルド!!」
筋肉の塊のような男が現れる。観客の歓声とどよめきが交錯する。
ヴァルドがマリアを見下ろすように言った。
「女王様だろうが関係ねえ。今日は引き立て役だ」
マリアは微笑みを崩さない。
「――その言葉、ゴールで後悔なさるといいですわ」
その挑発に、観客席がざわめいた。
DJブレイズが両手を広げ、声を張り上げる。
「おっとおっと! 両者の火花が、すでに激しくぶつかり合っているッ!
――だが、この続きはフィールドで見せていただきましょう!」
◇◇◇
「スタートォォ!!」
ヴァルドの《ロックビースト》が一声吠えると、巨体で壁をぶち破り、一直線に駆け出した!
「ははっ! 俺に迷路なんざ必要ねえ!」
「うおおおお! 力で迷路を無視した!」観客がどよめく。
一方、マリアのミラモン《ウィンドハウンド》は、風をまとう俊敏な獣。
崩れる床を軽やかに跳び越え、風をまとった爪で蔦を切り裂く。
「スキル・ウィンドステップ!」
その瞬間、風が足元を押し上げ、彼女は疾風のごとく迷路の急カーブを滑るように駆け抜けた。
迫りくる巨大岩を軽やかにかわし、動く壁すら風圧で押し戻して道を切り開く。
その姿に観客は息をのむ。
「無駄な力任せ……最後に後悔させて差し上げますわ」
その余裕の声に、観客からは黄色い歓声が飛んだ。
やがて二人はゴール直前の通路で並ぶ。
「ここで終わりだ!」ヴァルドがカードを掲げる。
「スキルカード、セット!――《砂縛陣》!!」
地面から砂が渦を巻き上がり、《ウィンドハウンド》の脚を捕らえた!
「うわぁぁ!」「動けない!」観客席がどよめく。
マリアは即座に補欠と交代し、パワー型の《アースゴーレム》を投入。
巨腕で砂を砕き、道をこじ開ける!
「急ぎなさい!」マリアの声に、観客が湧き立つ。
アースゴーレムが猛突進!
「やばい、急げ! ロックビースト!」ヴァルドも必死に叫ぶ。
両者、ゴールへ同時に突っ込む!
◇◇◇
――会場は総立ち。
「行けぇぇ!」「どっちだ!?」「マリア様ーっ!」
観客の歓声が渦を巻く。スタジアム全体が揺れるほどの熱狂。
ゴールを駆け抜けた両者、差はほとんどない。
「た、ただいま写真判定中です。結果が出るまでお待ちください」アナウンスが響く。
会場は嘘のように静まり返った。咳払いすら響く沈黙――観客は固唾をのんでスクリーンを見つめる。
やがて――判定が出た。
「ついに結果が出たぞ!」DJブレイズの声がスタジアムを揺らす。
「ファーストステージ、勝者は……ヴァルドォォ!!」
「うおおおお!」「やったぁ!」
「マリア様が負けるなんて……!」観客の歓声と悲鳴が交錯する。
マリアは悔しさを押し殺し、すっと背筋を伸ばした。
「一本取られましたわね……。――けれど、女王は最後に勝つものですわ」
その気高い姿に、観客から大歓声が巻き起こった。
◇◇◇
「ファーストステージはヴァルドォォ! 力と戦略で、女王マリアから一本奪ったぁぁ!!」
DJブレイズの熱狂的な声が響き渡る。
「だが見たか!? 女王の冷静な判断と補欠の切り替え! あれがなければ、もっと大差で終わっていたはず! ――まだまだ分からねぇぞぉ!!」
観客のボルテージはさらに上がる。
◇◇◇
「さぁ、続いては第2ステージ!」
DJブレイズが両手を掲げ、会場全体を煽る。
「空中戦! 空の熱きバトルを見たいかぁぁぁぁ!!」
「「「うおおおおおおーーーっ!!」」」
観客が総立ちになり、スタジアムが揺れるほどの熱狂が広がった。
「女王マリア、後がない! ここから巻き返しはあるのか!?
次回――空を舞う者たちの激闘を見逃すなぁぁ!!」
◇◇◇
――つづく。




