第22話 余韻と報酬回
翌朝。
町にはまだ昨夜の熱気が残っていた。
影喰らいを退けた直後、祭りのような騒ぎになったが、その中心にいた天城レオンの姿は、気づけばどこにもなかった。
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「新人たちよ、よくやってくれた!」
ギルド長ガロスがギルド広場に立ち、声を張り上げる。
「天城レオン殿の協力もあり、新人たちの奮闘で町は守られた!」
拍手と歓声が湧き起こる。
町の住民と新人たちは互いに抱き合い、拳を突き上げ、再び熱気に包まれていった。
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「そして──命がけで戦ってくれたことに、ギルド一同、心から感謝する。
ゆえに、今回の報酬は特別に用意した!」
「おお……!」
「特別報酬だって!?」
広場に再びざわめきが走る。
「では──今回の報酬を発表する!」
ガロスが高らかに告げると、広場に緊張が走った。
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「まずは特殊討伐部隊のリーダー──天城ヒカル!」
「はい!」ヒカルが前へ進み出る。
「その功績により、金貨一枚を授与する!」
「き、金貨……!?」
「町じゃ滅多に見ねえ代物だぞ!」
住民たちがざわつく。
掌に乗った金貨を見つめ、ヒカルは小さくつぶやいた。
「……ちっ。俺は何もしてねぇ。やったのは兄さんだろ」
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「そして──同じく特殊討伐部隊のアキラ、サクラ、タケル。この三名にはそれぞれ五千ミラ!」
「ご、五千ミラ!? 銀貨五十枚だぞ!」
「カレー百杯分じゃねえか!」
「カレー百杯……!」サクラが目を丸くする。
「食い切れねぇぇ!」タケルが頭を抱え、広場に笑いが広がった。
アキラは腕を組み、口元をわずかに緩める。
「悪くない……これで装備を揃えられる」
「なお、ユウマは戦闘中に強制送還となり不在。報酬は後日、正式に渡される予定だ」
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さらに前衛部隊、後衛部隊、サポート組にも報酬が順に告げられた。
「前衛部隊は三千ミラ! 後衛部隊は一千ミラ! サポート組は五百ミラ!」
「三千ミラ!?」「やったぞー!」
住民と新人が互いに抱き合い、拳を突き上げる。
広場は再び歓声に包まれた。
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「今回参加した新人は、報酬を受け取っていってくれ!」
ガロスの合図で職員が机を並べ、受け取り用の書類を用意する。
「ここにサインを」
真面目な職員が紙を差し出した。
「うっ……テストみたいだ!」
タケルが思わず叫ぶと、周囲に笑いがこぼれた。
新人たちは次々と報酬を受け取る。
封筒に入ったお金、ギルド評価ポイントが記されたカード、そしてミラモンとの相性を高める、小さな補助装備。
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「よし……これでクロウルガーを、もっと強くできる」
アキラが静かに拳を握る。
「私は……リリーフェアの力を、もっと活かせるようになりたいな」
サクラは胸に手を当て、静かに微笑んだ。
「……やっぱり焼き肉食べ放題だな!」
タケルの宣言に、新人たちは一斉にずっこけた。
「ちなみに、新人たちの何人かには学院への推薦書を送る予定だ」
ガロスが補足する。
「学院……!」
サクラとアキラが真剣な表情になる。
「えっ、なにそれ?」
タケルだけがぽかんと口を開けていた。
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住民たちが新人たちを囲み、温かい言葉をかける。
「よくやったぞ!」
「あの時の動き、見てたぞ!」
だがレオンの姿は、やはりどこにもなかった。
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「……ねえ、タケル。忘れてないよね?」
サクラが小声で問いかける。
「何を?」
「始星祭が終わったら、学校行く代わりに通信教育と課題提出……って先生言ってたでしょ」
「えっ、マジ!?」
タケルが青ざめる。
「やっぱりやってなかったんだな」アキラが呆れる。
「もちろん私はもう出したよ」サクラが胸を張る。
「オレも当然」アキラも続ける。
「おまえらぁぁ!」
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「急いで現実世界に戻るわ! アクセス! ミラリア・リターン!」
タケルは慌ててモンマスを掲げた。
光に包まれ、視界が切り替わる。
――ドサッ。
机の上いっぱいに積み上がる課題プリントの山。
「ぎゃあああ!」
〈ピコン!〉モンマスの機械音が鳴る。
【ご利用は計画的に】
「うるさい!」
そこへドアが開いた。
「お兄ちゃん! 帰ったら一緒にモリオカートやるって言ったじゃん!」
妹のサトが顔を出す。
「い、今はちょっと……課題が……!」
「嘘つき! もう知らない!」
バタンとドアが閉まる。
「サトォォォォ!」
〈ピコン!〉
【ご利用は計画的に】
「二回も言うなぁぁ!」
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こうして――初めての緊急ミッションは、本当の意味で幕を閉じた。
――つづく。




