第15話② はじめての休日
討伐を終えた三人がギルドに戻ると、ちょうど夕暮れの鐘が鳴った。
報告書を提出するやいなや、受付嬢がぱちぱちと拍手する。
「やったね、初依頼達成! 三人ともおめでとう!」
「へへっ、まあ当然かな!」タケルが胸を張る。
「全員無事に戻ったことが、一番の成果だな」アキラが落ち着いた声で応える。
サクラはほっとしたように微笑んだ。
「モチも頑張ったね!」
その言葉に合わせて、モチがぷるんと震える。
【討伐依頼達成:リーフラット討伐】
【正式報酬:銅貨150枚(150ミラ)】
「おおっ、けっこうもらえたな!」アキラが声を上げる。
「これでまたカレー食べられるね!」サクラは大喜び。
「結局カレー基準かよ……」タケルが苦笑した。
奥のカウンターから、ギルド長ガロスが太い腕を組みながら出てくる。
「よくやったな。初討伐で全員無事ってのは簡単じゃねぇ。明日はゆっくり休んで、街でも見てこい」
「よっしゃー! ご褒美タイムだ!」タケルが両手を上げた。
―――
翌朝。
「始まりの町」は活気に満ちていた。
広場では露店が並び、あちこちで新人冒険者たちの声が上がる。
祭りのような熱気──“新人シーズン”らしい空気だ。
「わぁ……! あのリュック、ミラモンの耳がついてる!」
サクラが露店のぬいぐるみを見て目を輝かせる。
「ミラモングッズって、女子人気高いんだな」
「ふふっ、見た目も大事なの!」
そんなやりとりの後ろで、モチがひょこっと顔を出した。
次の瞬間──隣の露店の果物カードがふるふると震える。
「モチ!? 出ちゃダメっ!」
ぷるんと飛び出したモチが果物の幻影に飛びつき、棚をバサッと倒した。
「わわわっ!」「きゃーーー! 果物がぁぁ!!」
店主が半泣きで叫び、三人は全力で片づけに走る。
「まったく、うちのチームは賑やかだな……」
「ま、楽しいけどね!」サクラが笑った。
―――
しばらく歩くと、町の外れで瓦礫の山が見えた。
石造りの建物の残骸。その奥には、真新しい城壁が伸びている。
「……なんか、この辺だけ空気が違うな」タケルがつぶやく。
近くで掃除をしていた老人が顔を上げた。
「一年前のことじゃよ。この町を大型ミラモンが襲ったんだ」
「ミラモンが……?」
「ああ。それ以来、侵入されぬようにと城壁を建てた。ここは、住むのを諦めた者たちが残した場所さ」
三人は言葉を失い、静かにその場を見つめた。
「……いつか、誰もが安心して暮らせる町にしたいね」
サクラの言葉に、タケルは空を見上げる。
青空が、どこまでも広がっていた。
―――
夕方。
屋台通りでは、湯気と香辛料の匂いが漂っていた。
三人はラーメンを手に、屋台の長椅子に腰を下ろす。
「いただきまーす!」
熱々のスープをすすると、心まで温まるようだった。
「明日はまた依頼かな?」
「うん。でもその前に、もう少し強くならないと」アキラが真顔で言う。
「よし、次も勝とう! 俺たちの冒険、まだ始まったばかりだ!」
「うんっ!」サクラが笑顔で頷いた。
その瞬間、三人の笑い声が夕暮れの風に溶けていった。
―――
翌朝。
「もうすぐギルドだね。今日も依頼こなして、ガンガンレベル上げしようぜ!」
「賛成!」サクラが笑う。
鳥の声が響く静かな朝。
だが、その中で――一瞬だけ“警鐘の音”が鳴り響いた。
「……今の、音?」
「風のせいじゃないか?」アキラが眉をひそめる。
「だといいけど……」タケルは胸の奥に小さなざわめきを覚えた。
空の彼方で、赤い光がゆらりと瞬く。
それは、嵐の予兆のように。
ギルドの前では、職員が大慌てで中へ駆け込んでいく。
「なんかバタバタしてるね」
「これは……何かあったな。」アキラが言う。
―――
ギルド内部では、すでに慌ただしい声が飛び交っていた
その中心では──さっきの職員が、ギルド長ガロスに必死の表情で報告していた。
「ギルド長! 急いでやつを討伐しないと、町が危険です!」
広間に、一瞬の静寂。
ガロスは椅子をきしませて立ち上がり、重々しい声で告げた。
「……町を守るため、緊急ミッションを発動する!」
【緊急ミッション発動:始まりの町を守れ!】
その通知が水晶塔を駆け巡り、町中のモンマスへ響き渡っていく。
そして通知が消えるころには、町全体がざわめきに包まれていた。
「ギルドに行かないと……!」
「新人でも呼ばれるのか!?」
「まさか、また何かが来るのか……?」
家から飛び出す住人、
慌てて身支度を整える新人の冒険者。
露店の店主たちも店を畳み、人の流れに押されるようにギルドへ向かっていく。
タケルたちも思わず顔を見合わせた。
「……行こう。俺たちも、あの場に立つんだ」
アキラが短く言い、サクラも大きく頷く。
三人は人の流れに混じりながら、ギルドへと走り出した。
──この小さな動きこそが、後に“大きな戦い”へとつながる序章だった。
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次回「始まりの町を守れ! 緊急ミッション発動」




