第15話① 初めての討伐! 三人の連携なるか!?
三人は町外れの農地へと足を進めていた。
空は晴れ渡り、畑の土は太陽を浴びて黒々と輝いている。
「ここが依頼場所か……」アキラが腕を組んで畑を見渡す。
「すごい……広い畑だね!」サクラは目を丸くした。
そこへ、農作業着の男性が駆け寄ってきた。
「おお、君たちがギルドから来た新人か! 助かるよ」
額には汗が滲み、切羽詰まった様子だ。
「リーフラットって、どんな奴なんですか?」タケルが尋ねると、男は畑の隅を指差した。
「見た目はただのウサギさ。一匹ならかわいいもんだ……だが群れで来ると、畑を食い尽くしてしまう」
「群れで……」サクラが不安げに呟く。
「なるほどな。油断できねぇってわけだ」アキラは拳を鳴らした。
その時だった。
畑の奥、草むらがガサガサと揺れる。
ぴょん、と小さな影が飛び出した。白と緑の斑模様を持つウサギ型ミラモン──リーフラットだ。
「かわいい……!」サクラの声が漏れる。
「バカ、油断するな!」アキラが一歩前へ出た。
さらに草むらから次々と跳ね出す影。
一匹、二匹……あっという間に十数匹の群れになり、畑を覆うように広がった。
【リーフラット:草食系ミラモン。群れで行動し、突進して作物を食い荒らす習性あり】
「突進してくるぞ!」タケルが声を上げる。
「よし、やってやる!」アキラは前のめりに踏み出した。
──初めての討伐戦が、今まさに始まろうとしていた。
アキラはモンマスを開き、バインダーを展開する。
「セット! 成長する刃!」
雷光が走り、彼の手に一本の木の棒が現れた。
「……棒?」
「大丈夫、これは“成長する刃”ってカードだ。使うほど進化するんだ!」
アキラが構えを取ると、棒の先端に微かな光が灯り、うっすらと刃の形が浮かび始める。
「クロウルガー! 行けっ!」
黒い狼型ミラモンが飛び出し、群れの先頭に牙を剥いた。
「サクラもいくよ! アクセス! リリーフェア!」
サクラのモンマスが光り、小さな妖精が宙に現れる。ふわりと舞い、光の粒を放つと、突進してきたリーフラットたちの足が一瞬止まった。
「ナイス! 今だ!」アキラが叫ぶ。
だがリーフラットは怯むどころか、すぐに別方向へ広がって突進を再開した。
「うわっ、速い!」タケルは思わず後ずさる。
アキラの木の棒が空を切り、クロウルガーも追いつけずに回り込まれる。
棒の先の光が一瞬だけ強くなり、金属のような刃をわずかに形づくるが、すぐにまた消えてしまった。
「まだ使いこなせてねぇ……!」
アキラは悔しげに歯を食いしばる。
サクラのリリーフェアが光を放っても、リーフラットたちは跳ね回ってかわしてしまう。
「全然止まらない……!」サクラが焦る。
「ちょこまか動きやがって!」アキラが舌打ちする。
畑の作物が次々と食い荒らされ、三人は防ぎきれずに翻弄されていた。
「くそっ、このままじゃ拉致があかねぇ!」タケルが声を上げる。
その時──足元のモチがぷるりと震えた。
「モチ?」
きゅるる、と音を立てて跳ねると、群れの奥にいる一匹にぴたりと視線を向ける。
モチスキル発動
【解析スキル:簡易発現】
【解析:群れはリーダー個体の動きに追従する傾向あり】
「リーダー……! あいつか!」タケルは息を呑んだ。
「どういうことだ!?」アキラが叫ぶ。
「群れはリーダーの動きを真似してる! あれを崩せば……!」
「よし、分かった! クロウルガー、右から回り込め!」
「リリーフェア、光で目くらまし!」
「モチ、もう一回頼む!」
三人の声が重なり、ぎこちなくも連携が生まれる。
光にひるんだリーダーのリーフラットが一瞬だけ動きを止め──その隙にクロウルガーの爪が炸裂した。
「決まった!」タケルが叫ぶ。
リーダーを崩した瞬間、群れ全体が混乱し、突進がばらけていく。
「いまだ! 一気に押し切るぞ!」アキラが前進。
「みんな、がんばれ!」サクラの声援が響く。
モチがぷるんと震え、残ったリーフラットに体当たり。
ぎこちない攻防の果てに──群れはついに散り、畑に静けさが戻った。
土埃の中、三人は大きく息をつく。
「……やった、のか?」タケルがへたり込みながらつぶやいた。
「当たり前だろ! 俺とクロウルガーのおかげだ!」アキラが胸を張る。
「ふふ、モチの解析がなかったら危なかったけどね」サクラが笑った。
タケルは思わずモチを抱き上げる。
「……ありがとな」
モチはぷるんと震えて、タケルの手に吸い付くように応えた。
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畑の隅で、農家の男性が駆け寄ってきた。
「助かった……! 本当に助かったよ!」
彼の顔は汗で濡れていたが、安堵の笑みが浮かんでいた。
「このままだと畑が全滅するところだった。これ、少ないけど……お礼に持って行ってくれ」
差し出された袋の中には、新鮮な野菜がぎっしり詰まっていた。
「わぁ、美味しそう!」サクラの目が輝く。
「戦ったあとに食えるなんて最高だな」アキラも満足げに受け取った。
【農家の男性から感謝】
【報酬:農作物】
【通知】
累積経験値が一定値を超過。
レベルが2段階上昇。
【パーティ全員のモンマスレベルが3に上昇しました】
【大和タケル:Lv3/HP+6/攻撃+2】
【桃坂サクラ:Lv3/HP+12/攻撃+2/防御+4】
【神谷アキラ:Lv3/HP+10/防御+4/連携値+4%】
【レベル3達成:保管可能数+1(合計2)】
「おおっ、上がった!」サクラが歓声を上げる。
「よし、ステータス確認しようぜ」アキラが提案し、三人はモンマスを開いた。
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Lv3 全体ステータス
大和タケル
ランク:G(幻)
レベル:3
HP:21
攻撃:7
防御:5
同調率:45%(D)
連携値:40%(D)
適道:バトル(成長力減少適用中)
保管可能数:2
所持ミラモン:モチ(F幻)
第二種族:なし
桃坂サクラ
ランク:D
レベル:3
HP:24
攻撃:6
防御:7
同調率:60%(C)
連携値:55%(C)
適道:育成
保管可能数:2
所持ミラモン:リリーフェア(E)
第二種族:???
神谷アキラ
ランク:C
レベル:3
HP:25
攻撃:6
防御:9
同調率:65%(B)
連携値:62%(C→B寄り)
適道:ミラリンピック
保管可能数:2
所持ミラモン:クロウルガー(E)
第二種族:???
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「なんで俺だけ……伸び率も控えめだし、項目も2つしか増えてないんだよ!」タケルが嘆く。
「ハハッ、気のせいだろ」アキラが笑う。
「タケルらしくていいじゃん」サクラもクスクス笑った。
「……でも、保管数が増えたのは嬉しいな。育てられるミラモンが増えるんだから」
タケルが少し得意げに言うと、サクラが「ほんと!? やったぁ!」と大喜びし、アキラも「まあ、それはデカいな」とうなずいた。
そのとき、モチがぷるぷると震え、タケルの膝に飛び乗った。
「そうだ、モチも見てみようか」
タケルがモンマスを操作すると、新しいステータスが表示された。
モチ(タケルのミラモン)
【ステータス表示】
名前:モチ
種族:スライム
ランク:F(幻) NEW!
レベル:3
HP:18(+3)
攻撃:5(+2)
防御:6(+2)
特性:ぷるぷる(衝撃吸収/打撃に強いが斬撃に弱い)
スキル:簡易発現(解析) NEW!
状態:役に立て嬉しい
備考:(幻)のため、通常の進化ルートは不明。記録上でも稀。
「……ランクまで上がってる!? しかもスキルも!」タケルが目を丸くする。
【タケルより優秀ですね】
「おい! 俺のモンマスまで何言ってんだ!」
三人はどっと吹き出し、モチはぷるんと震えて得意げに光った。
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三人は笑いながら畑を後にした。
初めての討伐。初めての勝利。
心地よい疲労と達成感が胸を満たしていく。
「今日はもう帰ろうぜ。腹減った!」
「ふふ、私はスイーツ食べたいな」
「まったく、緊張感ないなぁ……」
そんなやりとりに笑いがこぼれる。
──そのとき、モチが小さく震えた。
「どうした?」タケルが首をかしげる。
モチは空を見上げ、淡く光を放つ。
【簡易発現:未解析データ検知】
「未解析?」
「またなんか拾ったのか?」アキラが苦笑する。
「……気のせい、かな」タケルは呟いた。
その瞬間、空の彼方で“赤い閃光”が一瞬だけ瞬く。
風が静かに流れ、畑の稲穂を揺らした。
──平穏の裏で、何かが動き始めていた。




