第13話 はじめての依頼! 薬草採取とカレーの香り
翌朝。ギルドの広間は、新人たちで活気づいていた。
昨日のやり取りを引きずるように、サクラとアキラはまだ口論を続けている。
「だから安全に薬草採取からって言ってるでしょ!」
「いや、戦闘経験がなきゃ強くなれねぇだろ!」
「……まだ続いてんのかよ」タケルは額を押さえた。
そこへ、ギルド長ガロスが豪快な声で割って入った。
「よーし分かった! なら両方やれ! それで解決だろ!」
〈ピコン!〉
【依頼確定:薬草採取+討伐】
【新人パーティのわがまま、通りました】
「えっ、両方!?」タケルが目を丸くする。
「ほら見ろ!」サクラが胸を張り、アキラも「いや俺の意見が優先されたんだって!」と譲らない。
結局、二人の張り合いは止まらないまま。
タケルは苦笑いしつつ、受付嬢から依頼票と簡単な道具カードを受け取った。
「まずは薬草採取からですね。討伐はそのあとに」と受付嬢が穏やかに微笑む。
こうして三人は初めての依頼に胸を高鳴らせながら、町の外れの森へと向かうのだった。
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薬草採取の依頼を受けた三人は、町の外れに広がる小さな森へと足を踏み入れた。
朝露に濡れた草木がきらめき、差し込む光が幻想的な雰囲気を作り出している。
「うわぁ……きれい……!」サクラが目を丸くした。
「雰囲気に浸るのはいいけど、依頼内容を確認しないとな」アキラが言う。
〈ピコン!〉
【依頼内容:薬草を20束採取し、ギルドへ報告すること】
モンマスが目の前に浮かび、依頼票を表示した。
「よし、じゃあ確認も済んだし……」タケルはモンマスを構え、声を張った。
「リード!」
モンマスが本型に展開し、薬草の情報が浮かび上がる。
【薬草:グリーンリーフ/特徴:葉先が二股に分かれている/効能:初級回復薬の材料】
「なるほど、これを探せばいいんだな」タケルがうなずく。
「じゃあさ、誰が一番多く集められるか勝負しない?」アキラがニヤリと笑った。
「いいね、それ!」サクラが手を挙げる。
「ちょ、ちょっと待て! 勝負って……」タケルは慌てるが、二人はもうやる気満々だ。
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それぞれのミラモンも呼び出され、採取競争が始まった。
「アクセス! リリーフェア!」
サクラがモンマスを掲げると、小さな妖精がふわりと舞い降りる。
リリーフェアは光を放ち、薬草を照らした。サクラは正確に薬草を見分け、手際よく摘み取っていく。
「アクセス! クロウルガー!」
アキラの前に黒い狼型のミラモンが現れ、地面を駆け回る。薬草を根ごとまとめて引き抜き、次々と山積みにしていった。
「量は任せろ!」アキラが笑う。
一方、タケルは――。
「えーと……これが薬草か?」
自信なく草を引き抜くが、どう見てもただの雑草だ。
「ちがーう! それ雑草!」サクラが笑う。
その時、タケルの足元にいたスライム「モチ」が薬草をぺろりと食べた。
〈ピコン!〉
【解析スキル:簡易発現】
【薬草の識別率が上昇しました】
「はぁ!? お前食うなって!」タケルが慌てる。
「でも結果オーライですね」モンマスが冷静に補足した。
「……なんか納得いかねぇ」タケルはため息をついた。
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結果は――サクラが一番多く、次いでアキラ。タケルは最下位だった。
「じゃあ、負けた人が全部持って帰るってことで♪」サクラがにっこり笑う。
「マジかよぉ……!」タケルは両手いっぱいに薬草を抱え、ふらふら歩く。
「お、重てぇ……! 新人向けの量じゃねぇだろ!」
〈ピコン!〉
【依頼票の注意書き】
※この薬草は水分を多く含み、見た目以上に重くなります。
「そこは先に言えよ!」タケルが叫ぶと、周囲の通行人がクスクス笑った。
そんなドタバタで薬草採取は終了した。
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両手いっぱいに薬草を抱えたタケルは、ふらふらと町の門をくぐった。
「お、重すぎ……! これ絶対新人向けの量じゃねぇだろ……!」
通りを歩く人々がその姿を見て、くすくす笑う。
「見ろよ、抱えてる抱えてる」
「新人っぽいなぁ」
タケルは耳まで真っ赤にしながら、よろよろとギルドへ向かった。
受付に薬草をどさっと置くと、受付嬢が目を丸くした。
「……両手で持って来られたんですね」
「そりゃそうだろ! こんなのカード化できるわけ……」タケルが息を切らしながら言うと、受付嬢は優しく笑った。
「実は、できますよ。モンマスの“アクセス”設定に〈アイテム自動カード化〉の項目があるんです。それをONにしておけば、自動でカード化されます」
「……え?」タケルは固まった。
〈ピコン!〉
【説明補足:お店の商品や他人の所有物は対象外】
「もっと早く言えよおぉぉ!」タケルが頭を抱え、周囲の新人たちが笑った。
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〈ピコン!〉
【報酬:銅貨100枚(合計100ミラ)を獲得しました】
「おー! ミラだ!」サクラが喜ぶ。
「でも……これ、多いのか少ないのか?」タケルが首をかしげた。
「新人の薬草採取なら、普通は銅貨50枚(50ミラ)程度です。でも今回は特別に100ミラ。……そうですね、カレー2杯分くらいです」受付嬢が丁寧に説明する。
「カレー2杯!? やった!」サクラが両手を挙げる。
「……基準そこかよ」アキラが呆れる。
「いや、カレーは大事だろ!」タケルのお腹がぐぅと鳴り、ギルドの中が笑いに包まれた。
タケルは苦笑しつつ、ふと祖父の言葉を思い出す。
「そういえば……おじいちゃんが言ってたな。『始まりの町には、隠れた名物のカレー屋があるぞ』って」
「えっ! カレー!?」サクラの目がさらに輝く。
「……もう完全にカレーの口だな」アキラが肩をすくめた。
こうして三人は、意気揚々と町の裏通りへ足を運んだ。
タケルの脳裏には、ふと祖父の言葉がよぎる。
「──“ミラカレー”は絶品だぞ。食べて損はないからな!」
果たして、その味とは……!?
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次回「カレー屋《三代目福ちゃんの味》と討伐前夜」




