第11話 ガチャと奪還
翌朝。
昨日の爆発と混乱がまるで夢だったかのように、始まりの町は穏やかだった。
「なんか……昨日の騒ぎが嘘みたいだね」サクラが伸びをしながら言う。
「まあ、町ってのは案外タフなもんだ」アキラが腕を組む。
タケルは胸をなで下ろした。(ほっとしたけど……昨日のこと、忘れちゃいけないよな)
三人はギルド前に集まり、ギルド長ガロスから改めて説明を受けた。
「昨日の件については、すでに説明した通りだ。補填として──新人向けに二つの依頼を用意した」
「依頼?」タケルが首をかしげる。
「一つは薬草採取。簡単だが、報酬は安い。
もう一つは畑を荒らす雑魚モンスターの討伐依頼だ。弱いが数が多い。少し手こずるかもしれんが、報酬は高い」
「なるほど……」アキラが考え込み、サクラは目を輝かせた。
「どっちにするか、楽しみだね!」
ガロスは続けた。
「それと──物資の代わりにカードショップから新人ガチャが用意されている。まずは行ってこい」
◇◇◇
カードショップ。
町の一角にあるその店は、虹色に光る装飾とカード棚であふれていた。
「わぁ……!」サクラが思わず声を上げる。
「うお、カードだらけ……!」タケルも目を輝かせた。
店主がにこやかに説明する。
「新人諸君、一人一回だけだが、ランダムでカードを引けるぞ。ガチャの仕組みはこうだ──」
天井から光のカプセルが降り、虹色の光が舞う。カプセルを割ると、中からカードが現れる演出に、新人たちは息をのんだ。
最初はサクラ。
カプセルが、ひとりでに彼女の前へ降りてきた。
「えっと……これ!」
光が弾け、小さな妖精のサポートカードが現れた。
【支援カード:フラワーライト(ランクC)】
効果:小さな光で暗闇を照らす。味方の心を落ち着かせる。
「かわいい!」サクラが頬を緩める。
次はアキラ。
別のカプセルが光り、彼の前で止まる。
「俺は……これだ」
雷光がほとばしり、刃を思わせる実用的なカードが浮かび上がった。
【戦闘カード:成長する刃 (ランクB)】
効果:使用回数に応じて刃が進化する。
使用が途切れると「木の棒」に戻るが、これまでの経験は刃に刻まれる。
次回はより早く成長し、折れにくい強度を持つ。
積み重ねるほど、棒は確かな剣へと近づいていく。
「……悪くない。長く使えそうだ」アキラは冷静にうなずく。
最後にタケル。
「よし……!」
タケルが手を伸ばした瞬間──ガチャマシン全体がグラリと揺れ、雷鳴のような轟音が響き渡った。
周囲のカプセルが勝手に弾け、虹色の光の粒子が店中を舞い上がる。
「な、なにこれ!?」「他の台まで震えてる!?」新人たちがざわつく。
「Sランクなんて……数年に一度出るかどうかだぞ!」店主の顔が蒼白になる。
そして、光の渦から飛び出したのは──
輝く一枚の地図だった。
他のカードとは違い、光の粒子に包まれたままカード化せず、そのまま現物としてタケルの腰へと収まった。
【伝説の地図(ランクS)】
形態:常時具現化(カード化不可)
解放条件:未達
売却:不可
譲渡:可能(※譲渡・喪失時に呪い発動)
「な、なんだこれ!?」タケルが目を丸くする。
「お、おい……それ、“伝説の地図”じゃないか!?」店主の声が裏返った。
「ランク……S!?」アキラも絶句する。
店内がざわめいた、その時。
◇◇◇
「見たかゴロウ! あの黒髪のガキがSランクを!」
「オレに任せろォ!」ゴロウが拳を鳴らす。
横で、ちびっこい体に大きな帽子をかぶったミラモン・ピッコルが飛び跳ねた。
「バカだモン! 今すぐ奪って痛い目見るモン!」
しかし、リーダーのマリナは薄く笑みを浮かべる。
「……チャンスなんて待ってたら来ないわ。動くのは──今よ!」
三人組──コミック団が店内に乱入し、タケルへと突っ込んできた。
◇◇◇
ゴロウがタケルの腰から無理やり地図を引き剥がした瞬間──
〈ピコン!〉
【呪い発動:全力でミラリア体操を踊り続ける】
「はぁ!? ちょ、勝手に……動くぅぅぅ!」
タケルの体が勝手に動き、全力で踊り始めた。
「ミ〜ラリア! ワン・ツー・スリー!」
「腕を回せぇぇぇ!」
「ぎゃははは!」新人たちは腹を抱えて爆笑する。
「体操は反則だろ!」
「お前、アイドルより目立ってるぞ!」
「す、すごい! これもスキルなの!?」サクラが素直に感嘆する。
「いや、絶対違うだろ!」アキラが即座にツッコんだ。
タケルは涙目で叫んだ。
「やめろぉぉぉ! 俺の意思じゃねぇぇぇ!」
店内が爆笑に包まれる中──
「そこまでだ!」
騒ぎを聞きつけたギルド員たちが駆けつけ、一斉に武器を構えてコミック団を取り囲む。
「ひぃぃ! もう無理だモン!」
「覚えてろよぉぉ!」
三人組は慌てて逃げ出し、ゴロウの手から地図が離れた。
地図は再びタケルの腰へと戻り、呪いが解除される。
「……っはぁ! もう二度と渡さねぇ!」タケルは地図を抱きしめた。
◇◇◇
「さて、それじゃあ──カードの使い方を……」と店主が話し始めた、その時。
「はぁ〜い☆ ここからはキララちゃんが説明しまーす!」
ステージ衣装のような服を着た少女がカウンターに飛び乗る。
「おい、やめろ! 勝手にカウンターに乗るな!」店主が慌てる。
「誰だよ!? 店員なのか、アイドルなのか!?」新人たちもざわつく。
だがサクラだけは目を輝かせて「かわいい!」と拍手していた。
少女はポーズを決めて宣言する。
「地図はさておき──普通のカードを使うときはね、“オープン!”って言うんだよ☆」
店主は頭を抱えた。
「また始まった……」
◇◇◇
次回「オープンの実演!? キララの暴走講座」




