第01話 英雄に憧れて
この世界には──二つの世界が共存している。
人間が暮らす現実世界。
モンスターたちが息づく幻想世界。
二つは深くつながり、子どもたちは十歳になると「モンマス」と呼ばれる特別な腕輪を授かる。
それは己の進む道を決める、人生の最初の分かれ道。
バトルで頂点を目指す者。
ミラリンピックで栄光を掴む者。
育成で名声を築く者。
そして、ごく一部だけが挑める“試練の階層”。
誰もが夢を追い、モンスターと共に生きている。
これは──落ちこぼれと呼ばれた少年の物語。
―――――
「やってきました! バトルマスター世界決勝戦!」
巨大なスタジアムが、揺れんばかりの歓声に包まれていた。
幼いタケルは父に肩車され、夢中で試合を見ている。
隣には幼馴染のサクラとアキラ。
三人の親たちが子供を連れて、夢の舞台を見に来ていた。
実況「挑戦者は、
小さな町から現れたニュースター・──ガイアス!
対するは三年連続、絶対王者シルバ!」
観客「ガイアス頑張れー!」
観客「王者の壁は厚いぞ!」
――試合開始。
⸻
第1戦
「ホワイトドラゴン、行け!」
ガイアスが叫ぶ。白銀の竜が翼を広げ、咆哮を放った。
シルバが指を鳴らす。
「ゴーレム、前へ」
岩の巨人が大地を揺らして立ちふさがる。
「ホワイトアウトォォ!」
極寒のブレスが直撃。ゴーレムは瞬時に氷像と化し、粉砕された。
実況「ガイアス、まずは一点先取! 挑戦者が王者から奪ったぞ!」
観客「うおおお!」
タケルの胸は高鳴った。
(すげぇ! 本当にガイアスが勝っちまうかも!)
⸻
第2戦
シルバの目が細まる。
「面白い……だが、ここからが本番だ」
「来い──ブラックタイガー!」
漆黒の巨体が姿を現し、スタジアム全体に殺気を放った。
観客「出た! シルバの切り札だ!」
観客「ブラックタイガーだ!」
ガイアスも即座に応じる。
「行け、ローズリザード!」
背に鮮やかな花を咲かせた草の竜が登場し、低く唸る。
実況「両者、二体目を繰り出しました! 草の竜と漆黒の虎──互角の勝負になるか!」
シルバ「ブラッククロー!」
漆黒の爪が閃き、リザードに迫る。
ガイアス「リーフブレード!」
竜の尾から緑の刃が走り、正面から激突!
――轟音。スタジアムが揺れる。
実況「互角だ! ここまで食らいつくとは……!」
だが、シルバがニヤリと笑った。
「ここからが本当の王者の力だ──アクセス・オープン! カードセット、《雷迅の牙》!」
ブラックタイガーの爪が雷光をまとい、さらに威力を増す。
「ならば俺も! カードセット、《大地の守り》!」
リザードの背に草の盾が展開した。
実況「両者ここでカードを切った! 会場がさらに熱気を帯びる!」
稲妻の爪が草の盾を粉砕し、リザードは地に伏した。
実況「勝者シルバ! これで一対一! やはり絶対王者だー!」
観客「強すぎる!」「やっぱりシルバだ!」
父の肩の上でタケルは息をのんだ。
(……やっぱり王者はすげぇ……!)
⸻
第3戦
残るは最後の一体。
「終わりだ、ガイアス」
シルバが冷たく笑う。
「出でよ──サンダー・ケルベロス!」
雷をまとった三つ首の魔獣が咆哮し、スタジアム全体を震わせる。
対するガイアスは、小さな光を見つめて呟いた。
「頼む……最後はお前に賭ける!」
光がはじけ、姿を現したのは──丸っこい、小さな可愛いモンスター。
観客「えっ……?」
観客「なにあれ、弱そう……」
実況「ガイアス、最後の一体は……正体不明の小型モンスター!? これは勝負あったか!」
だが、ガイアスの瞳は燃えていた。
「小さな町から来たって、夢は掴める! 俺は絶対に負けない!」
――そして。
実況「決まったぁー! 勝者ガイアス! ニュースターの誕生だー!」
スタジアムが爆発したような歓声に包まれた。
タケルは拳を握りしめ、声を上げる。
「カッコいい……! 俺も、いつかガイアスみたいになる!」
サクラが微笑む。
「タケルなら、きっとなれるわ」
アキラは無言で頷いた。
三人は小さな手を重ね合い、夢を誓った。
――それが、すべての始まりだった。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
本作が初めての連載になります。
少しでも楽しんでもらえたら嬉しいです。




