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移植

作者: 葉沢敬一

毎週日曜日午後11時にショートショート1、2編投稿中。

Kindle Unlimitedでショートショート集を出版中(葉沢敬一で検索)

 私は先天性の疾患で心臓に問題がある。病院で生まれ、病院で育ち、移植できるドナーを待ち続けている。


 ある日、急に移植が決まった。もちろん、私も家族も喜んだ。心臓を譲ってくれるドナーには悪いが感謝しかない。突然決まるのは当然だが。たまたま条件が一致したのだ。


 手術が不安なのは当然としても、移植したら外に出られるようになる。

 私は喜んで同意書に署名した。細かい条項は読んでなかった。

 手術はすぐ。成功した。


 だが、手術直後から違和感を感じた。ちょっとした癖が出てきた。ストレスが掛かると鼻を触る癖。


 もしかして、元の心臓の持ち主の癖? そういえば、無意識の癖は、脳じゃ無くて身体全体に記憶されているという話を読んだことがある。移植した心臓に付いてきた?

 時々、以前は無かった親への怒りも発するようになった。こんな身体に生んだ親への理不尽な怒り。


 思い余って、医師へ相談した。元の心臓の持ち主の影響を受けているのではないかと。

 医師は困った顔をした。そして、それはないと言い切った。


「すみません、適合手術があまりにも上手くいったので伝えるのは躊躇っていたのですが、倫理に反しますよね。本当は、ドナーからの心臓じゃ無くて人工心臓なんです」


 ドナーは脳死状態と思われていたが、手術の直前に息を吹き返し、予備に準備していた人工心臓を移植したという。


「だから移植前の記憶も何もないんですよ」

 私は、鼻を触りながら呆然とした。誰がどうやって説明してくれるのか……


Kindle Unlimitedの「気軽に読めるショートショート集第4号」に収録

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