暗い家族の団らん
夜になり、そろそろ一日の終わる時間になる。
外は店等をたたみ、住宅は家族の団らんの時を過ごしている。
しかし、ヴァルカラ王宮での家族の団らんの時間は豊かではなかった。
ヴォルト、シュルト、メルは暗い顔をして集まっている。
何故集まっているのかはジナの事で話し合っていた。
あの時、シュルトが久しぶりにジナの姿を見た時だった。
シュルトはジナと何日ぶりに顔を合わしたが、その時のジナは恐怖で顔を真っ青になっていた。
ジナが恐怖になっていたのは、ジナ自身の両腕が野獣としての腕に変化したからだ。
「わ…私の腕…腕が…」
とジナは早く元に戻れと願って、自身の変化した腕に力を入れた。しかし、力を入れても変化した腕が動くだけだった。
それにシュルトはジナに恐怖を感じていた。
ここまで変化するとは思っていなかったので、かなりびっくりしていた。
その後にメルがやってきて、
「お…お兄様…だ…大丈夫ですか……え?」
と息を切らして来たが、ジナの変化した腕に驚き、目を見開いた。
メルが来たことでジナは
「は…早く戻って!!!」
と自身の腕を床に叩きつける。
その時の腕を叩きつける衝撃はかなりあり、一回叩きつけた事でその部屋が揺れた。
それにメルもシュルトと同じように恐怖を感じていた。
床に叩きつけても腕が戻らず、それを見たジナはパニックを起こした。
「あああああ……!!」
と叫び声を上げ、そしてそのまま気絶をした。
ジナが気絶したことで少しずつ腕が元に戻っていった。
野獣の腕から人間の腕に戻る光景は、やはり奇妙で、見ていると恐怖が出てくる物があった。
それがその日のお昼辺りに起きた事だった。
それをシュルトはヴォルトに伝え、今その事で話し合っていた。
「…あの時に自分はジナの印象が変わりました……今のジナは怖いと感じています…」
とシュルトは素直に自身の気持ちをヴォルトへ伝えた。それにメルも同じように
「私も感じました…! もう家族と見れないです…!」
とシュルトと同じ気持ちである事を伝えた。
それを聞いたヴォルトは悩んでしまった。
ヴォルトもジナがまさか腕の変化が出てくるとは思わず、ショックが大きかったらしい。
「……そうか」
とヴォルトは言い、暗い顔をしていた。
(…まさかジナが……)
とヴォルトは思い、どうするか考えた。
これは野獣としての変化が進んでいるのか?
ただの紛れに起きたものなのか?
と考えていたが、前者の方が強く思っていた。
その方が納得しやすいからだ。
シュルトとメルの言葉にこの話し合いは決定的に決まってしまった。
ヴォルトは苦渋の顔を浮かべながら、もうこれしかなかった。
「……ジナを…捨てる事にする」
と声が震えたが、それをシュルトとメルに話した。
それにシュルトとメルも暗い顔をしたが、それで安心出来ると思う所があった。
(………ラナ、こんな最低な父親になってしまった……すまない…)
ヴォルトは天国にいるラナへ謝罪の気持ちを伝え、自身は最低だと思っていた。
この罪悪感は背負っていく事をヴォルトは選んだ。