嘘つくじゃなかった!
さっきまですぐに返事を返してくれたのに、何かあったのだろうか。
私は、嘘をついた自業自得と思いながら、藁にもすがる思いで繋いだメッセージホットラインの最後の結論は喰われることは大丈夫というものだ。
「痛くない言われても、やっぱり怖い」
思わず泣いてしまう。
認知されてないと思われていた推しに、校門でザクロの鉢植えを捧げられるという公開告白をさせられて、ビビって逃げて、車に轢かれそうになり推しに助けられた。
泣いていると、個室の病室のドアが開いた。
推しがゆっくりと自信なさげに入ってきた。
推しは私と同じティーンエイジャーで整った顔の青年だ。
捕食者は美形が多い、推しもその例に漏れず美形だ。
ただ影が薄い。
私を気遣うようにゆっくり近づいてくる。
「椿ちゃん、大丈夫?痛いところない?」
推しは優しい。
あの時も推しの腕が取れかけているのに私の血を舐めて、自分の怪我が完全に治ってないのに、おんぶして避難所に連れて行ってくれた。
「だいじょうぶです。影の方」
推しには被食者が呼べる名前がない。
主要戦力であるネームドの捕食者たちとは違い、被食者に呼ばれる名前を持っていない。
推しは力が弱い、災害やモンスターとの戦いで主要戦力からは外れた存在、たちのことをまとめて影と呼ぶかれもその一人だ。
「よかった。いきなりプロポーズしてごめんね。
あと影の方ではなく、僕のことはテンソと呼んでお願い」
「いえ、こちらこそテンソ様から逃げて申し訳ないです。」
「早くプロポーズしないと君を他に食べられちゃうところだったから。あと様入らない。敬語やめろ」
「そうなの、テンソ」
私は自分の身ををギュッと抱きしめる。
確かちゃんと献身してないと判断されたものは、首から下を強制的に取られてバラされて捕食者たちに提供されることは法律で決まっていた。
私はちゃんと献血していたから問題ないと思っていた。
「椿ちゃんは僕のために、献血しかせずに綺麗な体を用意していたんだよ。
その気持ちをしっかりと受け止めて答えてあげようと思って、いろいろ頑張ってたら遅くなってごめんね」
そう言って、顔を近づけ、私の涙で濡れた頬を舐めた。
「ヒッ」
「びっくりさせてごめんね。君はやっぱり美味しい。
僕、胃が弱いから、そんなにたくさん食べれないけど、ゆっくり全部食べてあげるね」
そうテンソはにっこりと笑った。
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