魔族戦2
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俺は≪魔剣≫と≪黒鍵≫を構えてオーガに向けて走り出した。
「この惨状を引き起こしたのはお前か?では死ね」
オーガは左手に持っているこん棒を俺めがけて振り下ろしてきた。
直線的な攻撃だったので、横に避けて、右手に持っている≪魔剣≫でカウンターを食らわせた。
しかし、オーガに当たったが全くダメージを受けている感じがしなかった。
「なんだそれは。刃のない剣で何を斬ろうっていうのだ?」
「ちっ」
オーガの下腹部にあいさつ代わりに≪魔剣≫を当ててみたが、効果があるようには思えなかった。
そんなことを考えていると、オーガは右手で俺のボディーをめがけて拳を振り上げようとしてきた。
俺は≪魔剣≫と≪黒鍵≫を十字にクロスさせて、オーガの攻撃を防いだ。
が、ガードをしたまま後ろに吹き飛ばされ、地面を転がることになった。
「痛っっ」
俺はすぐさま臨戦態勢に戻る。痛いが我慢だ。
オーガは何の感慨もなく俺に急接近し、像が蟻を潰すかのようにこんぼうを振り下ろす。
ギリギリで避けるが、衝撃でまた吹っ飛ばされる。
「ハアハア」
穴の開いた地面を見た。
俺はオーガから魔力を直感で感じ取っていた。
だから、この阿保みたいな腕力には魔力が関係していることはなんとなくわかっていた。
だが、魔力がオーガの心臓からしか感じられない。
一番最初に感じた莫大な魔力は1箇所からしか感じられない。
「なんで、心臓からしか魔力を感じられないんだ・・・?」
俺は口から思考が漏れ出てしまった。
「ほぉ精度のいい魔力探知だな。俺の魔力はすべて≪心臓≫の魔力強化に充てている」
オーガは俺の独り言に対して、そう答えた。
「心臓・・・?」
「俺たちは魔力を生まれた時から操れる。だから、ある身体の一部分のみに魔力を集中させることなんて造作もない。そうすれば魔力の効率も圧倒的に上がる」
魔族が魔力捜査に秀でているのというのは本当らしい。
「そして心臓の役割は身体に血液を回すことだ。じゃあ血液を送るスピードが10倍になったらどうなると思う?」
「まさか・・・」
「想像通りだ。俺は常人の10倍の身体能力を手に入れられるということだ」
最悪だ。
俺の≪魔剣≫は魔力を食うだけだ。だから、純粋な身体強化にはまったく効果がない。
心臓が弱点ではあるが、その弱点を簡単に突かせてもらえるなんて思えない。
どうする?
「質問に答えてやったんだから一つだけ答えろ?」
「何だ・・・?」
「お前の刃のない剣には嫌な気配を感じる。そして、その黒刀も業物だ。しかし、肝心の使い手から魔力を全く感じない。これは一体どういうことだ?」
率直に思ったことを聞いたという感じだ。
「別にただの≪無職≫なだけだよ・・・」
俺はその疑問に答えた。知られて困ることなんてないからな。
「なんだそれは?そんなもの聞いたことがない」
「信じるか信じないかはお前に任せるよ。俺は正直に話したしな。それより話は終わりだ。行くぞ!」
俺は二刀を構えて、再びオーガに挑んだ。
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イーリスとルーナは岩に身体を預けながら魔力の回復に努めていた。
「相性は最悪ね」
「達哉、大丈夫かな・・・」
イーリスとルーナは達哉の戦いを観戦していた。
ルーナは達哉の本気の戦闘を見たことがないので、心配していた。
イーリスは逆に達哉が負けるとは微塵も思っていなかった。
「達哉はいつだって自分よりも強敵としか戦ってこなかった。それでも生き残ってきたのよ」
ルーナはイーリスをじっと見る。
「信頼しているのね」
「ええ、私の唯一無二パートナーだもの」
イーリスはその言葉に誇りを持っているようだ。
ルーナは達哉の方を向き直って、この2人の関係を羨ましく思った。
「私も・・・(ボソ」
「何か言った?」
「いえ、何でもないわ、それより、オーガに対してどう勝つんだろう・・・」
「そうね・・・身体の表皮に魔力を帯びている感じは全くしない・・・となると、≪魔剣≫の特性は活かせない。微弱に感じる魔力は内蔵・・・大体心臓辺りかしらね。そこを狙うのは難しいから、≪黒鍵≫で攻撃していくのがセオリーだとは思うんだけど・・・」
「オーガの皮膚は硬すぎる。それに動きも早いから、なます斬りにするのは厳しいように思えるわ」
ルーナが現実的なことを言う。
それでも
「それでも達哉が勝つわ」
イーリスにはそう確信していた。
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「速いし、一撃が重いし、硬いし、魔力も心臓からしか感じられないし、なんなんだよこいつ!」
俺は悪態をつく。相性が悪いどころじゃない。
「そうか、俺は楽勝なはずの戦いをここまで延ばされてイライラしている。無職と言うのは本当らしいな」
俺が紙一重の読み合いでなんとか攻撃を凌げている。
が、
「グフっ」
俺は横薙ぎの一撃を≪魔剣≫を使ってなんとか直撃を避けるが、吹っ飛ばされて地面を転がる。
自身の勝利条件を考える。
≪魔剣≫を心臓に当てるか、≪黒鍵≫で直接斬るしかない。
だが、前者は相手が一番警戒しているところだし、≪黒鍵≫で斬ろうにも相手の肌が硬すぎるから致命傷まで与えられない。
「やっばいな!」
俺は顔が引きつる。
そうこうしていると、俺に対して高速ラリアットを繰り出してくる。
猛スピードで突進してきたが、俺は横に飛んで避けた。
そのまま俺はオーガを追いかけて背中に≪黒鍵≫を上段斬りで仕掛ける。
しかし、
「かゆいな~」
全く効いている様子がない。
「もうちょっと痛がってくれよ・・・」
「俺を痛がらせたかったら今の20倍の威力で斬りつけてこい!」
振り向き際にこん棒を横薙ぎに振りぬいてきたが、かがんで躱し、太ももを狙ったがジャンプで躱されて、足の指さきに当たっただけだった。
が、
「血が出てる・・・?」
どういうことだ。内臓や頭や背中を斬っても全くダメージがなかったオーガが足の指さきにかすっただけで血が出ている。
「もしかして・・・」
俺は仮説を立てた
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「達哉の顔色が変わった・・・?」
ルーナはさっきまで敗色濃厚な戦いだと思っていたため、早く魔力を回復させて参戦を考えていたが、達哉の顔色が突然変わった。しかも獲物を刈る前の鷹のような獰猛な・・・
「何か気づいたようね!」
イーリスもその変化に気付いたようだ。
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オーガと俺は向きあっていた。
「憎らしい顔だ・・・そんなに俺から血を流させたことが嬉しいか?」
「ああ、これでお前を倒せる」
「ほざけ!!!!」
オーガが目にも止まらないスピードで上段からこん棒を振り下ろしてくる。
俺はそれを≪魔剣≫と≪黒鍵≫を使って、受け流す。
右側から鋭い横蹴りが来るが、≪魔剣≫で受ける。
そして、左手に持っている≪黒鍵≫で内臓を狙うがオーガは内臓の防御を捨てて、左手で俺の脳天を勝ち割りにくる。
俺は途中で攻撃をやめて、振り下ろされる拳を躱して背後を取った。
そして、背中を狙う、のではなく、≪黒鍵≫でアキレス腱を狙った。
すると
「グハっ!」
オーガの右足のアキレス腱から血が流れる。
「思った通りだ、ハアハア」
そして、そのままオーガの心臓から一番離れた部分である指先の超先端を斬った。
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「やった!!!」
「凄い凄い!!!」
イーリスとルーナは達哉がオーガのアキレス腱を斬ったことに歓喜した。
「でもどうして?さっきまで全く攻撃が効かなかったのに・・・」
ルーナが首をかかげて、疑問を口にした。
「おそらくだけどー」
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「お前の身体強化は心臓を強化することによって血液のスピードを上げる。それによって常人よりも頑丈になっているということだ。ということは血液の通りが薄い末端は常人並みということだろ?」
「くっ見破られたか!」
オーガはこん棒を杖代わりにして、なんとか立ち上がる。
「だが、見誤るなよ?俺がこの程度のトラブルを見越していないと思ったのなら大間違いだぞ?」
途端に魔力の激流が起こり、俺の髪をなびかせた。
「俺が今まで心臓にのみ使っていた魔力をすべて全身に開放する!!」
俺の狙い通りと気付かずに。
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オーガの魔力はイーリスとルーナにも当然届いていた。
「くっ、凄い魔力ね!イーリス私たちも参戦しましょ!!達哉が危ない」
「待った!」
イーリスはルーナの尻尾を掴んで止めた。
「ヒャン///尻尾ダメ!!」
プンプンしているルーナを無視して達哉の方に向き直る。
「だまって見ていて!達哉の勝ちよ」
「へ?」
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「ははははははははははは、どうだ?これが顕在化した俺の魔力だ!!さっきのちまちました攻撃なぞ、全身にくまなく魔力を覆ってしまえば負けない!どうだ?絶望したか?」
オーガは完全に勝った気満々だった。
俺はうつむいたままだった。
「怖くて声もでんか!では死ね!」
俺は頭上から斜めで振り下ろされるこん棒を軽く躱して、
「『魔剣:飛式』!」
をオーガの右腕に至近距離で当てた。
「なんだ・・・それは・・・いや待て!右腕が動かん!何をした?!」
オーガが狼狽している。しかし、瞬時に疑問を投げ捨てる。
「右腕を奪ったくらいで調子に乗るなよ!」
アキレス腱を斬られた右足で
俺を蹴り飛ばそうとするが、俺は≪魔剣≫で受ける。
「っぐ」
俺は受け流せずに、吹っ飛ぶ
「はははっ、どうだこれがー、右足が動かん・・・」
オーガは自分の身に起こったことが何なのか全く把握できていなかった
俺はゆっくりと立ち上がり、オーガの元に向かう。
(なぜだ?さっきまで何もかもが俺が勝っていた!魔力を使い始めた途端あのおかしな剣が機能し始めた。まさか!)
「気づいたか?そう俺の≪魔剣≫は魔力を食う。しかし、それだけだ。魔力のない戦いだったら俺に勝ち目は全くなかった」
俺は淡々と告げた。
「なんだ、その破綻した能力は!!?魔力を食うなど、この世界の理を破壊するものではないか!」
「そんな大層なことはわかんないよ。ただルーナの目的のためにお前は邪魔なんだ。だから消えてくれ」
「おのれ!!」
オーガは残った左手と左足でなんとか立ち上がろうとするが俺はトドメを刺すことにした。
「『魔剣:乾坤一擲』!」
心臓に一直線に貫く≪魔剣≫の斬撃。
俺はそれでオーガの心臓の機能を停止した。
「ハアハア」
「お、おの、れ、せ、めてみち・・・づれ」
オーガは最後の抵抗で自身の魔力を暴発させて自爆を図った。
「や、ヤバい」
≪魔剣≫は体力を使う。一瞬油断した隙にオーガは魔力を暴発させ、辺りは煙に包まれた。
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5分くらいたった後、ベースキャンプの煙が徐々に晴れてきた。
オーガの死体は完全に爆発で消えていた。
オーガだけではない。他の魔族の痕跡もすべて吹き飛んでいた。
まるで最初からそこには何もなかったかのように・・・
「あっぶね!!」
「ほんとよ!!最後の最後まで敵が何をやってくるかはわからないんだから油断しちゃダメよ!!!」
「うっ、面目ありません」
俺はオーガの自爆の時、死を覚悟したが、足元にイーリスがなけなしの魔力で作った≪空間≫の窓に落ちてことなきを得た。
少し慢心していた。俺は常に強敵と戦ってきて、勝ち続けてきたので慢心していたのだろう。
「初心に帰ろう・・・」
もう二度と今回のような失態を繰り返さないために・・・
「お兄ちゃん!!すごいね!!本当に勝っちゃうなんて!」
ルーナは俺の腹に引っ付いてきた。
イーリスがそんなルーナを白い目で見ている。
「年下をお兄ちゃんって呼ぶルーナもそうだけど、それを受け入れてる達哉も達哉だけどね」
いかん、俺に変態のレッテルが貼られてしまう。
「ええーじゃあお姉さんモードになる」
ルーナがそういうと、俺の耳に向かって
「ご褒美に、後でイイコトをしてあげる。ぼ・う・や」
「////~~~」
ウィスパーボイスで耳に語りかけられて、くすぐったくなった。
「は、離れなさい!!」
「ええ~いいじゃん。ね、お兄ちゃん!」
「もう勘弁してくれ・・・」
締まりは悪いが、俺たちは第一関門の魔族の拠点を潰せたのであった




