≪奈落の樹海≫編エピローグ/呪いと想い
いつも読んでくれてありがとうございます!!
「も、もう大丈夫よ。ありがとう、達哉////」
イーリスは俺から顔を背けていた。
さっきまで泣いていたので、俺に見られるのが恥ずかしいのだろう。
「いいよ。何年もここに閉じ込められていたんだ。泣くほど嬉しいのは当たり前だろ?」
「う、うん//」
さっきからイーリスの様子がおかしい。
具体的に何がおかしいかは分からないが、何かがおかしい。
俺はそれが何か言葉にできない。
「まあ、いいか」
すぐに思いつかないということは大したことではないのだろう。
「それにしても、気持ちいわ。あったかい布団の中みたいね」
「そうだなぁ~」
俺たちは今、≪大王樹≫に寄りかかっていた。
身体の傷は癒えたが、≪大王樹≫には太陽のような温かさがあった。
俺たちはそこで休憩をしていた。
「この後どうするか~」
「そうね~、とりあえず魔力が回復するまではここでのんびりしたいわね~」
「どのくらいで回復しそう?」
「大体半日くらいかしらね~」
「そうか~」
俺たちは完全に気が抜けていて、自堕落モードに入っていた。
体力は回復しているが、精神面で俺たちは疲れていたんだろう。
「そういえば、俺のうつ病の兆候も全くないな」
俺は元々精神疾患者だ。
けれど、≪奈落の樹海≫に来てから精神面で辛いということは全くなかった。
皮肉なことだが、アルブに追放されたのがよかったのだろう。
あいつらから離れられたことが結果的に自身の症状を癒やすことに繋がったのだ。
それに
「イーリスにも会えたしな」
「何か言ったぁ?」
一人事だったが、イーリスにも聞こえていたらしい。
「ん~、イーリスに出会えてよかったって思ってさ」
「はあ/////!?」
イーリスがこっちを一瞬見て、顔を隠してしまった。
そして、向こう側を見ながら
「わ、私も達哉に会えてよかったわ////」
イーリスもそういってくれた。
照れくさいような信頼しているような・・・
そんな居心地の良い沈黙が流れる。
俺はこのままダレていたらいかんと思って、≪冥王の玉座≫をちらりと見た。
そこには、ヨルムンガンドが力尽きていた。
「勝てたのは完全に運だよなぁ~」
イーリス、ヨルムンガンドの制約、≪魔剣≫、そして何よりも重要なピースである≪大王樹≫。
一つでも欠けていたら絶対に勝てなかった。
「運も実力のうちっていうでしょ?それに私だって一人じゃ勝てなかった。これは達哉と私の勝利よ。素直に誇りましょ」
「そうだな」
ヨルムンガンドは俺の敵だった。
生死を争った仲だが、憎いかといったらそんなことはない。
むしろ俺の中では感謝の想いもあった。
ヨルムンガンドという存在が俺を強くしてくれた。
だから、俺は心の中で敬礼をした。
もう2度と戦いたくはないけど・・・
「ん?」
≪冥王の玉座≫の中心に白金色の光が見えた。
俺は気になったので、≪大王樹≫から身体を起こして≪冥王の玉座≫の中心に向かった。
「なんだこれ?」
それはビー玉くらいの宝石だった。
「それは≪黒鍵≫を完成させるための≪神結晶≫ね」
イーリスが後ろを付いてきたらしい。
俺の肩に顎を乗っけてそう説明した。
「重いし近い」
「いつものことでしょ?」
「ん、いつもより熱いぞ?」
「余計なことは言わなくてもいいの///」
イーリスはコホンと咳払いして説明モードに移った。
「≪黒鍵≫には≪神殺し≫のスキルを持つと言ったのを覚えてる?」
「ああ」
「正確に言うと、≪黒鍵≫は媒体なのよ」
「どういうことだ」
「≪神殺し≫の概念を≪黒鍵≫が持つには世界に散らばる≪神結晶≫を集めて、≪黒鍵≫に与えるのよ。ほら、≪黒鍵≫の柄を見て見なさい。凹んでいるところがあるでしょ?」
言われてみてみると、5箇所ほど窪みがあった。
「もう察していると思うけど、≪神殺し≫を発動するには5つの≪神結晶≫が必要よ」
「じゃあ今俺が持っているはその内の1個ということか・・・けど、他の4つを集めるなんて夢のまた夢だな」
「そんなことはないわよ。残りの4つがどこにあるかは大体わかっているわ」
「まじか」
「ええ、まじよ。一つはここ、≪奈落の樹海≫。残りはここから見て、東のグレン山脈、西のカルシ湖、北の魔族領、最後にロザリア王国にあるとされているわ」
「なるほどな・・・ってなんだ!?」
「へ?」
俺たちがいる場所、≪冥王の玉座≫が突然光り始めた。
反射的にイーリスを背中に抱えたまま、脱出した。
よく見てみると、アルブの魔法陣に似ていた。
だが、模様が若干違った。
「これは転移の陣ね、けど、これはアルブのモノとは違うわ。転移の陣には使うものの魔力が色濃く反映されるから」
うーんと唸っているが俺の中ではなんとなく答えは出ていた。
「推測だけど、≪神結晶≫を手に入れた者に対するご褒美のようなものじゃないか?普通だったら≪空間≫を使って、ショートカットなんてできないんだから外に出るもの一苦労だし・・・」
「確かに・・・その説はありそうね」
「それにイーリスを監視するだけならヨルムンガンドを常にイーリスを手元に置いた方がいいに決まっている。それなのに、ヨルムンガンドが≪冥王の玉座≫を住処にしていたのは≪大王樹≫だけではなく、≪神結晶≫を外敵から守るためだったんじゃないか?」
イーリスは一瞬考えこむ様子を見せる。そして、
「そうね、的を得ているわ」
「だから、半日たったらその魔法陣に乗ってここを脱出しよう。もちろん安全策ならイーリスに≪空間≫を使ってもらうことになるけど・・・」
「元々はその予定だったけど、魔力を消費するのよね・・・いいわ、達哉の案でいきましょう」
「OK。なら俺は≪大王樹≫で半日寝かせてもらうわ」
「ええ、私が見張っているからゆっくりなさい」
「お言葉に甘えさせてもらうよ」
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「・・・寝たわね?」
私は達哉をツンツンして寝たかどうかを確認した。
そして
「////////////////////////っっっ」
私は悶えた。とにかく悶えた。
「呪いのせいよ!!!!!私が達哉に本当に惚れるなんてありえないわ!!」
けど、達哉の顔を見ると、胸の高鳴りが止まらない。
≪一目惚れ≫のせいではない。だって呪いは戦いの最中に消えたのだから。
私は自身のステータスを見直す。
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イーリス レベル:65
≪職業≫:黒聖女
≪スキル≫:空間 再生 瞬間模倣 攻撃魔法強化 腐魔 ≪一途な恋≫
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そう≪一目惚れ≫という呪いが解呪されて、代わりに≪一途な恋≫というスキルが発現してした。
≪一途な恋≫:想い人の傍にいると全ての能力が2倍になる
つまり、私は達哉のことが本当に好きになってしまったということになる。
「~~~~~~~~~//////」
でも、そうとしか考えられない。呪いが消えたのだって、本当に好きになってしまったら意味がない。
「そう考えたら、納得がいくのよね・・・」
私はすぐ隣で寝ている達哉を見た。
私は達哉の顔を触りたい衝動に駆られた。
けど、恥ずかしくて手を引っ込める。
さっきも背中から抱き着いてみたが、身体が真っ赤になるのを感じた。
呪いの時は恥ずかしさで熱を帯びたが、それだけだ。
今では自分からどんどん触れ合いたいと思ってしまっている。
もう認めるしかないだろう。私は達哉に惚れてしまったらしい・・・
寝ている達哉の隣に並んで添い寝をする。
「ハア~責任取ってよね///」
寝ている達哉の耳元に私はそう呟いた。
ただなぜかしら・・・達哉が時折呟いているカオル?という単語がどうしても頭から離れない・・・
「まさかね・・・」
イーリスは自分の最大のライバルになる人間のことを直感的に感じていた。
2/14に修正を行おうと思っているので、次の投稿は2/15になります。




