ヨルムンガンド戦2
間に合った!
イーリスが血まみれで倒れていた。
ヨルムンガンドはイーリスを捕えようと顔を近づけた。
「『魔剣:飛式』!!!!」
俺は何が何だか分からなくなったが気づいたらヨルムンガンドに攻撃していた。
「!!!!」
しかし、ギリギリのところで避けられてしまう。
そして、ヨルムンガンドは己の右目を奪った技と人間を見据えた。
俺はそれを無視してイーリスに駆け寄った。
「イーリス!!!大丈夫か!?」
「んぅ、た、達哉・・・来てくれたのね」
気絶していただけらしい。俺が来て少し安心したらしい。
「遅くなってごめん。途中で足止めにあって・・・」
俺はあんなクソ蛇に足止めされていた自分を蹴り殺したい衝動に駆られた。
「シュルルル~・・・」
ヨルムンガンドが俺を見据えている。
俺も向き直って、ヨルムンガンドを睨む。
「久しぶりだな、右目の調子はどうだ?」
俺はすぐにでも逃げ出したい自分を奮い立たせるために、軽口をたたく。
ヨルムンガンドはその一言で憤怒の瞳になった。
「シャーーーーーー!!!!」
ヨルムンガンドは臨戦態勢になった。
俺も≪魔剣≫を右手に、≪黒鍵≫を左手に構えた。
が、
「え?」
俺は気が付いたら、違う場所にいた。
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「危なかったわ・・・」
隣を見ると、イーリスが血まみれでいた。
「≪再生≫」
自身に≪再生≫を使って、治療を行う。
俺たちは≪空間≫魔法で一時≪冥王の玉座≫から撤退したらしい。
「先にお礼は言っておくわ。私のピンチに飛び出してくれて、その、ありがとう///」
「別に気にすることはないよ。むしろ遅れてごめん」
「いいのよ。来てくれただけでよかったわ」
こういう≪一目惚れ≫が発動していないときのイーリスは魅力的だから反応に困る。
俺は咳払いをして、ヨルムンガンドに話を戻した。
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「それにしても困ったわね。奇襲で≪魔剣≫を当てることが勝利への絶対条件だったのに・・・」
「そうなんだよな・・・」
俺とイーリスがグルだということは完全にバレてしまった。
だから、イーリスが囮になったとしても俺の存在を絶対に警戒するはずだ。
「どうしたもんか・・・」
お互いに打つ手がない。勝つ方法はわかっているのに、それを実現する手段がない
「何か一個でいい・・・ヨルムンガンドを欺ける何かが・・・」
「魔法は利かない。物理攻撃でダメージを与えても≪大王樹≫付近だとダメージを与えてもすぐに回復されてしまう。逃げようにも≪奈落の樹海≫の周縁部に行こうとすれば私に付いてきてしまうし・・・」
ん?
「イーリス今なんて言った?」
「え、魔法は利かないしーーー」
「違う最後になんて言った!」
「えーと、私に付いてきてしまうって」
「それだ!!!イーリス、行けるぞ!」
俺は歓喜のあまりイーリスに抱き着いてしまった。
「え///ちょ///何してんのよ!!///」
イーリスが狼狽しているが、そんなことは知らない。
俺の考えが正しければ五分五分の勝負ができる!
「イーリス、俺の考えを聞いてくれ、まずはーーーー」
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イーリスが腕を組んで難しそうに考えている。
「それなら確かに勝てる可能性があるわね。けど、最後は達哉次第でしょう・・・?」
「ああけど、それ以外に勝つ方法はない」
イーリスは一瞬目をつむった。そして、
「ふぅ~やりましょう。その代わり、絶対に決めてよね!」
「任せろ、さっきみたいなドジは踏まない!」
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ヨルムンガンドはイーリスと達哉が手を組んでいることを察していた。
このまま逃げるつもりだったら、主に伝えようと思ったが、イーリスの動きを見てみるに何か企んでいることは明らかだった。
面倒だが、イーリスと追いかけっこをすることに決めた。
あの剣に気を付けさえすれば何も脅威はないと高をくくってイーリスを追跡した。
が、
目の前に達哉が現れた。
「来いよ!クソ蛇。イーリスは追わせないぞ!」
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作戦会議中
『ただごめんなさい。それを実現するのに魔力が足りないのよ・・・』
『残りはどれくらいなん?』
『そうね。全力の3割くらいかしら・・・」
『そうか・・・』
俺はイーリスの魔力量の話を聞いたときから覚悟していた。そして、イーリスも
だから残された手段は、
『俺が足止めするしかないか・・・』
『・・・それしかないようね。でも大丈夫・・・?あいつを足止めするなんて魔法なしじゃ不可能に近いわよ・・・?』
『正直逃げ出したいよ。俺はちょっと前まで一介の学生だったんだ・・・けど俺を信じてイーリスは囮になってくれただろ?次に命を懸けるのは俺の番だよ』
イーリスに優しく微笑みながら伝えた。
覚悟を決めたからなのか、俺の心は凪のように静かだった。
イーリスもおれの覚悟を受け取ったのだろう。
『分かったわ。達哉の覚悟に私も応える!』
『やり切ろう。それで何分稼げばいい?流石に1時間とかは無理だぞ?』
『そうね。3、いや、5分お願い!』
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「さてやるか」
5分間。ここに足止めするのが俺の任務だ。
「シュルルル」
ヨルムンガンドは俺と徐々に距離を詰めてきた。
このままにらみ合いになれば楽だがそんなことにはならないだろう。
なぜならここはヨルムンガンドのテリトリーだ。
「その手は食らうかよ!」
以前食らった毒だ。遅効性だが食らうと確実に動けなくなるので、後ろにバックステップをした。
ヨルムンガンドは俺のバックステップに対して、鎌首をもたげてマグマのようなブレスを放ってきた。
俺はそれを≪魔剣≫を使って食らう。
1分
ブレスを何発も放ってくる。だが、俺の≪魔剣≫はそれをすべて食らう。
ヨルムンガンドも≪魔剣≫に右目を奪われているので、警戒して近づいてこない。
「このままずっとこういう攻撃だったらいいんだが・・・」
俺の祈りはやはり届かなかった。
ヨルムンガンドはついに魔力の攻撃では俺を倒せないと気が付いたのだろう。
ブレスの連射を止めて、突進の態勢を取った。
2分
ここからが本番だ。
ミノタウロス戦のように≪魔剣≫を設置して罠にハメるという方法は取りたいが、あの変則的な動きはスキルではないだろう。
だから、1発当てたら終わりのシューティングゲームだ。
俺は的の方だがな
「イーリス!急いでくれよ!」
「シャーーーーーーー!」
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「ハアハア、ヨルムンガンドを引き付けるのには成功しているようね!」
≪奈落の樹海≫に響く地響きを聞いて、達哉が頑張ってくれていることが分かる。
私は現在≪奈落の樹海≫の周縁部を目指して走っている。
とにかく走って距離を稼がなければならない。
「ハアハア、それにしても、ハアハア、魔力なしで走るのは久しぶりすぎてきついわ、ハアハア」
≪空間≫の力はまだ使わない。ギリギリまで≪空間≫を温存しないと私の魔力が持たない。
そのために達哉に頑張ってもらっているのだ。
私は1分1秒早く目的地に行く。
そして、さっき達哉が助けてくれたときのこと思い出す。
「////なんで今達哉のことなんて考えているのよ!///」
私は脳内に浮かんだ達哉の顔を頭をぶんぶんと振って振り払って走った。
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3分
「クソ、あの図体で何であんなに速く動けんだよ!!!」
だが、突進はなんとか読み切ってギリギリで躱している。
ヨルムンガンドも当たらないことにイラついているようだ。
キツイがこのままブレスや突進だけを繰り返してきてくれるなら大丈夫だ。
4分
「よし、残り1分!」
だが、一瞬気が緩んだヨルムンガンドがその隙をついてきた。
鎌首をもたげてきた。
「ブレスだろ!」
俺は忘れていた。イーリスの教えである「相手の身体の構造を考えること」を。
ブレスの態勢で、ヨルムンガンドは尻尾を横薙ぎに振ってきた。
「何!!!!!!?」
俺は完全にブレスだと思っていたため、意表を突かれた。
横薙ぎの尻尾は避けられるものではない。
俺は回避は諦めて、≪魔剣≫と≪黒鍵≫を盾にしてダメージを軽減することにした。
が、
「ガハっ!!!」
気が付いたら、≪冥王の玉座≫付近の大木にぶつかっていた。
背中がヒリヒリと火傷をしたみたいに痛い。
何本か骨も折れた感覚がある。
「痛~~~~~~!!」
俺は地面で転がり回った。
しかし、無情にもヨルムンガンドはこちらに向かってくる。
不幸中の幸いなのは≪魔剣≫でヨルムンガンドの尻尾の機能を一部停止させたので、こっちに向かってくるスピードは雀の涙ほどだが遅い。
しかし、ヨルムンガンドは以前のように慢心がない。
俺めがけて、口を大きく広げて近づいてきた。
食われる!!
そう覚悟したところでヨルムンガンドは突然目の前で止まった。
ヨルムンガンドはなぜ身体が止まったのかわからないといった感じだった。
しかし、俺はわかっていた。
「イーリス!!」
俺は今はここにいない相棒がやってくれたと歓喜した。
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「ハアハア、やっと着いた。ヨルムンガンドが私を追ってこなければならない≪奈落の樹海≫の周縁部。」
イーリスは≪奈落の樹海≫でヨルムンガンドが強制的に自分を追いかけなければならないポイントまでたどり着いていた。
「待たせたわね達哉。すぐにそっちに戻るわ!」
イーリスは不敵な笑みでヨルムンガンドを待った。
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ヨルムンガンドは意思を失ったかのように、俺からイーリスの元にに向かっていった。
ヨルムンガンドがこの≪奈落の樹海≫にいるのはイーリスの監視だ。
だからイーリスがこの樹海を出ようとすると、ヨルムンガンドが絶対に追ってくるのである。
俺たちはははそれを逆用した。
イーリスが≪奈落の樹海≫から出ようとすれば、≪冥王の玉座≫が空になる。
「急がないと・・・」
俺は痛む身体に鞭を打って空の玉座に向かった。
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「来たわね、相変わらず速いんだから・・・、けど、鬼ごっこも今日でおしまいよ」
イーリスは目前に迫ってきたヨルムンガンドに呟いた。
「シャーーーー!」
襲い来るヨルムンガンドに対して、≪空間≫魔法を使って躱す。
そして、
「さあ、最後の鬼ごっこよ!ついてきなさい!」
イーリスは節約した魔力をすべて使って、≪冥王の玉座≫を目指した。
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俺は仮説を立てていた。
『魔剣:飛式』は俺の体力と引き換えに斬撃を飛ばして、相手の魔力を奪う強力な技だ。
なら、体力を回復し続けながら使い続けたらどうなるのか?
≪空間≫の窓が俺の隣に開く。
「ハアハア、もうダ、メ。魔力は、完全に、切れたわ。後は任せたわよ!!」
すると、≪空間≫の窓から出てきたイーリスはそのまま隣で倒れ込む。
そして、イーリスを追いかけてヨルムンガンドが襲ってきた。
俺を見てイーリスからターゲットを変えた。
まるで玉座を奪われたことにいら立っているようだった。
「シャー!!!!」
地面はこすれる音で地鳴りし、≪奈落の樹海≫はヨルムンガンドの発する声で埋め尽くされた。
俺は≪魔剣≫を上段に構える。そして、
答えは、
無限に『魔剣:飛式』を放つことができる。
「食らえ!『魔剣:無限の太刀』!!!!」
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体力を使ってもそのたびに≪大王樹≫の効果ですぐに回復するため、俺は『魔剣:飛式』をヨルムンガンドに向かって放ちまくった。
「シャっシャーーー!!っっ」
ヨルムンガンドは回避しようとするが、もう遅い。
身体の機能がどんどん停止し、動きもどんどん緩慢になっていく。
そこに雨のように魔力を奪う斬撃が繰り出される。
そこには王の称号にふさわしい大蛇ではなく、強者に蹂躙されていく哀れな蛇だった。
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ついに完全にヨルムンガンドから魔力が感じられなくなった。
俺はヨルムンガンドに近付き、念入りに≪魔剣≫を当てた。
「どうなの・・・?」
イーリスは不安と期待に満ちた表情をしていた。
俺は
「終わったよ。俺たちの勝ちだ」
穏やかな口調でイーリスに伝えた。
「本当に・・・本当に・・・?」
「本当だ」
「私は解放されるの・・・?」
「解放される」
「わ、だじは、自由になれ、るの・・・?」
嗚咽まじりに俺に問う。
「そうだよ。自由だ」
俺は簡潔に答えた。そして
「うええーーーーーーん!!!」
イーリスは感極まって子供のように泣き出した。
俺はそんなイーリスの頭を撫でながら、勝利の余韻に浸っていた。
ここで≪奈落の樹海≫編を終わりです。
話を作るのって本当に難しいですね・・・




