出発
危ない!毎日投稿が崩れる所でした(二回くらいやらかしてますが)
いつも読んでくれてありがとうございます
イーリスと俺はヨルムンガンドのいる『冥王の玉座』に向かうことを決めた。
出発は明朝。それまで俺たちは英気を養うことにした。
何よりも、イーリスの魔力は必須だ。俺が奪ってしまった分回復に時間がかかってしまっている。
「そういえば≪冥王の玉座≫には何があるんだ?」
地形についての情報は俺にとって重要だ。
基本的に特殊能力がない俺は環境や相手の身体の構造や魔力を把握しないと勝負ができない。
「≪大王樹≫と言われる巨木があるわ」
「それって体力を回復してくれたりする木のこと?」
俺はこっちに≪転移≫をしてきたときのことを思い出した。
あの巨木がなかったら俺は死んでいた。
「あら、それは≪王樹≫よ。≪大王樹≫は≪王樹≫の親にあたる存在ね」
「なら、≪王樹≫と同じように木の付近にいたら体力を回復してくれるのか?」
「そうね。ケガをしても≪大王樹≫の周辺ならすぐに治るわ。だからこそヨルムンガンドは≪大王樹≫を拠点にしているのよ」
俺は嫌な想像をした。
「ってことは体力が無限ってことか・・・勝てなくね?」
素直な疑問をぶつけた。
イーリスはニヤリと笑った。
「≪大王樹≫の周辺は確かにケガをしない。だけどね、魔力は回復しないのよ」
「そうか!だからダメージを負わないと油断しているからこそ俺の≪魔剣≫の狙撃のチャンスが高いということか」
「そういうこと。頭の回転が速くて助かるわ。素敵よ」
「お褒めに預かり光栄です」
俺たちは軽口を叩き合う。
この樹海を抜け出せるかもしれないと、浮足立っているのは明白だった。
「じゃあ次の問題に移りましょうか」
イーリスはまた神妙な顔つきになって続けた。
「ヨルムンガンドの元に行くためには避けては通れない魔獣がいるのよ」
「魔獣?」
「そう。正直そいつ自身は全然強くない。けれど、侵入者が近づくと、途端に魔獣を呼び寄せるのよ」
「≪空間≫魔法を使って避けられないのか?」
「無理ね。≪冥王の玉座≫に近付くとたちまち感知されて、大勢の魔獣を呼びつけられるわ。だからこそ潰さないといけない」
「なるほどな・・・ヨルムンガンド一匹を倒すだけの単純な作業じゃないというわけか・・・」
「そういうこと。しかも途中でバレて魔獣を呼ばれてもアウト。だから暗殺が手っ取り早いわね」
作戦を詰めていく。俺たちは一歩でもミスをすると、一瞬で元の≪奈落の樹海≫に後戻りをすることになる。もしかしたら、アルブに直接見つかって殺されるかもしれない。
チャンスは一度だけ。絶対にミスをできないプレッシャーに俺は冷や汗をかいていることにすら気が付かなかった。
「ーじゃあ手筈通りに頑張りましょ。それと達哉。貴方には渡しておくものがあるわ」
「渡しておくもの?」
なんだ?
「これよ」
「こ、これは・・・」
それは俺を散々切りつけたイーリスの剣だった。
「この剣は私の≪瞬間模倣≫の元になった人が使っていた剣よ。あなたになら託せるわ」
どう見ても業物だ。俺にこんなものを渡していいのだろうかと思い、イーリスの方を見ると頷いた。
「私がいいって言ったんだからいいのよ。もらっておきなさい。それに達哉は魔獣以外の魔力なしの獣に対して、攻撃する手段がないでしょう?」
「・・・ありがたくもらっておく。けど、これの元の持ち主は誰なんだ?それにイーリスの≪瞬間模倣≫の元になった人っていうのは一体・・・」
「≪剣の王≫と言われる男よ。剣はその人から託された」
「その人は今どこに?」
「死んだわ」
「そ、そうか」
その端的な一言に悲しみが満ちていた。持ち主はイーリスにとって近い存在だったのだろう。
イーリスは現実に戻ってきて、伝え忘れていたことを俺に伝えてくれた。
「その剣の名前は≪黒鍵≫。スキルは一つだけ。それ以外はただただ頑丈なだけの剣よ」
「スキル?どんな?」
「≪神殺し≫」
「なんだそのピンポイントな能力は・・・」
俺は左に持った≪黒鍵≫を見る。
「今回の戦いではそのスキルがいかされることはないわ。聞きたかったらこの戦いに勝利することね」
俺は胸にモヤモヤしたものを残しながら、確かになと納得した。
「はい、じゃあ真面目な話は終わり。寝るわよ」
「当たり前のようにベッドに入ってくるなよ」
さっきまでのシリアスな展開はどこにいった・・・
「仕方がないじゃない!さっきから愛を叫びたくて仕方がなかったのにずっと我慢してたのよ!一緒に寝なさい!」
「なんだよそれ・・・」
俺は結局根負けしてイーリスと寝た。毎回のように背中に抱き着かれているけど、薫と再開した時になんて言い訳すればいいんだろうか・・・
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早朝、俺たちは身支度を整えて、家の前にいた。
「よし、行くか!」
「ええ、覚悟はいい?」
「もちろん!」
一か月とはいえ、この家にはお世話になった。少し名残惜しいが感謝の気持ちを伝えて、俺たちは歩き出した。
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俺たちは≪冥王の玉座≫に向かって樹海を徒歩で進んだ。
イーリスの≪空間≫の力は便利だが魔力を使う。だからこそ大事なヨルムンガンド戦に残しておきたい。
しかし、節約した分、魔獣との戦闘は起こる。
背後から、魔物が襲ってきたのが直感で気づいた。
「任せたわよ、ダーリン」
「OK」
ツッコミたいが我慢。
すると、草をかき分けてイノシシ型の魔獣が襲ってきた。
スピード的に風系統の魔法をまとっているのだろう。
台風が襲ってきているようだ。
しかし、
「読めてんだよ!!!」
俺は横に躱すと同時に≪魔剣≫をイノシシ型の魔獣に当てる。
「!!!」
イノシシ型の魔獣は魔法が使えなくなったことに驚いて急停止したが、そこで俺は左手に持っている≪黒鍵≫でイノシシ型の魔獣を叩き斬った。
「ふう~」
二刀流は初めてだったが、なんとか初の実戦で使えた。
右手に魔力を食らう≪魔剣≫を、左手に≪神殺し≫の概念以外はただの頑丈な剣である≪黒鍵≫。これで俺はどんなやつとも戦うことができるようになった。
俺は目当ての魔獣に遭遇するまではイーリスの≪騎士≫だ。
なんとしてでも守り切る!
「守られてる感じが新鮮でいいわね。私、愛しの騎士様に大切にされるのが夢だったのよねぇ」
「はいはいお姫様。しっかり守られてくださいね」
「は、反則よ///」
全く緊張感がなくて何よりだ。
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2時間ほど歩いただろうか。襲撃は5回ほどあったが、なんとかイーリスに魔力を温存させることができた。
前に戦ったドラゴンにも遭遇したが、攻略法を知っていたので楽だった。
魔力を持たないオオカミ型の獣の群れにも遭遇したが、左手にある≪黒鍵≫でなんとか薙ぎ払った。
「本当に強くなったわね。最弱だったなんて言われても誰も信じてくれないでしょうね」
「師匠がよかったんだよ」
「/////あ、当たり前よ!!///」
素直な賞賛を送ったら、照れてしまった。
「そんなに褒めたって、私が一緒に寝てあげるだけなんだからね///」
「はいはい・・・ってちょっと待て」
イーリスの騒ぎ声で魔物に囲まれてしまった。
俺はイーリスを見る。そして、
「頑張ってねダーリン♡」
てへぺろをしているイーリスを見て一発殴りたい気分になった。
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「ハアハアなんとかなった・・・」
「お疲れ様。流石に手を貸すべきだったかもしれなかったわ・・・≪再生≫しよっか?」
「いやいい。ターゲットを探すまでは俺が守り抜くって約束したしな」
「大好き!って惚れ直しただけなんだからね///」
「はいはい」
とはいえ、流石に疲れてきた。またさっきと同じようなことが起きたらちょっと強がりが通用しないかもしれない。
突然イーリスが歩みを止めた。
「≪騎士≫様、お疲れ様。ようやくターゲットを見つけたわよ」
俺はイーリスの指さす方向を見た。そこには元の世界でも良く似た亀がいた。
しかし、大きさは15m前後あり完全に巨岩だった。
「あれが≪サウンドタートル≫か・・・」
「じゃあ手筈通りやるわよ」
俺たちは≪サウンドタートル≫を暗殺する準備を整えた
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昨日の夜
『≪サウンドタートル≫という魔物がまず第一関門よ。この魔物はとにかく臆病。そして、とにかくうるさい』
『うるさい・・・ということは音で魔物を集めるってことか?』
『そういうこと。だから私たちは騒音を上げられる前に倒さなければならないのよ・・・』
『それだけならイーリスの≪空間≫があれば余裕なんじゃ・・・?』
『言ったでしょ?臆病なのよ。魔力を帯びているのが首だけなんだけど、簡単に顔を出してくれないのよね』
『・・・聞くだけ無駄だと思うけど、甲羅ごと攻撃するのは・・・?』
『この世界で≪サウンドタートル≫を切れるのはオリハルコンだけといったら強度はわかるかしら?』
『なるほど無理だ』
『しかも、甲羅には魔力が通ってない』
つまり、臆病な≪サウンドタートル≫に首を出させた一瞬を狙って叩き斬る。しかも一回よけられたら魔物を呼ばれてコンテニューは不可能。
想像以上に困難なミッションだ。
『けど、安心して。私は≪サウンドタートル≫から首を引き出す手段があるわ』
『マジか』
『マジよ。それはねーーー』
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俺はイーリスとの昨日の作戦を思い出していた。
そして、イーリスの魔力の波動が≪サウンドタートル≫の前に出現し、果物が落ちてきた。
『≪サウンドタートル≫はシナという果物に目がないほど大好物なのよ』
『本当か・・・?流石に信じられないんだが』
『本当よ。だって私はこの樹海の全ての魔物の生態を調べたのよ』
俺は絶句した。イーリスにとっては毎日が戦いだったんだということ。そして、今回に賭ける思いはおれなんかでは想像ができないほどなのだろう。
イーリスの覚悟に応えるために、俺は≪魔剣≫の準備をした。
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「さーて、達哉の方は大丈夫かしらね」
私は≪サウンドタートル≫の前にシナを≪空間≫魔法を使って落とした。
すると、甲羅にこもってばかりだった≪サウンドタートル≫から首が出てきた。
「よし!」
ここまでは上々。後は
(達哉、頼んだわよ!)
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予定通り首が出てきた。
まだだ。まだだ
俺は神経をすべて≪サウンドタートル≫の行動に集中した。
一挙手一投足すべてを感じろ!やつが一番油断した瞬間を狙え
≪魔剣≫を握る手から手汗があふれてくる。
そして、シナにかじりついた瞬間
「『魔剣:飛式』!!!!」
俺は離れた場所から首めがけて狙撃した。
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「!!!!!」
≪サウンドタートル≫はシナに集中していたため、一瞬遅れたが首を即座にしまった。
(間に合え!!)
俺の斬撃と≪サウンドタートル≫の首が引っ込むスピードとどちらが早いか。
(間に合え!!)
しかし、≪サウンドタートル≫の首が一瞬早くしまわれてしまいそうだ。
首をしまわれたら、甲羅の中から騒音で魔獣を集められてしまう!
「間に合え!!!」
そんな俺の願いは無情にも無下にされてしまいそうだった。
(クソっ)
「イーリス、悪い・・・」
「何が悪いのかしら?」
『魔剣:飛式』をまるごと≪空間≫が飲み込み、そして、首との距離をゼロにした。
「ビャっ!!!?」
≪サウンドタートル≫は『魔剣:飛式』を食らって首の機能が停止して動けなくなっている。
「ふぅ~ぶっつけだけどうまくいったわね!」
イーリスはほっと一息ついて、俺の真横に現れた。
「私たちの愛の結晶ね」
「ちょっと何言っているのかわからない」
暗に説明してくれと視線で聞くと、
「見た通りよ。達哉が斬撃を飛ばす所を先読みして≪空間≫の窓を設置しただけよ」
俺は絶句した。だって一ミリでもずれたらあの空間の窓は魔剣に食われてしまう。だから寸分違わず、設置しなければならない。
「天才かよ・・・」
俺は半笑いで呟いた。
「あら、愛の成せる業よ。達哉のことならなんでも理解したいじゃない」
ヤバすぎてもう怖い。けど
「でも、これでなんとか難所は突破ね。これから先にメインディッシュが待ち構えているけど準備はいい?」
「おうよ!」
こんなに頼もしいやつが相棒なんだ。負ける気がしない。
俺たちは最終決戦に向けて≪冥王の玉座≫に向かった。




