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脱出準備

一か月間俺はイーリスとの修行に明け暮れていた。

毎日毎日切られて、再生されて、くっついてを繰り返し・・・

俺はなんとかイーリスの動きを予測し、ついていけるようになった。

「やるじゃない!流石私のダーリンだわ!」

「ありがとう」

俺はイーリスの言葉が呪いによるものだと分かっているので、テキトーに流す。

≪空間≫魔法を使ってきたが、イーリスが≪空間≫魔法を使ってくるときは俺にくっつきたいときと決まっているので、背後を警戒。

すると、背後にイーリスの魔力を感じたので、横に避ける。

「もうつれないわね!抱きつかれなさい!」

俺はイーリスとの修行で基礎体力と相手の動きを予測する力が増した。

そして、その副作用で相手の魔力の発生源を直感で感じられるようになった。

おかげで≪空間≫の乱れる箇所を見破れるので、イーリスに抱きつかれて修行が中断するというような阿呆なことはほとんどなくなった。

ただその反動か手加減がなくなった。何が何でもくっついてやるという意志を感じる。

≪空間≫はもちろんだが、通常の魔法もガンガン使ってきた。

俺もそろそろ本気でイーリスから一本取りたいと思っていた。

「そろそろ本気で一本取らせてもらうぞ!イーリス!!」

「はっ!やってみなさい!達哉は今日も私に捕まって胸の中で抱き枕にされる運命なのよ!」

そう、初日を除いて俺は毎日抱き枕にされている。正直、年頃の男子からすると、誘惑に負けそうだが、薫を思い出して毎日自分の性欲と戦っていた。


そんなことを考えていると、イーリスが≪空間≫を使って距離を一気に縮めてきた。

俺はギリギリで≪魔剣≫を構えて迎え撃った。

「やっぱり単純な攻撃は対応されてきたわね」

「当たり前だ。馬鹿の一つ覚えみたいに何度も同じことをされたら流石に反応できるようになるわ!」

「素敵ね。そんな強がる達哉を屈服させたいわ(ハート)」

「お断りだ!」

俺は無理やり押し返す。そして、イーリスはそのままバックステップで≪空間≫魔法を使って、姿を消すが、俺の周りに魔力が張り巡らされた。

そして、四方八方から魔法が放たれた。

「クッソ!!」

俺はギリギリで≪魔剣≫で防ぐが、数発着弾した。

「痛~~~~~」

しかし、痛がっている暇はない。イーリスは右側から剣で足を狙ってきたが、ジャンプで躱す。

「ハアハア」

「能力値はすべて私が勝っている。けれど、読みとその根性だけは私を凌駕している。正直、ここまで強くなるとは思わなかったわ」

「そいつはどーも」

嬉しかったが、どうも素直になれない。ここまで一回も勝てていないのだ。

だから、俺は強くなった自分をイーリスに勝って証明すると決めていた。

≪魔剣≫を構えて、イーリスの動きを注視する。

イーリスも俺の構えを見て本気の目になる。


刹那の沈黙。俺たちの間合いは10mほど


イーリスが右横に空間を作って、剣を刺す。

すると、俺の首付近に魔力の乱れを感じたのでかがんだ。

そのままイーリスに近付き、頭めがけて突きを繰り出す。

それを首だけで避けて、横薙ぎの一撃を仕掛けてくる。

しかし、

「読めてんだよ!!」

俺はそれを左手を犠牲にして受け止めた。

腕に深々と刺さったが、散々痛い思いをしてきたおかげで死ぬこと以外かすり傷だと思っている。

「っつ!!!!」

初めてイーリスが動揺した。

この機を逃したらもう勝てない!!

「『魔剣:飛式』!!!!」

イーリスに向かって俺は至近距離でブチ当てた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「どうなった・・・?」

俺の目の前からイーリスは消えていた。

イーリスが≪空間≫を開いて逃げたということは予測できた。

そして、5mほど離れたところから出てきた。

イーリスの右手はブランとして、機能が停止していた。

しかし、≪再生≫の魔法が使われると、右手の機能が取り戻されていった。

「ズルいなあ。≪再生≫ってなんでもありかよ・・・」

俺は愚痴をこぼしながら、第二ラウンドに備えた。

そして、イーリスは右手の機能が回復したのをグゥパーして確認すると、右手を上に挙げた。

俺はそれに攻撃に備えた、が、


「降参、私の負けよ」


「え?」

俺は意味が分からなかった。イーリスは≪魔剣≫を食らったが、どう見てもぴんぴんしている。

「魔力のすべてを右手の機能の≪再生≫に使ったのよ。だから≪瞬間模倣≫も使えない。もちろん≪空間≫もね」

「あ、ああ、そ・・・うか」

俺は疲労で腰が抜けた。

イーリスに勝った。数千は負けているはずだがようやく一本とれた。

そして、俺は興奮で身体に熱がこもっていくのを感じた。

無職で魔力ゼロでも、この世界で最強クラスのイーリスに勝った!

俺は痛む左手と右手で握りこぶしを作って、上に振り上げ、

「おおおおおお!!!!!!!!!!おおおお・・・・・う」

歓喜の咆哮を上げた。

そして、そのまま意識を落とした。

「ちょ!私もう魔力切れなんだけど!」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「ん、痛!」

俺は目を覚ましたが、いつもと違って体の半身が包帯巻きで痛みを感じた。

「自業自得よ。勝つためとはいえ、私に向かってスキルを使ってきたんだから」

ベッドの横にイーリスが椅子に座っていた。頭が働いていないので、何を言っているのか理解ができない。

「あなたは魔力を食う剣を私に(・・・・・・・・・)向けたのよ(・・・・・)。おかげで私は魔力を食われて、自身の半身の機能を再起動するために、魔力を使い切ってしまった。だから、達哉に≪再生≫を使ってあげられなかった。お分かり?」

少し怒っているようだ。イーリスからすれば魔力を完全に奪われる危険性があったのだ。

「ご、ごめん。勝つためとはいえやりすぎた」

素直に謝罪をすることにした。

「ま、別にいいわ。怒りももちろんあるけど、私に並びたてるぐらいに強くなったんだもの。ようやく脱出の話ができるわぁ」

いつもの≪一目惚れ≫(呪い)に侵された笑顔じゃない。

ようやくこの≪奈落の樹海≫から解放されるという期待に満ちた笑顔だった。

俺は普段のイーリスのアタックよりも今のイーリスの表情の方が好きだ。

「////」

何考えてるんだ俺!余計なことを考えるな

頭をぶんぶんと振って邪念を振り払った。

「何してるの?」

イーリスが俺の奇行を見て心配そうに下から上目遣いで見つめてきた。

「ッ何でもない////」

俺がイーリスから目線を逸らすと、イーリスがニヤァと笑ってきた。

「ははあん、私の美貌にようやく本気で惚れちゃったのね。いいわよぉ。お風呂でも解禁するぅ?」

「それはダメだ」

「何でよ!!絶対さっき照れてたじゃない!!」

ギャーギャー言っていたが、いつものイーリスに戻ってよかった?のか。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

夕食時。

いつも通り並んで座って脱出に向けて話し合った。

「それじゃあ≪奈落の樹海≫を脱出する準備を始めましょう」

俺はコクンと頷いた。

「まずはヨルムンガンドの討伐ね。私が≪空間≫魔法を使ってもあいつには絶対に感知される。だからあいつを倒すことはマストね」

「だな。そのために一か月近く修行をしたんだ」

イーリスは頷いた。

「達哉の≪魔剣≫だけが頼りよ。私はサポートに回って達哉が攻撃する。それ以外に勝ち目はない」

「だけど実際どうする?運よく追い払えたけど、この≪魔剣≫を警戒しているはずだ。次から肉弾戦で来られたら、イーリスのサポートがあっても勝てる気がしないぞ?」

そう。俺が≪魔剣≫(ジョーカー)を持っているだけで、当てなければ絶対に勝てない。

しかも相手の急所になるところに当てないと、機能している部位から攻撃を受ける。

「そうね、だから奇襲を仕掛けるのが良いと思うの」

「奇襲?」

「私を囮にして、引き付けている間に達哉の≪魔剣≫で狙撃してほしいのよ」

それは俺も考えた。けれど、

「ヨルムンガンドがどこにいるかわからないとそれは不可能じゃないか?」

奇襲には相手がだらだらとしているうちに速攻を仕掛けるものと待ち伏せをしてポイントに罠にかけたりして一斉に攻撃を食らわせるものがある。

どちらもヨルムンガンドの居場所がわからなければままならない。

「それは大丈夫よ。あいつの居場所はわかってる」

「どこにいるんだ?」

イーリスは覚悟を決めた顔で言った。

「≪冥王の玉座≫この≪奈落の樹海≫の中心よ」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

≪冥王の玉座≫とも言われる場所でとぐろを巻きながら大蛇は己の目を奪った人間のことを考えていた。

あの人間は矮小で力のない存在だった。少し特殊な剣を持っていたが、それだけだ。

殺す方法は何通りも浮かんだ。

だから、己の好む方法で獲物を殺しにいった。

しかし、あの人間は最後までその瞳に絶望を覚えることなく、己を睨んでいた。

気に入らない。

不快ながらもあの人間を食おうとした。

しかし、その瞬間に片目を奪われた。

何がなんだかわからない。だが、最後まで睨んでいた目の前の人間の仕業だということは一瞬で把握した。

目を奪われた怒りであの人間を殺してやろうとした。が、


『タダでは死なねえ。これ以上ヤろうっていうならてめえも地獄に連れて行くぞ?』


最後まで己に刃を向けてくる人間に生まれて初めて恐怖を覚えた。

あの人間は危険だ。大蛇はそう判断して逃げ出した。

うまれて初めて抱いた恐怖に大蛇は激怒した。

次出会ったら骨の髄までしゃぶりつくしてやる。

大蛇はそう決めて、自身の目の前で仮死状態にしてある獲物に丸のみした。

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