本当の呪い
俺はドラゴンを倒してぶっ倒れたらしい。
目を覚ますとベッドの上にいた。
見覚えのある部屋に枕元にある相棒の≪魔剣≫。
外を見てみると、夕日が傾きかけていた。
傷はイーリスの≪再生≫の魔法で完全に治っていた。
最近気づいたことだが、イーリスは面倒見が良い。
強い言葉や生意気な態度を取られることがあるが、根は良いやつなのが良く分かった。
当たり前のように≪再生≫の魔法を使わせているが、本当に貴重なことだ。
ただの≪回復≫の魔法では体力しか回復しない。
しかし、≪再生≫の魔法は体力はもちろん疲れなども完全に元に戻す。
2週間ちょっとでドラゴンを倒すことができたのは完全にイーリスのおかげだ。
「お礼でも言いにいくか」
俺はここまで鍛えてくれたイーリスにお礼を言うために、ベッドから起きて居間に向かった。
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「いないな」
この家の中だけではなく、外も探したが見つからなかった。
「外出してるのか?」
今の生活に鬱屈しているイーリスはときたまヨルムンガンドに見つからない程度に家の周辺を散歩している。
「風呂でも入るか」
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イーリスの家には風呂があった。
結構立派なもので、室内風呂だけではなく露天風呂もあった。
俺は元の世界で風呂が好きだった。
お湯に浸かるとその日にあった嫌なことがどうでも良くなってくるからだ。
俺は部屋から着替えを取りにいってから、風呂場に向かった。
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風呂の前に着いたので、戸に手をかけてガラッと開ける。
すると、
「え?」
「え?」
俺たちは目があった。
そして、イーリスは生まれたままの姿だった。そして、ベールを覆っていなかった
イーリスは一瞬固まっていたが、すぐに再起動して、みるみるうちに頬を紅潮させた。
「キャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
イーリスは身体を縮こまって恥部を隠した。
俺はすぐに目をそらしたが、一瞬見てしまったイーリスの裸が脳裏に焼き付いて離れない。
「悪い!!!イーリスが風呂にいる可能性を完全に失念してた!」
「いいからここから出ていきなさい!!」
また目が合う。
「ヤバっ!!!!」
キイーーーーーン
イーリスの目から異音が鳴り、目に魔力が集まり魔力が可視化した。俺はそれが≪魅了≫の発動の合図だと思った。
しかし、時すでに遅し。
もう逃げ切ることはできなかった。
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目を開けて、イーリスを見た。
≪魅了≫ということはイーリスを魅力的に感じてしまうということだろうか。
イーリスも目を閉じていたが、ゆっくりと目を開けた。
目が合って、一瞬ドキッとしたが美人だなぁという感想以外には何もなかった。
それは初対面から思っていたから、何も変わった気がしない。
どういうことだ?
そう思っているとイーリスが口を開いた。
「達哉」
「な、なに?」
イーリスから初めて名前を呼ばれてしまう。
しかも何か顔が赤いし、息が乱れている。
俺は顔をイーリスからそらしているが、官能的な感覚を抱かずにはいられなかった。
端的に言ってエロい。
「好きよ」
「え?」
何言ってんだ??
「って別にあんたのことなんて好きなだけなんだからね!!!」
「ブヘラ!!!」
イーリスは思わずこぼれた言葉に羞恥心を感じて俺を亡き者にしようとしてきた。
俺は本気でぶん殴られたが、イーリスが俺のことを好きだって言っていたのは耳にしっかり届いていた
なんなんだよ・・・
暗転していく意識の中でそんな疑問を抱いていた。
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「ごめんなさい・・・」
イーリスは本気で反省している。
いつもはしているベールを取り去って、俺のベッドで俺の隣に座っている。
レースのベビードールを着ていて、まるで恋人の距離感だ。
しかし、とうのイーリスは頭を抱えていた。
「それで何が起こってるんだ?俺はイーリスと目を合わせて≪魅了≫を食らったはずなんだが、イーリスの方が何かおかしいんだが・・・」
普通イーリスの目を見た俺が魅了されるはずだ。
これではまるでイーリスの方が魅了されている。
「お察しの通りよ。この目にアルブがかけた呪いは≪魅了≫ではないわ。これは、その・・・」
「?」
言いにくそうにしていたが、羞恥心を振り切って口にした。
「≪一目惚れ≫よ///」
・・・なんじゃその呪い。俺は頭が痛くなって眉間をもんだ。
「アルブが私に執心なのは言ったわよね?私をどうしても欲しがったあいつは≪一目惚れ≫の呪いをかけたのよ。効果は呪いをかけられて一番|初めにみた異性を好きになる《・・・・・・・・》というものよ」
「そのベールは・・・?」
「≪精霊の護布≫というものよ。効果は状態異常を和らげるというもの。偶々持っていたから助かったわ。なかったらあのクソ神を好きになってしまうところだったわ」
そうか・・・つまりこの状況は
「呪いのせいということか」
「そうよ。達哉のことが大好きで大好きでたまらないわ。って違うわ!!達哉のことなんて好きすぎてたまらないだけなんだからね!!」
そういって俺の手をにぎにぎしてくる。
何言ってんだかわからないんだが、ラブラブオーラが全開だ。
「あーもう何言ってるのよ私!!」
自分の心情の変化に身体がついてこないらしい。
「大丈夫か・・・?」
「心配してくれてありがとう(ハート)好き」
もうなんなんだよこれ・・・
「あーもう!呪いだってわかってるのに達哉のことが好きで好きでたまらなくなっちゃうじゃない!!どうしてくれるのよ!!」
俺が何をした・・・
「ちょっと私がさっきから好き好き言ってるのに何も反応してくれないじゃない・・・流石に寂しいわ・・・」
上目遣いで俺の方を子犬のように見上げてくる。
「っ///」
ヤバい死ぬほど可愛い。顔はベールに覆われて全貌は見えていなかったが、それでも美人であることは断言できた。
しかも、今までの勝気なイーリスではなく不安を感じているようで保護欲を誘うような魅力があった。
「トイレに行ってくる!!」
俺は逃げた。このまま一緒にいたらまずいと思って緊急回避に出た。
「アッ待って!」
イーリスが何か言っていたが俺は無視した。
俺はこの後の生活をどうすべきか真剣に考えたが解決策が全く見つからなかった。
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食事の時間
イーリスがいつもの対面に座るのではなく隣に座っていた。
グラタン風の美味しそうな食事を横に並べていた。
すると、
「あ、あーん////」
「何してんの・・・」
「見、見ればわかるでしょ///」
俺はどうすればいいのか分からなくなった。
受け取らずにいると、
「そうよね。私が達哉のことを好きなだけで、達哉は私のことを好きなわけじゃないもんね・・・」
これだ・・・罪悪感に苛まれて「あーん」を受け取ろうとすると、
「何を言ってるのよ私は!!」
俺はスプーンをのどに突っこまれた。
「グフっ!!!!」
「あっごめんなさい!あーでもその苦しそうな顔も好き///って、あーもう何をやっても達哉を好きになっちゃう!!」
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就寝中
「ん?」
真夜中、背中に感触を感じて起きた。
「こんばんは///」
「っっ」
振りむくとイーリスが俺の布団の中に入ってきていた。
「何でおれの布団に入ってきてるんだよ(小声)」
「しょうがないでしょ!!あなたのことが頭から離れなくて身体が勝手に動いちゃったのよ!」
ツンデレっぽいがツンデレじゃない・・・
ただただデレにデレを重ねているだけだ・・・
「・・・とりあえず布団から出てくれ・・・何をしてんの?」
「さ、寒いだろうから温めてあげているのよ!」
俺から離れるどころかどんどん俺に密着してくる。
形の良い乙が俺の背中で感じられて下半身がどんどん熱を帯びてくるのを感じた。
「もう出てけ!!!」
俺は心の底から叫んだ。
その後、なんとか俺にくっつかないというところで妥協してもらった。
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修行中
「ほら!もっと相手の次の動きを予想しなさい!だんだん遅れてきているわよ!」
「クッ!!」
俺はギリギリでイーリスの動きについていく。
背後を取られて、いつも通り背中を切られると思った。
が、
「つ~かまえた(ハート)ふふ背後を取られちゃだめよ」
イーリスは俺の背中に抱き着いてきた。
「おい!いい加減にしろ!これじゃあ修行にならないじゃないか!」
「し、仕方がないじゃない、これが呪いのせいだというのはわかってるのよ!だけど、達哉を見ると何も考えられなくなっちゃうのよ!」
「///」
ちくしょう!こっちも呪いだと分かっていても照れてしまう!
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入浴中
流石にカギをかけたから入ってこないよな?
「お・ま・た・せ」
イーリスはタオルを巻いて風呂場にいた。
「カギは閉めたはずなんだが!?」
「そんなの≪空間≫の魔法を使えば無駄よ」
「なるほど・・・じゃねえよ!早く出てってくれ」
「いいじゃない。身体を流してあげるわよ」
イーリスは自分に泡をまとわせている
「・・・一応聞いておくが何してんの?」
「見て分からない?私の体で達哉の身体を洗ってあげようとしているのよ」
イーリスは平静を装っているが、滅茶苦茶顔が赤い。自分が馬鹿なことをしていると分かっているのだろうが、呪いのせいで俺に対してご奉仕をしたいという感情が勝ってしまっているのだろう。
一先ず俺はダッシュで風呂場から退散した。
そんなこんなで一週間俺たちは呪いの影響を受けながら過ごした。
「達哉好きよ」
「おう、俺も」
イーリスのすることが呪いという前提で俺はイーリスのやることをすべて受け入れた。何をされても無関心でいることでなんとか修行も再開できた。
イーリスも自分の想いが呪いのせいだということを受け入れて無心になろうとしているのが目を見ればよく分かる。
こんなところ薫に見られたらどう思われるんだろう・・・
俺はロザリア王国にいる想い人のことを考えながら謝罪をした。
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「・・・どうしたの?」
「何か無性に腹が立ってきました。こう出会い頭に一発ぶん殴らないと気が済まないというか・・・」
「何言ってるんだか分からないよ・・・」
次回は薫sideです




