ドラゴン戦
いつも読んでくれてありがとうございます!
「くらえ!!!」
「甘い」
「グフっ」
俺の上段からの振り下ろしはあっさり躱され、腹に一撃をもらって腹から血がドバドバと出る。
「・・・本当に弱いわね~世界で一番弱いと言われれるだけあるわ」
「・・・うるさい」
アルブの来襲から2週間たった。現在俺はイーリスとの剣の修行に励んでいた。
この≪奈落の樹海≫から脱出するにはあの大蛇、ヨルムンガンドを倒さなければならない。
そのために、俺は強くならなければならない。
世界で一番弱いとはいえ、基礎体力は向上させなければならないのは重々承知していた。
「大振りがすぎるのよ。もうちょっと相手の動きを読みなさい」
「分かってる・・・」
イーリスは≪スキル≫の≪瞬間模倣≫で昔見た一番強かった剣士の動きを再現している。
だから、イーリスの動きは完全に剣士のそれだった。
そして、イーリスは真剣勝負が一番重要だとして、真剣を使っている。
今も俺は腹から切られたが、その瞬間に≪再生≫魔法で俺はすぐさま復活した。
1週間、何度も何度も切られまくった。2週間目になると、切られたときに一番ダメージを受けない方法を感覚で掴んできた。
「何度も言うけど相手の動きを常に読みなさい。目線は特に重要よ。後は魔物と戦う時は身体の構造にも注意しなさい」
「・・・了解」
何度も言われて頭ではイーリスの動きを読んでいるつもりだが全くできていないのが現状だ。
「まあそれでも最初のころに比べたら圧倒的に動きが良くなってきたけどね」
「そいつはどうも」
「あら、素直な賞賛よ?」
ベールの奥からのぞかせるルビーの瞳が若干優しくなっているのを感じて照れくさくなった。
「この世界の一般人くらいには強くなれたわね」
「まだ一般人か・・・」
自惚れではないが今の俺は死ぬような経験を何度も何度もした。
だけど俺は無職だ。
やはり、職業における差というのは覆しがたいらしい。
「2週間でここまで強くなれたなら上出来よ!誇りなさい。あなたは無職の壁を超えたのだから」
世界で一番弱いと言われていた俺が今や一般人だ。そう考えたら、強くなったのか・・・?
けど、イーリスに斬られまくっていただけだから、強くなった気がしない。
イーリスは俺のそんな顔を見てため息をついて一つ提案した。
「なら、魔物を狩ってみましょう」
「狩り?」
「そう。この辺りの魔物は普通なら絶対に勝てない魔物たちよ。けど貴方にはその≪魔剣≫がある。だからいい勝負ができると思うわ」
「イーリスがそういうならやってみるか」
俺はイーリスの提案に乗ることにした。
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「・・・おい、もしかしてあいつか?」
「ええ、貴方の能力なら大丈夫よ」
俺はイーリスに連れられて、樹海を歩く。
あまり遠くに行きすぎると、ヨルムンガンドに感知されてしまうので、家の周辺で獲物を探していた。
獲物は簡単に見つかった。しかし、イーリスは簡単に提案するが、あればどう見たって小型のドラゴンだ。
「じゃあこっちに誘導するわね」
「ちょっ、心の準備がー」
「はい≪火球≫」
イーリスはドラゴンに向かって≪火球≫を放って、こちらに注意を向けさせた。
「じゃあ私は少し離れたところで見物してるわ」
そういって≪空間≫魔法を使って、距離を取る。
俺は近付いてきたドラゴンと向き合う。
小型とは言え、3m弱の体型に翼をもっている。爪や歯をみれば一回捕まっただけでジ・エンドなのは想像に難くない。
「グオー!!!!!!!」
咆哮が放たれた。俺はあまりの声量に耳を塞ぐ。
「痛ってぇな!!」
咆哮を上げると、ドラゴンは空に飛んだ。そして、空からブレスを放ってきた。
とんでもない早さ、だったはずだった。
「イーリスの斬撃に比べれば圧倒的に遅いな!」
俺は≪魔剣≫をブレスを食う。魔力が含まれた攻撃は俺の≪魔剣≫の大好物だ。
ドラゴンは空からブレスを何度も放ってくるが、すべて≪魔剣≫で防ぐ。
「無駄だ!」
遠距離攻撃はすべて対応できる。後は俺が攻撃を食らわせる番だ。
「『魔剣:飛式』!!!」
俺は上空にいるドラゴンに俺自身の唯一のスキルである『魔剣:飛式』を発動した。
しかし、上空にいるドラゴンは素早い動きでそれを躱した。
「くそっ・・・ハアハア」
『魔剣:飛式』を発動する代償に俺は体力を削られる。
空にいるドラゴン相手に俺の飛び道具は通じない。
「無駄打ちしてしまったな・・・」
ドラゴンのスピードを考慮にいれていなかった俺のミスだ。
それなら、動きを封じなければならない。
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「なにやってんのよ・・・」
少し離れた木の上でイーリスは座りながらつぶやいた。
「あのドラゴンは頭がいいから、今の攻撃が危険だってことは本能で感じているでしょうね」
優雅な雰囲気でイーリスは呟いた。
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「とにかくドラゴンを地面に引きずり降ろさないと!」
俺は≪魔剣≫でドラゴンのブレスを防ぎながらそう考えた。
空に遮蔽物がないので、ドラゴンのブレスが素通しなので木が遮蔽物になるように森の中に逃げた。
「これで上から俺の姿は見えないはずだ」
そこで俺はドラゴンが空から降りてくることを期待して、『魔剣:飛式』をいつでも発動できるようにしたが、ドラゴンは降りてこないで、俺めがけてブレスを放ってきた。
「なんで!?」
見えてないはずだ。なぜ狙われる!
森の中に入るが、ブレスは俺の元に放たれた。
「偶然ではなさそうだ。ってことは!」
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「固有スキルの≪感知≫ね。あれでドラゴンは空から急襲して狩りをするのよね」
イーリスは持ってきた紅茶を優雅に飲みながらつぶやいた。
「遮蔽物は使えない。遠距離のわざも避けられる。さあどう勝つのかしらね」
ニヤニヤと聖職者にあるまじき悪魔のような笑顔で楽しんでいた。
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≪感知≫系のスキルだろう。どう考えてもそれしかなかった。
俺の攻撃手段がすべて封じられた。
木の陰にいるのに、ブレスが届く。
「無駄、っだ!」
数十発は防いだが、ドラゴンは全く疲れる様子がない。
≪魔剣≫がなければ何回死んだか分からない。
異邦の勇者を除いて、この世界の人間では勝てないというのはよく実感できた。
「魔力切れを期待するのも無理か・・・ハアハア」
けれど、俺自身も『魔剣:飛式』を放っていないのにも関わらず、体力がどんどんなくなっていく。
その時、俺の手から汗で滑って≪魔剣≫が滑り落ちた。
「しまっ!!!」
俺はブレスを食らう直前なんとか身体を捻って、致命傷は避ける。
「っ痛~~~~」
全身が丸焦げになるのは避けたが、背中の半分が焼けた。
いくらイーリスとの修行で痛みに強くなったとはいえ痛いものは痛い。
狙い撃ちにされるのではと思い、即座に≪魔剣≫を拾って構えたが追撃がない。
「なぜ、追撃がこない・・・?」
俺はドラゴンの方を見たが、何かを探しているようだった。
「もしかして・・・」
そのままドラゴンを観察していたが、俺はある仮説が思い浮かんだ。
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俺は覚悟を決めた。ドラゴンは空から降りてくる気配は全くない。しかし、野生の勘で俺の≪魔剣≫を警戒しているのだろう。
「ふうー」
俺は深呼吸をした。そして、樹海の中をダッシュでドラゴンの真下をめがけて走った。
ドラゴンは俺の動きを補足して、ブレスを放ってくる。
「あと10・・・あと5、3、2,1!」
目標の地点に着いたときに俺はあえて止まってブレスを受けた。
「っぐっつう」
イーリスとの修行で身に付けた致命傷を避ける方法でダメージを受けた。
「!!!」
ドラゴンは俺を見失った。
「やっぱりな・・・」
ドラゴンが俺の動きを見切れていた理由。それは音だ。
普通、空から攻撃してくる魔物と遭遇したら、遮蔽物を使って距離を取る。
しかし、逆に獲物が足音を立てて逃げれば逃げるほどこのドラゴンの格好の的になるのだ。
だから、俺はギリギリまでドラゴンに接近した。
ブレスを食らったのは油断をさせるために万全を期すためだ。
獲物を刈る瞬間が一番隙ができる。
トドメを刺したはずの獲物が突然消えるのだ。そして、視界には木々で誰も映っていない!
「食らえ!!!『魔剣:飛式』!!!」
「!!!!」
ドラゴンもギリギリのところで気づいて、躱したが翼に当たった。
翼部分の魔力を失って飛ぶことができなくなり、それと同時にドラゴンも開けた場所に落ちてきた。
「よぉ、随分遠くから痛めつけてくれたな!!」
「グ、グオー!!!!」
俺はドラゴンが落ちてきた場所で≪魔剣≫を構えていた。
堕ちてきたドラゴンも怒りで俺を見つめ、その尖った爪となんでも噛み千切れそうな歯をぎらつかせて俺を食い殺さんとしてくる。
「遅え!!!」
イーリスの剣はほぼ予備動作が見えない。それに比べればドラゴンの単調な噛みつき攻撃など楽なものだ。
躱して≪魔剣≫で横っ腹を吹っ飛ばそうとしたが、左腕で防いでくる。
が、
「グオ????!!!!」
ドラゴンの左腕が完全に機能停止した。
≪魔剣≫は魔力を持ったものの触れた部分を機能を停止させることができる。
だから、インファイトになった時点で俺の方が圧倒的に有利だ。
「もう一丁!!!」
そのまま回転して、右側から首を狙うが、右手で防がれるが右腕の機能を停止させた。
「よしトドメだ!」
『何度も言うけど相手の動きを常に読みなさい。目線は特に重要よ。後は魔物と戦う時は身体の構造にも注意しなさい』
俺の脳内にイーリスの警鐘が鳴り響く。
ドラゴンの目線は俺の胴体を見ている。そして、人間にはない動きが確かに存在した
ドラゴンの股下から尻尾が襲い掛かってきた
が、俺はギリギリのところで読み切り、身体を捻って躱した。
ドラゴンは今度こそ驚愕で目を見開いている。
「行けええええええええええええ!!!!」
俺はドラゴンの身体を横に一閃。≪魔剣≫でぶっ飛ばした。
「グオ・・・ォゥ」
ついにドラゴンは前から倒れた。
「よっし!!」
俺は目の前で拳を作って上に掲げた。
が、
「あ、あれ」
限界がきて意識がなくなった。
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「ふぅ、まあギリギリ及第点ってところかしらね」
満足そうに倒れている達哉を見て、イーリスは少し嬉しそうだった。
「でもまだまだね。ヨルムンガンドが本気を出したら絶対に勝てない」
しかし一瞬で真剣な顔に戻った。
「帰ったらまた反省点を踏まえて修行をしなきゃね」
イーリスは達哉と一緒に空間に吸い込まれてその場から消えた。
戦を書くのって難しいなぁ




