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金は天下の回りもの

作者: 秋暁秋季

注意事項

起承転結はありません。

短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。


あとがき、ご不快に思われる事もあると思います。

お気をつけて。

秋の澄んだ空気が立ち込める。周りは既に紅葉していて、真っ赤な楓がヒラヒラと僕達の間に降り注ぐ。共に行動していた彼女は掌を上に向けて、そっと落ち葉を受け止めた。今この景色を楽しんでいるようだった。

「あぁ、この世界が手に入るのならば、私は億万長者にだってなってやるよ」

彼女らしい台詞だった。拝金主義らしい、彼女の。


近くのベンチに移動し、二人揃って腰掛ける。彼女は小生意気に釣り上がった双眸を、も一つばかり釣り上げて、僅かに頬を膨らませた。手には山を作るクリームのフラペチーノ。季節限定の栗と蜂蜜を混ぜたもの。

「むぅ、失敬な。私を金の奴隷とは」

「実際そうだろうに.......。すぐに感情が高ぶるとすぐ札で叩こうとする」

誕生日が近い事を知った僕は、精巧に作られたオルゴールを送った。空色の陶器に描かれた、ロココ調の白馬。可愛らしい物が好きな彼女は非常に喜んで、胸に抱きしめた。それまではいい。それまでは。しかし次に言い放った一言がこれである。

――幾らした? へぇ、随分とお安い。誕生日、期待しておいて。

それから数ヶ月後、彼女は満面の笑みを浮かべ、諭吉の入った封筒を手渡した。誕生日プレゼントとの事。

.......嬉しくない訳ではないけれど、貰っておいて文句を言うなどと何事かと言われそうだけど、我儘一つ言っていいのなら、形に残るものを頂きたいと言いますか.......。

その情景を思い浮かべて、苦い顔。決して持っている珈琲が苦いからでは無い。彼女はすっと顔を覗き込んできた。

「何? あの時のこと気にしてんの?」

「まぁ少しは.......」

「お金って便利だよ。万人が持つ共通の対価だから。これみたく嵩張(かさば)らないし」

先程までの不機嫌そうな表情は何処へやら。彼女はカップの底を支えるようにして、フラッペを啜る。中身が半分程になったところで、軽く左右に振った。悩ましげにこの紅葉した世界を仰ぎみて、ため息をついた。

「君への誕生日としてお酒を贈ろうと思ったのさ。好きでしょ? でも私は好きじゃないんだよ。だから凄く凄く考えた。何がいいのかなー。甘いかなー。辛いのが良いかなー。でも分からなかった。数時間かけても分からなかった。だからこれを対価として、好きな物を買えば幸せだと思った」

伏し目がちな双眸から覗く瞳が酷く憂いげだった。あの時の行動を自問自答するかの様に、今度はカップの先を持ち、クルクルと回転させる。

あぁ、僕は何も考えずに文句を吐いてしまったのか。彼女が選んだ背景さえ知ろうともせず。

「.......ごめん。考え無しだった」

「いいんだよ。好きな時に好きなように使えるのがお金の良いところ。気分屋な子にあげるのは現金が一番良いと思う」

空になったプラスチックを捨てに彼女は席を立つ。その姿を見送ると、もう、この赤い世界に溶けて無くなってしまいそうで、思わず、手首を掴んだ。

彼女は虚をつかれた顔をして、大きく目を見開いた。

「じゃあ、このお金で君が選んだ物が欲しい」

その問に答えるように、彼女は口角を上げた。歩むべき場所は駅に向かって。

金の亡者を書くことが無意識に多かったので、改めて考えてみました。で、出た答えがこれです。


万人が持つ共通の対価。何にでも変えられる便利なもの。貰っても特段困らないし、嵩張らない。


性悪ばっかりですからねー。私が書く子は。

故に、公平な物を欲してるんだろうなぁと。

数字もお金も嘘を付かないし、一番公平ですからね。

嘘をつくのは人間だけです。

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