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とある日~最近の小さい子~

 



「よっ、フェリシティ」


 何処からともなく聞こえた男の子の声。

 それに反応したのは、一足先にブランコに腰掛けていた女の子。


「おはよう! さんちゃん」


 くるりと振り返ったそこには、満面の笑顔が輝く。


「もう昼だけどな?」

「まぁ……そうなんだけどね? ふふっ」


 もはや慣れた様に、冗談交じりで言葉を交わす2人。だが……



 今日も滅茶苦茶可愛いじゃねぇか! しかもTシャツやっぱヤバイ! クッキリとその大きさが……


 今日も滅茶苦茶格好良いなぁ。しかもシャツから覗く二の腕、短パンから顔を出すふくらはぎ。その筋肉は……



 爽やかな外見とはうって違う、心の内を見る限り……彼らが真のカップルになれる日は意外と遠いのかもしれない。



「そういえばさんちゃん? ちょっと気になってたんだけどね?」

「ん? なんだ?」


「この公園……遊んでいる子居ないよね?」

「遊んで……あぁ確かにな」



 この公園、黒前第一児童公園は黒前駅近くにある公園だ。それこそ住宅地の中にあり、近くには拓都の母親が勤めるこども園も存在する。


 そして2人の記憶にあるのは、歳の近い子どもらが駆け回る公園。

 ただ、フェリシティの言う通り今現在、昔の自分らを彷彿させるような子どもの姿はない。



「あの時って、結構一杯居たよね?」

「確かに。けど、今の小さい子ども達にはゲームがあるからなぁ」


「あぁ……」

「良くも悪くもネット環境が整ってるし、家に居ながら友達と対戦なんて日常茶飯事だろ? まぁ俺達の場合は外で遊ぶのが当たり前って感覚もあったしさ?」


「確かにねぇ。現代技術の発達は素晴らしいけど、昔の……自分達が見てきた光景が消えるのは寂しいよね?」

「まぁな。そうじゃなかったら俺達も出会えてなかったし」


「うんうん……って! ささっ、さんちゃん? 良くもまぁサラッとそんな恥ずかしい事言えるよぉ」

「ん? だって本当の事だろ? 大体、フェリシティだって大概だぞ? なんせ転校初日に……」


「あー! あー! ダメです! キコエマセーン」

「いきなり外国人に戻ってんじゃないよ」


「シリマセーン。シリマセンヨ」

「なっ……ったく、何気に便利だよな? それ」


「ところでさんちゃん?」

「うおっ、また変わった!」


「あのアスレチックの真ん中、そびえ立つ塔の天辺にある鐘……覚えてる?」

「鐘? あぁ、両側からよーいドンで真ん中の塔までダッシュ。そんで先に鐘を鳴らした方が……」


「勝ち! そうそう」

「懐かしいな」


「でもね? さんちゃん? 今ここで問いたいのだけど?」

「なんだ? 俺の記憶だと五分五分の成績だった気がするけど?」


 ……知ってる。さんちゃん手加減してくれてたよね? 本気だと勝っちゃうから。なんかガキ大将って感じなのに優しくてさ。


「その成績だよ? さんちゃん手加減してくれてたでしょ?」

「はっ、はぁ? そんな訳ないだろ? いつだってマジだったっての」


「本当かな?」

「本当だよ!」


「んー、じゃあ信じるよ」

「俺は常に全力だっての!」


 ふふっ。やっぱり今も変わってない。さんちゃんはずっと……


「じゃあ……その力変わってないか勝負だっ!」

「えっ? ちょっ」


「先に鐘鳴らした方が勝ちね? よーいドン!」

「あっ、ズルいぞフェリシティ!」


「ズルクアリマセーン」

「こっ、このぉ」


 あの頃のままだね。



 こうして始まったアスレチック競争。勿論、2人以外に人の姿はない。


 そして、この暑さには流石に耐えきれず、普段この公園で遊んでいる子ども達は皆、ここ毎日市民プールに行っている事を……2人は知る由もない。




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