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今日から学校と仕事、始まります。②莞

ララチェール様の愚民観測、サビしい年末年始

作者: 孤独

まだ人が知らない星々を管理、販売をしている不動産会社が宇宙空間にある。

その会社の名は”星占ほしうらない”不動産。超絶美しく敏腕女社長、ララチェールによる完璧なる経営を行っている、星の不動産である。

ドレス姿の高貴なお姿に似合うようなオフィス。キレイな机と椅子、ホットコーヒー、万年筆。

椅子に座る彼女の後ろには、物凄く大きい本棚にビッチリと詰まった分厚い本達が置かれている。椅子に座り、それらの本に目を通しながら、星や土地を買いたいというお客様が来るのを彼女は宇宙で待っている。

とはいえ、


「地球の年末年始はお客様が来ないわね」


そーいう時期もあるせいで、今日は客人を1人呼ぶだけにした。大晦日だというのに、まさに愚民と嘲笑える労働者を呼んだのだ。


ピンポーン


「”星占”不動産にお届け物でーす」

「上がりなさいな、山口」


ドゴオオォォッ


「大晦日に呼び出すんじゃねぇ!!ララチェール!!」


ドアをぶち破って現れたのは配送会社の帽子を被った、スーツ中年男。肩に乗っけって運ぶほど、大きくて重たい荷物を届けに宇宙までやってきた。さすが、火の中、海の中、銃撃の中、宇宙の果てまで届ける物流企業の部長さん。……いちお、部長の仕事では現場はやんないよ。


「そこに置きなさい。アッシが持ってた魔道具で大晦日の夜を過ごすのです」

「俺は明日も朝から仕事だよ!!日本に帰るんだよ!まだ一睡もしてねぇーんだよ!」


◇        ◇


山口はホットコーヒーを飲みながら、人間が生息を許されたこの空間で地球を見下ろす。星を見上げて過ごす年越しあれど、地球を見下ろして過ごす年越しは初めてだ。

それはそれ。今日も今日とて仕事をしていた男は、自分が持ってきた代物をララチェールに尋ねた。


「でー。なんだよ……。この望遠鏡の魔道具」

「魔道具の名は、”影筒ティラミス”。国にいる誰かを上から覗き見れるという魔道具ですわ。この宇宙からならば、世界中の人々を見られるわ」

「ふーん。暇なんだな。んじゃあ、帰るわ」

「待ちなさい。山口。なぜ、あなたを呼んだのか?分かる?」

「嫌がらせ」

「違うわよ!……あなた達、お馬鹿な労働者達が過ごす休暇を眺め、一緒に笑ってやろうというためよ」

「俺は年末年始も仕事だよ。お前みたいに誰一人も訪れない不動産会社と一緒にするな。それと、この時期も働かない奴と一緒にするな。だいたい、こんなところまで届けられるのは俺達くらいだ!」


山口はめっちゃ帰りたいみたいな顔となるが、ララチェールはこの場所と地球が繋がる場所を一時遮断。山口を無理矢理でも帰さない。そして、ララチェールは


「私、人間共の年末年始って”サビ”との戦いなんだと思ったの」

「は?相変わらず唐突だな」

「それを確かめるため、この望遠鏡で愚かな生物に侵略された地球を観察するの!2台あるし、一緒に見ましょう!いなければ、あなたを宇宙空間に投げ込むわよ」

「……分かったが、見たりはしねぇよ。お前とは趣味が合わねぇー」


山口はコーヒーを一杯飲んだ後に、またコーヒー。よほど眠気がキツイらしい。

一方でララチェールはウキウキで準備。


「さぁー、愚民共の観察ですわ」


特別な力を宿す望遠鏡を操作し、地球に暮らす人間達を調査。その間に山口は冷蔵庫からミカンを出したり、蕎麦を茹でたりと……客人とは思えない動きを見せながら


「でー、なんで急にその”サビ”とか言い出すんだ?」

「よくぞ聞いてくれたわ。この年末年始、退屈でしたから。地球のお友達から色んな本を紹介されたわ」

「ほーん」

「この長い休みを利用し、長期連載の本をお読みになる愚民達がいるのであれば、私はその上を行く!長きに渡った漫画雑誌の数々を全て熟読するのですわ!!」

「お前が一番愚かだよ!!って、この本棚にあんの……全部雑誌じゃねぇーーか!!いくらになるんだよ!!」

「ふふふ、驚いたわね」

「馬鹿だよ、お前。でー、”サビ”は結局……?」

「それはある漫画の正義側のキャラクターが、三刀流の剣士の剣を受け止め、錆びつかせたの」

「大分、絞れたね。リアルタイムから見ても10年以上前どころじゃねぇーな。新世界行ってないな。そのキャラクターの名前知ってる人、そんなにいないよね。話聞いただけだと、主人公サイド風に言ってるけど、モブキャラだよね?」

「その時……みんなもこーいう”サビ”使いと戦って、年末年始を過ごすのかしら……と思って、観測するのですわ!」

「錆使いってそんなにバトル漫画にいねぇと思うぞ。ぜってー、扱い辛いぞ!」


無茶苦茶過ぎるだろって理屈で、宇宙まで呼び出された山口だった。

そんな理由はさておき、ララチェールは早速。自分の思った”サビ”使いと戦う人間達を発見した。


「!ふふ、やはり人間共は”サビ”と戦ってるわね。愚か愚か、……実に愚か」

「……もうすぐ、蕎麦できるけど。何が見えたんだ?」

「あなたもやってるんじゃなくて。車とかいうのを、人間達は必至に洗っているわ。ふふふふ、どーせ、4月、8月で同じような事をするでしょうに」


車の汚れを落とすための洗車をする人々の姿が……。

それを笑う、ララチェール。そして、またしても”サビ”使いと戦う人間達を発見。


「!あらあら。ここにも……ふふふ、にわかぶりがお可愛い事」

「蕎麦できたぞー。何が見えたんだ?」

「年越しライブに友達と一緒に来ていたにわかちゃんが、曲のサビ部分だけやたら熱唱的に歌っているわ!!サビのところでしか曲を知れないとは、愚か愚か!」


年越しライブでファンと一緒に歌う事になったが、”サビ”以外知らんから”サビ”だけやたらと熱く歌う人間達を発見。


「少し食えよ、冷めたら旨くねぇゾ」

「いただくわ……!あらあら、ここにも”サビ”に苦しんでいる子供がいるわ!おーほほほほほ、調子に乗っちゃうから、無様に鼻をつまむほど苦心する顔になっているわ!!」

「ちょっと、味薄いな……何が見えたんだ?」

「お寿司にはしゃいで、ワ”サビ”入りを口にした子供達が苦しんでいるのですわ!!まー、なんて愚かな子!お茶を飲むほど必死な顔ですわ!!それと山口、蕎麦もいいけど揚げ物はないのかしら?」


お寿司に入ったワ”サビ”に苦しむ子供達を発見。


「ねぇよ。贅沢はいらん」

「気の利かない奴ね。買ってきなさい。……!あらあら、やっぱり。この”サビ”に苦しむ人間共が……おーほほほほほ、これほどいるだなんて!!愉快愉快!!」

「何が見えたんだ?」

「待ちなさい。観測基準を10日ほど前にもどして……おーほほほほほ、これはこれは凄い”サビ”に苦しんでいるわー!なんと愚かな人間達よ!」

「何を見たんだ?」

「クリスマスから大晦日に至るまで、”サビ”しく1人で過ごす人間達が多いこと多いこと!お友達もいないのですか~~?」

「それ数時間前のお前もそうだろ?」


クリスマスから大晦日まで”サビ”しく過ごす人間達。……もしかして、年が明けても数日は……?


「気分だけでもお祝い気分に、苺ショートケーキですか~~?お一人分、スーパーでご購入ですか?ネット通販ですか~~?」

「そんなお前にはミカンがあるぞ」

「いただくわ。ふふふふふ、人間達の多くはなんと惨めなサビしいサビしい年末年始ですわね~」

「俺を呼んだのは、このオチにするためだけだったろ」

「サビしさに苦しめ愚民共~~~」

「サビしさに負けたのはお前だよ」


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