表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カイコ  作者: カリヤモモ
13/14

蘇生

「どうして…。どうして一緒に連れて行かなかったの?」

私はママを問い詰めていた。


母はどうして私を連れて行ってくれなかったの…?


「出来なかったのよ…。」

ママは悲しそうそうな顔をして

「何も無かった…。私には何も…。娘を育てる術が…何も無かったのよ…。」

と、私に静かに訴え

「今更言い訳しても…仕方ないわね…。」

と寂しそうに呟いた。私はふと我に返った。

「ごめんなさい…。私…。」

「…いいのよ…。娘には悪い事をしたと思っているわ…。」

と、言うとママは再度写真を見つめていた。

「…私が弱かったのね…。」

私も写真を見つめた。写真の中の子供達が笑っていた。


「でも…。この写真…なぜここに?」

私は不思議に思いママに尋ねた。ママは写真を眺めながら

「お店のお客さんにね、写真展に誘って頂いたの…。」

と、思い出して微笑んでいた。

「そんな場所とこに行くの初めてだったから、凄く緊張しちゃって。

 そうしたら、この写真が…。こっちまで笑顔になっちゃう様なこの写真がね…。

 目に止まったの。」

ママは嬉しそうに話していた。

「素敵な写真だな〜って見ていたらね。写真家の名前が娘と同じ名前だったのよ!

 同じ名前だわって驚いて…。彼女の作品ばかり見てたわ…。」

ママは少し照れながら、私を見て

「家に帰ってから、写真家かのじょの事調べたの…。」

と肩を竦めた。

「それで?」

「彼女はスペインで生活しているみたいなの。結婚もして、子供もいて…。」

ママは目に涙を浮かべていた。

「娘だと分かった時はビックリしたわ…。

 幸せそうで良かった…と思って…。」

そう言うと、写真をもう一度見つめた。優しさに包まれた写真。

「その後ね、何度も写真展に行ったのよ。もしかしたら、逢えるんじゃないかと思って…。」

ママは頷き

「そこで、前の旦那に会ったの。」

と噛み締めながら話した。

「旦那さんに…。」

旦那かれにお礼を言ったわ。素敵な女性に育ててくれてありがとうって。」

私はママの方をずっと見ていた。

旦那かれと娘の間でも、色々あったみたいだけど…。旦那かれ…。私が写真展に来た事を娘に話してくれたの…。

 そうしたら…。手紙と一緒に届いたの…写真これが…。」

ママは写真を見ながら微笑んでいた。

「娘さんとは?」

「…逢っていないわ…。」

「逢わないの?」

「もう…スペインよ。それに…。」

「それに?」

「そんな資格…。私にはないわ…。」

ママはそう言うと、

「はい。おしまい。」

と、手を叩いて奥に行こうとした。

「資格っているの?」

私は咄嗟に訊いていた。

「えっ。」

ママが振り向いたので、私はもう一度言った。

「…逢う…資格って…いるの?」

いつの間にか私は涙を流していた。

私は素敵な女性になっているだろうか?そんな資格私にはあるのだろうか?

私は母に逢いたかった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ