蜘蛛
は、と奏助が目を開けると、清潔そうな真っ白い天井が映った。
周りは不気味なほど静かで、物音ひとつない。
酷く重い体を無理矢理起こし、今までの記憶を掘り起こした。
いつも通り就職活動をして、断られて、公園で首でも吊ってやろうかと考えて、それから――
「……鈴、そうだ、あの子は」
ようやく外出許可を貰えて外に出ることが出来たと言っていたあの少女は今どうしているのか。
共にシェルターに逃げ込めたのは良いが、それ以降の記憶が奏助にはない。
ここは逃げ込んだシェルターの奥深くにある施設なのか、
それとも別の場所なのか。
兎にも角にも鈴を探さなければ。
無機質なパイプベッドから降り、
ベッド脇に揃えて置いてあったサンダルへ足を滑り入れる。
ちょっとした健康サンダルなのか、歩くたびに足の裏が痛い。
磨き上げられたドアノブを捻って僅かな隙間を作り、外の様子を窺う。
人の気配は、無い。
さらに隙間を広げて顔を出してよく確認してみたが、やはり誰も居なかった。
この施設はシェルターとは少し違うようで、壁に無数の配管のようなものが這っている。
ガスか何かが通っているのかと近づいてみたが、
どうやらこの配管は電力供給用のようだ。
無数の配管はそれぞれ別の場所へ伸びているらしいが、
一体何のために膨大な電力を供給しているのだろう。
「……おおい、鈴ー……どこにいるんだー」
やや控えめに少女の名を呼びながら、正体不明の施設を歩く。
不安と恐怖で自分よりも年下の少女を頼りに歩くという何とも情けない大人だとは思うが、
今は恥ずかしがっている場合ではない。
壁に手を突きながら当てもなく歩いていると、道が二手に分かれてしまった。
しばらく考えてから勘を頼りに右の道を選び、さらに足を進める。
ここまで歩いて誰とも擦れ違わないのが不気味だ。
「ここ、どこだろう……」
「僕が案内してあげようか」
意味もなく呟いた言葉に返事がくるとは思ってもいなかったため、飛び跳ねて驚いた。
勢いよく振り返ると、そこには菓子の袋を抱えた優男がにっこりと笑みを浮かべていた。
軍の制服を着ているところを見ると、この男は軍人なのだろう。
「ここは蜘蛛の巣状の構造をしているから、初めて来た人は迷っちゃうんだ。ちなみにそのまま進んじゃうと誰も使わないくっさいトイレがあるだけさ」
「あ、そう、なんだ……」
だから誰とも擦れ違わなかったのか。
ほ、と安堵の息を吐いてから、奏助は改めて目の前の優男に目を向ける。
笑みを浮かべながらポテトチップスを貪る優男は、
一般人の奏助から見ても普通じゃないと思った。
全く隙がないのだ。
奏助が不審な動きをしたらすぐに制圧できるように静かに身構えている。
そんな気がしてならない。
武器のようなものは携帯していないようだが相手は軍人。
鍛えた体を持つ軍人と、最近はまともに運動をしていなかった三十路の無職では勝ち負けなど最初から分かっている。
奏助に敵意がないと悟ったのか、優男はポテトチップスのかすがついた指先をぺろりと舐めた後、袋を握りつぶした。
「僕は寿駢秋葉、階級は少佐、旧ニッポン帝国軍レゾナンス部隊所属」
「れ、れぞ……?」
さらりと自己紹介された中に聞きなれない言葉があった。
レゾナンス部隊。いかにも特殊部隊というような名称だが、いったいどんな部隊なのだろうか。
首を傾げる奏助に優男――秋葉は最初に見せたような笑みを浮かべてちょいちょいと手招きをする。
どうやら本当に案内してくれるらしい。
「あ、えっと、俺は」
「阿久津奏助、三十歳。
大手企業の技術者だったが突然リストラを通告される……で、合ってる?」
ちなみに好きな女の子のタイプも把握しているよ、と言った秋葉に奏助は酷く動揺した。
この男とは初対面だというのにどうして奏助の細かい情報まで知っているのだろうか。
しかも好みのタイプなんて、個人情報も過ぎる。
いろいろな疑惑を抱きつつも笑みを絶やさない男の後ろをついて歩いていくと、
見たこともないような巨大な扉が姿を現した。
中央にはいくつか歯車が埋め込まれており、おそらくこれがこの扉の鍵代わりなのだろう。
秋葉は歯車のうちの一つを抜き取り、別の場所に埋め込む。
すると鍵代わりの歯車が回り始め、重い音を立てて扉が開いていった。
「――ようこそ、奏助。旧ニッポン帝国軍の中枢へ」
開いた扉の先にある光景は奏助の想像を超えていた。
空中に射影される街の様子、
いったい何の数値を現しているのか分からない数字の羅列、
部屋の中央でくるくると回っている地球儀。
まるで映画のワンシーンのようだ。
「奏助! 目が覚めたんですね!」
思わず感嘆の息を漏らしていると、
部屋の奥から己と共にシェルターへ避難した少女が駆け寄ってきた。
どこか安心したような表情を浮かべた少女――鈴は、奏助の手を握るとい能わるように撫でてくる。
相も変わらずこの子の手は、冷たい。
鈴の話によれば奏助は鈴と共にシェルターに避難した後、
極度の緊張とストレスから気を失ってしまったらしい。
どうりでその後の記憶がないわけだ、と肩を落としているとそれに気づいた秋葉が「僕が奏助を運んだんだよ~」と暢気な声を上げた。
世話をかけて申し訳なかったと頭を下げると、
秋葉は特に気にしてもいないのか、また手に持っていたポテトチップスを貪り始める。
よく見ればエスカルゴ味と表記されているが、美味いのだろうか。
ポテトチップスに疑惑の視線を向けていると、突然部屋が騒がしくなった。
周りを見てみると軍服を身に纏った何人かが苦虫を噛み潰したような表情を浮かべている。
彼らの目線の先を辿ってみると、ゆらゆらと長い黒髪を揺らした人物がこちらに向かって歩いてきているのが見えた。
長身で妖艶な雰囲気を放つ女だ。
「おはようさんさん、ニート君。元気でやってる? ……うんうん、健康状態には問題なさそうだね」
「は、はあ?」
ピンヒールをコツコツ鳴らしながら奏助の周りを一周した女は、口元の黒子ごと口角を上げた。
黒のストラップビキニに黒のショートパンツ、そして白衣を着るという何とも目のやりどころに困る服装である。
女は綺麗にネイルが施された手を差し出すと、綺麗な笑みを浮かべたまま口を開いた。
「あたしは鉄戒。ここの総轄さ。
気軽に鉄戒さん、もしくはオネーサンでもいいよ。
ここは我らがレゾナンス部隊の本拠地『蜘蛛の巣』さ」
鉄戒はさらりと言ってのけたが、総轄ということはここの責任者ということだ。
レゾナンス部隊が旧ニッポン帝国軍でどれだけ力を持っているのか奏助は知らないが、
一部隊の責任者が一般人にこんなに気さくに話しかけていいのだろうか。
取り敢えず手を差し出されたわけだし、と握手を交わす。
意外と骨張った手をしているなという感想を心の中で呟いていると、
ポテトチップスを貪っていた秋葉がすっかり笑顔をひっこめた顔で口を開く。
「ボス、奏助に言うことあるんじゃないの?」
「あー……うん、そうだねえ」
秋葉の言葉に、鉄戒はバツが悪そうに白衣の裾を正した。
「えー、ニート君」
「阿久津奏介です」
「奏助君、きみに謝らなければならないことがある。
きみがリストラされた原因は……あたしだ」
「……はあ?」
とんでもなく恐ろしい言葉を聞いたような気がする。
自分の、
リストラの、
原因が、
この人だって?
鈍器で思い切り後頭部を殴られたような感覚に陥ったが、今は打ちのめされている場合ではない。
なぜ自分のリストラの原因が目の前の人物なのか問いたださなければ。
「原因があなたって、いったいどういう……」
「うーん、それは見てもらった方が早いかな。エアスクリーンを見てくれ」
エアスクリーンとは空中に射影されている映像のことだろうか。
言われたとおりにそちらに目を向けると、
今まで街の様子を映していたものがぱっと格納庫らしき場所を映した。
そこには奏助たちを助けた朱い巨人、
そして初めて見る灰色の巨人がいた。
朱い巨人の周りでは鉄戒と同じように白衣を身に纏った男たちが集まって何やら話をしている様子が窺えたが、灰色の巨人の周りには誰も居ない。
「見えるかい? あの灰色のガルゼノン。
軍の研究者でも起動させることが出来ないんだ……
そこで、外の優秀な頭と腕を引っこ抜いてガルゼノンを起こそうと考えたわけ
……きみは、その優秀な頭と腕として秘密裏に選ばれていたんだ」
ただどういうわけかねえ、と申し訳なさそうに話す鉄戒の話をまとめると、
リストラという形をとったのはガルゼノンという超機密事項を守るためだったらしい。
素直に理由を述べて社員を引き抜けば軍の悪い噂が立つだろうし、
現在の国の状況を知ったうえで軍属になるのは相当の阿呆だ。
どうやら奏助より前にリストラを言い渡されたあの会社の同僚も、
秘密裏に『蜘蛛の巣』の一員となっていたらしく、
エアスクリーンにその姿が映し出されていた。
そして本来ならば引き抜かれた技術者はすぐに軍の人間が迎えに行く予定であるはずが、
奏助が勤めていた会社と軍の間でうまく連携が取れていなかったらしく、
結果引き抜かれた者が浮浪者の如く公園で身を縮こませるという奏助からすれば迷惑極まりないことになってしまった。
「鈴を連れて外に出たのも、きみを探すという名目だったんだ。
まさか、真ニッポン帝国軍が強襲してくるとは思っていなかったけど」
「……じゃあ、あなたが鈴の言っていた『蜘蛛』なんだ」
「そう。『蜘蛛の巣』の女郎蜘蛛ってところかな」
ふふ、と妖艶に笑う鉄戒に、奏助は安堵とも諦めともとれるようなため息を吐いた。
自分のリストラも最初から仕組まれていたことで、
軍の技術者でも匙を投げた兵器を何とかしろということか。
まったく、人生何が起こるか分からない。
黙りこくってしまった奏助に一度目を向けた鉄戒は、
すぐ近くのデスクに積み上げられていた書類のうち一つを手に取り、開いて奏助へ手渡した。
「これがガルゼノンの資料だ。あたしはちょっと用事があるから失礼するけど、
鈴と秋葉が案内してくれる。分からないことは二人に聞いてくれ」
「はあ……」
それじゃ、と軽く手を上げてその場を去っていく鉄戒の背中を見届けた後、
奏助は渡された資料に視線を落とす。
細かく部品名や重量、材質等が記入されている。
「こんなに緻密に計算されているのに、起動しないのは変だ」
「だから軍の技術者たちもお手上げなんだよ……食べる? エスカルゴ味のポテトチップス」
ばりばりとポテトチップスを食べながら勧める秋葉に丁重に断りを入れて、
次に奏助は資料から今まで発言をしなかった少女に目を向けた。
今までの情報を整理すれば、この子は良いところのお嬢様などではない。
お付きの者である『蜘蛛』が旧ニッポン帝国軍の軍人で、一般人では知りえないだろう砲台の名を知っていて、
さらには軍内部の案内を任されたということは、彼女もまた軍関係者なのだ。
こんなに、幼い少女がである。
「鈴はここで何をしている人なの? 技術者?」
「彼女はガルゼノンの設計者、真木博士の孫だ。僕らの心身ケア担当」
秋葉の簡単な説明に偽りはないらしく、鈴は深く頷いた。
軍関係者ではあるが、非戦闘要員であるらしい。
「ガルゼノンはまだ謎が多いです……奏助には格納庫に行く道中説明しますです」
こちらへ、と誘いながら歩き出した鈴に奏助と秋葉は静かについていく。
再び無数の配管が走る道を進んでいると、先頭を歩いていた鈴が一つなぞかけをしてきた。
「奏助、ガルゼノンの動力は何だと思いますか?」
「ううんと……電力? それとも原子力かな」
動力が何であれ、あの巨大なものを動かすとなれば膨大なエネルギーが必要になるだろう。
そうなると一番予想がつくのは電力や原子力といったエネルギー源である。
しかし、この国はもともとエネルギー資源不足だ。
あの巨人を動かすエネルギー源が一体どこにあるのだろう。
貯蓄でもしているのだろうか。
奏助の答えに鈴は柔らかく微笑むと、ゆるりと首を横に振った。
「ガルゼノンの動力源は「想い」です」
「……は?」
予想の遥か斜め上な答えが返ってきてしまった。
冗談だろうと秋葉に目を向けたが、彼も鈴の答えが当然と言わんばかりの顔でポテトチップスを貪っている。
「信じられないですよね。
でも、ガルゼノンは確かに人間の「想い」に共鳴して動くんです。
共鳴石の力を借りて……」
人間の想いの力を増幅させる不可思議な鉱石、共鳴石。
それを発見したのは鈴の祖父である真木博士だ。
その鉱石は多数の人の願いをかなえるような力は持ち合わせていないが、
特定の人物の想いと鉱石が予てより持つ特性が引き合うと不思議な力を授ける。
ある人には傷を治す力を与え、
ある人には僅か先の未来を見る能力を与える。
発見した真木博士はシャーマンや巫女等といった人物は共鳴石から力を授けられたのではと世間に発表していたほどである。
奏助もその話は知っていた。
そんな馬鹿な話があるかと鼻で笑っていたが、まさかこんな場所で共鳴石の話が出るとは思わなかった。
「そこにいる秋葉も共鳴石と共鳴して能力を得た一人
……彼の災厄からすべてを守りたいという想いが共鳴石に届いて……えいっ」
鈴は勢いよく振り返ると、突然履いていた靴を秋葉目掛けて蹴り飛ばした。
突然のことで何も反応が出来なかった奏助は情けない声を出して靴が顔面に当たるだろう瞬間を見届けるしかない。
靴を飛ばされた秋葉はといえば特に避けるようなそぶりも見せず、
指に付いた塩を舐めとっていた。
ああ、もうぶつかってしまう。
しかし、鈴が飛ばした靴は秋葉に当たることはなかった。
見えない何かに阻まれ、ぼとりと彼の足元に落ちたのだ。
ぽかんと開いた口が塞がらない奏助を横目に、
秋葉は落ちた靴を拾い上げると少女の足元に丁寧に置く。
「見ましたか、奏助。これが秋葉の共鳴能力『堅護』です」
「す、すげえ……」
超能力と言ってしまえば安っぽくなってしまうだろうか。
目の前でそんな力を見せられてしまえば、人間誰だって信じるしかない
危ないなあ、と文句を言いつつ鈴が靴を履き終わるまで肩を貸していた秋葉は、
奏助の視線に気づくと気恥しそうに頬を掻いた。
鈴の話によれば、秋葉のように能力覚醒しているのがもう一人いるらしい。
一体どんな能力の持ち主なのだろうかと想像を膨らませていると、
当初の目的地であった格納庫に着いたのか先頭を歩いていた鈴が足を止めた。
先程までいた部屋の扉と同じような造りの扉から歯車を抜き取り別の場所に埋め込むと、
重い音を立てて扉はゆっくりと開いた。
開けた視界の先にはエアスクリーンで見た光景と同じものが広がっている。
唯一違うところと言えば先程までいた白衣の人間たちが姿を消していたということぐらいだ。
「……あれ?」
ぐるりと一周格納庫の様子を見た後、不思議な点を見つける。
リストラの原因となった灰色の巨人だが、何故か片腕が格納庫の外に出てしまっているようだった。
隣に鎮座する朱いガルゼノンはしっかりと座って膝の関節球の上に手を置いているというのに。
「鈴、あれはどうして手が外に?」
「……実は、あのガルゼノン。紅獅子が強襲したあの時、一度だけ動いたらしいんです」
「……もしかして、俺たちを守った、あの手?」
奏助の言葉に、鈴は深く頷いた。
そういえば紅獅子に襲われ踏み潰されそうになった時、
巨大な手が奏助たちを守ってくれたのを思い出した。あの手がこの灰色の巨人のものらしい。
「でも起動しないんだろ?」
「そうです。だからみんな不思議がって……」
どこか不安そうに呟いた鈴の横で、奏助は灰色の巨人を見上げた。
どんな理由で一時的に起動したのかは定かではないが、この巨人のおかげで命が救われたのだ。
ありがとうな、と小さく礼を述べて巨人に近づくと、閉じたはずの扉がまた開いた音が聞こえた。
振り返るとそこには若い男が面倒くさそうな表情を浮かべて立っていた。
軍服の上着を肩から掛け、黒いインナーシャツが覗いている。
じんわりと額に汗が浮かんでおりタオルを持っているところから、訓練か何かが終わった直後に格納庫に寄ったのだろう。
「やあ、大和。訓練終わり? 鈴が怒るよ、身体をしっかり休ませないと」
「戦争が始まったんすよ、ゆっくり寝ていられません……そのオッサン誰っすか」
ぎろり、と秋葉に大和と呼ばれた男が睨みつける。
明らかに敵意剥き出しの視線に思わず背中に嫌な汗が浮かんだ。
「阿久津奏助、軍の協力者だよ。
奏助、こいつは佐野大和准尉。きみと鈴を助けた『黄昏』のパイロットさ」
奏助と大和の間に入った秋葉がにっこりと笑みを浮かべた。
どうやら大和の厳しい視線に気づいて庇ってくれたらしい。
大和はといえば既に奏助に対して興味を失ったのか、
秋葉に小さく頭を下げてから朱いガルゼノン――黄昏に歩み寄って労るように鋼鉄の脚を撫でた。
秋葉の話が本当ならば彼は奏助と鈴の命の恩人である。
しかし、あの態度はどうだろう。
第一自分はまだオッサンではない。
オッサンの階段を登り始めているだけだ。
大事なことなので何度も言うが断じて、
誰が何と言おうと、
オッサンではない。
じょじょに彼に対する恐怖が怒りの感情に変わっていく。
その様子に気配で気が付いたのか、ガルゼノンに目を向けていた大和が何気なくこちらを見た。
先程と同じく敵意剥き出しの瞳に、奏助も対抗するように睨みつけた。
「お、お二人さん? 仲良く、仲良くね?」
二人のただならぬ雰囲気に笑顔を崩した秋葉が困ったように鈴を見た。
少女もまた困った表情で二人を見遣った。
誰がこんな若造と仲良くするものか。
ふん、と明後日の方向を向いて己の昂った気持ちを沈める。
大和も奏助と同じように視線を外し、苦虫を噛み潰したような顔でタオルを握り締めた。
重い空気に耐えきれずこぼれた鈴のため息が酷く浮き彫りになって空気に溶けていく。
灰色のガルゼノンと同じように胸元が観音開きになっている黄昏の共鳴石が、淡い光を放つ。
まるでその場の二人を笑っているように。