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ノルド・ドラゴン  作者: 本藤侑
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5.試練4

 案の定伝説のドラゴン、ラヴァンケノスでした!やっぱりそうでしたか、だなんて思える筈がない。


 むしろ邪竜王ラヴァンケノスだと分かってからの方が目の前のドラゴンが恐ろしく見える。ラヴァンケノスの伝説はドタール王叙事詩だけでなく同時期の様々な文献に載っている。


 ラヴァンケノスとその配下のドラゴンたちは人間を手当たり次第襲い、喰らい、殺した。なんと沢山の人々が亡くなったことか。


 ドタール王が退治してくれなければ更に犠牲が出ていたことだろう。


 リコネル自身、今の今までお伽話だと思っていた。現実に見たことがある炎竜は凶暴で恐ろしいがラヴァンケノスの伝説ほどの力は無い。だから過去の人々が誇張して書いたとか、教訓話として作られたとか、そんな風に思っていた。


 しかし、眼の前に佇んでいる自らを炎竜王ラヴァンケノスだと自称する巨大なドラゴン。信じるか信じないかは別としても、伝説通りの力を振るうことは簡単そうに感じられた。


『私の名前を知っているのだな』


 そんなドラゴンは自分の知名度が高いということを認識しているようだった。


 少女はどう答えようか悩む。下手なことを言えば殺されそうな気がして。そして、結局知っていることをありのまま話した。下手なことイコール誤魔化すことだと思ったから。


「はい。子供の頃、よくお話をしてもらいました。ドタール王が邪竜の王ラヴァンケノスを退治する話を」


『邪竜王とは酷いな。邪竜王とは。まぁ、人間にそう思われても仕方がないことはしたんだがな。だが流石に邪竜王はなぁ…邪神でもあるまいし…』


 口ではそう言いながらも、ドラゴンは昔を悔いているようだった。


 意思の疎通が可能。そして立場が違う相手の気持ちを理解できる。こんなドラゴンがラヴァンケノスであるなら今までの邪悪の化身という認識を改める必要があるだろう。何かしら理由があったに違いない。


『一応訂正しておくが、私は炎竜王だ。炎竜の王、私が神から受けた冠位はそれだ。決して邪竜王ではない。分かったな?』


「は、はい…」


 それだけは譲れないと念を押して注意するドラゴン。少女はたじろがながらもなんとか返事をした。


『よろしい、では命じられたとおり全てを話すとしよう。…始まりは私が神から冠位を受ける前、そう、人間という生物が生まれる前のことだ………』


 ドラゴンの話は長く、少女は既に魚を丸ごと7匹も食べ終わっていた。

少女が全てと言ったのでご丁寧に全てを話してくれているのだ。

 しかし、ドラゴンの話はとても面白く、少女は一切飽きることは無かった。



 ドラゴンの話の長さは彼の人生の長さを示す。ラヴァンケノスという1匹のドラゴンの誕生は遠いはるか昔、人間どころか多くの生物がまだ存在しない時代、神代まで遡る。


 その時代、"中つ神"の手によって地上に最初に創造された生物こそが現代で言うところの古代竜、原始のドラゴンである。


 ラヴァンケノスはその時代に生み出されたドラゴンで当時は名前も無かった。


 古代竜たちはそれぞれが固有の属性を神より受け取っており、自身の属性の性質を生まれながらにして熟知し、最大限に利用することが可能だった。


 長い年月が過ぎ、ドラゴンそれぞれが地上に適応してきた頃、中つ神からの信託を聞いた。


「格大陸ごとに力のあるものを選び、大陸の守護者とせよ」と。


 竜たちは互いに壮絶な争いをし、力と知恵を比べあった。

結果、格大陸の守護者が決まった。


【ノルド大陸守護者】

 炎竜王ラヴァンケノス


【イスト大陸守護者】

 水竜王イシュケレギナ


【シュド大陸守護者】

 地竜王ギルバリル


【ウェストゥ大陸守護者】

 風竜王ヴィエーツェル


 これらのドラゴンは中つ神より直々に守護者の証である冠位を貰い、後の時代に四大と呼ばれるようになった。


 神が何故守護者の選定をしたか。それはすぐに分かることになる。


 中つ神の別の側面、中つ神が光の側面であるなら、それは闇の側面。中つ神が善の側面なら、それは悪の側面。その名も"破す神"。邪神とも呼ばれる存在。


 その破す神の側面が台等し、地上に影の魔物を撒き散らし始めたのだ。


 破す神の側面が大きくなった為、中つ神は弱体し、対抗出来ない。

よって地上のドラゴンたちを強いリーダーの下で団結させ、地上の秩序を守ろうとしたのだ。


 各地で大規模な戦いが行われ、影の魔物は次第に数を減らしていった。


 眷属の減少により、破す神は勢いを無くし、ドラゴンたちと力を取り戻した中つ神によって封印された。


 中つ神はドラゴンと影の魔物との戦いによって地上に散らばった魂の破片を材料として地上に新たな生物を創造し、それ以来殆ど地上に干渉することは無くなった…。


 こうして神代は終わりを迎え、新しく生み出された人間などの生物による時代が始まる。


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