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蒼い海の真ん中で  作者: 八咫烏
7/11

初陣とカレーの思い出

Tule, tule, tyttö, nyt kanssani tanssiinkun meillä on riemu ja suvinen sää!

(おいで娘よ 俺と踊ろう夏の夜の喜びを楽しもう)

今日は天気が良く、波も穏やかだ。普通ならとても良い日になりそうだ。乱立する水柱と水に映る白い線と上空を舞う飛行機さえなければ...

そんな水柱や白い線をかいくぐって艦隊は、進んでいる。



 どうしてこうなった。そう暁は、思った。迎撃をもっと早く上げとけば良かった?見張りの人に注意を呼びかけとけば良かった?電探に異常があったか聞いておけばよかった?色々なことが頭によぎる。しかし、こうなってしまったからには最善を尽くしなければならないと思った。

「右舷魚雷1‼」

あぁ...またか...

「両舷半速‼」

「両舷半速、ヨーソロー!」

いつになったら帰ってくれるのかとイライラが募ってくる。しかし、よく空を見ると攻撃を仕掛けようとする敵機は、片手で数えれるほどしかいなかった。そして、最後の一機が、爆弾を投下した。

「各艦に伝令!被害報告をで。訓練なら音声通信を使用するが、実戦では傍受されるのを防ぐためや解読されるのを防ぐため、暗号化が容易なモールス信号で通信をしている。

「蒼鷺からの電文です‼我が艦の損傷軽微、航空機支障無し。です‼」

「いやいやいや、早すぎるだろw‼」

艦橋にいた人が言った。早い分にはいいのだが、余りにも早すぎる。こちらからの電文はまだ行っていないと思う。だが今は、損害が軽微だということに安心した。

 しばらくして、各艦からの被害が伝えられてきた。皐月たちの護衛艦隊「吹雪」「白雪」「深雪」「初雪」

は、全く損害を受けていなっかった。駆逐艦なので、機動性が良く爆弾を着弾させるには難しかったのだろう。一方で、大型艦になると機動性が落ち、着弾する確率が上がるが山本の「金剛」の様な戦艦だと装甲板で、受け止めることができる。実際に、1発命中したが、高角砲一機が壊れただけで、目立った外傷は、見られない。しかし、そうできない艦種がある「航空母艦」である。低速でありながら装甲が薄い。それに航空機の爆弾、魚雷、燃料を積んでいるので、二次被害の可能性がある。しかしながら、なずなたちの「飛鷹」「隼鷹」「狩鷹」からは、そんな報告がなくて幸いだった。

「金剛の偵察機からの電文です‼我、敵艦隊発見せり。空母4、戦艦2、駆逐艦5を確認。です。」

偵察機を出していてくれて本当に助かった。しかし、陸に上がったら何を言われるのかを考えたら怖くなった。

「作戦司令部に連絡、これより第一次攻撃隊発艦、反撃す。」

「続けて、「蒼鷺」「飛鷹」「隼鷹」「狩鷹」に電文、攻撃隊準備、準備でき次第発艦、以上」

そう言うと、攻撃隊の準備のため艦内はあわただしくなった。




5隻分の飛行機が、編隊を組んだその姿は壮観だった。しかし、戻って来た時には、何機かは戻ってこないだろう。空母の艦長のほとんどの人が言葉に表せれない悲しみに駆られる。

「攻撃隊から入電です。我、これより攻撃す。以上です。」

とうとう接敵した。向こうではどうなっているのだろうかと少し考えた。対空砲火の間を縫って爆弾や魚雷を投下しているのだろうか?エンジンや羽から火が出て、海に落ちたのだろうか?どちらにしても、何か心に来るものがある。

 それから、30分後。やや遅い時間に攻撃隊は、帰って来た。暁は艦橋から、着艦する飛行機を見ていた。どの飛行機もボロボロだった。中にはコックピットのキャノピーが割れているものもあった。そして、次に着艦した飛行機は、後部座席のキャノピーが赤く染まっていて外から中の様子が分からなかった。

どの航空隊員もぐったりしていた。現存する飛行機全てが着艦したのは、敵を見つけたのが遅かったこともあり、太陽が水平線に接していた。もう攻撃はできないので帰港を暁は、命令した。




「艦長、攻撃結果を報告します。敵空母3隻、駆逐艦2隻を撃沈。戦艦1隻は、中破、もう一隻は健在です。」

「ありがとう」

目的を果たしているのか果していないかは、微妙な結果だった。

「あと、我が艦の艦載機70機の内、未帰還15、損傷している機体は23です」

暁は、泣き崩れそうになった。あれほどの実力を持っていても帰ってこれない機体がでた。飛行機乗りが可哀想になった。しかし、戦争には犠牲が付き物だと誰かが教えてくれた気がした。誰だっったかな?凄くもやもやしていた。



港に着くともう夜だった。暁は、船を降りた。そこには、鎮守府の人が、外にテントを立ててカレーをふるまっていた。今日は、金曜日だったことに気が付いた。

「お姉ちゃん、こっちこっち‼」

夕日が呼んでいる。半日聞いていない声なのに、とても懐かしく感じた。なずなたち、皐月たちも同様に感じた。

「被害は、どれくらい?」

なずなが暗い顔で切り出した。

「15機帰ってこなかった」

暁は、正直に言った。

「私のところは、17機だね」

カレーを口にしながら夕日が言った。

「でも戦いに、犠牲は、付き物だとお父さんが言っていたよ」

夕日の言葉で、暁は、思い出した。あれは、第二次朝鮮戦争中ぐらいだった。双子は、父親と母親の4人で、カレーを食べながら、戦争の中継を見ていた。その時に父親が言ったのだ。普段は厳しかったが、大切なことを数多く教えてくれた。変わって母親は、とても優しかった。何か困ったことがあれば、寝ている間に解決してくれていた。

 暁は、それを思い出して自分の悩みを解決してくれないかと願おうとしたが、ここには母親は、いない。誰も解決してくれない。そう思った。

「今日は、疲れたしサッサと報告してお風呂に入って、ねよっか」

「賛成!!」

「その方がいいですね」

そうなると、暁達は立ち上がり鎮守府に歩いて行った。

敵艦隊は、殲滅できなかったが、カレーは、殲滅されていた。




どうも、八咫烏です。投稿が遅れたことを深くお詫び申し上げます。理由としては、リアルが忙しかったのです。(いや、マジで...)

さて、この話を急いで書いてるときフィンランド民謡の「Säkkijärven Polkkaサッキヤルヴェン・ポルカ」という歌を聴いていたのですがとても良い曲だと思いました。何というのか作業が早くなる気がしました※個人的な感想です。是非とも聴いてみてください。それでは、また。


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