戦争をする理由
できれば、戦闘シーンを入れてひと段落したかった...
桜の季節が終わり、桃色の海に飲み込まれていた港町は、緑の海に変わっていた。空からは、心地良い温度の光が降り注いでいた。
「やっぱり、外で食べるおにぎりは、いつも以上に美味しいね♪」
「そうだね」
「私も外で食るのが好きですよ」
暁と夕日、それに加えて今日は、皐月たちも外で昼食を取っていた。普通は食堂で食べるのだが、明日はよく晴れると天気予報で聞いたので、自分たちで弁当を作った。
「いや~平和っていいね!」
溶けかけのアイスのような笑みで、夕日が言った。
「いやいやいや、今は戦争中なんだよ!何のために訓練をしてるのさ」
暁は、突っ込んだ。
「あれ~?なんでだっけ?」
夕日の言葉に周りは、啞然とした。こんな艦長の指示を聞かないといけない蒼鷺の乗組員が、可哀想に思えてきた。
「だーかーらー、敵と戦って航路を開くためでしょ!」
暁は、夕日にあきれ気味に教えた。そんな様子を横から見ていた皐月は、姉妹っていいなと思った。それにしても、夕日の言った通り、戦時中ではなければ、本当に良い一日だと思った。いや、例え戦時中にしても今日のような穏やかな日が、続ければそれでいいと思った。
「おーい」
誰かに、声を掛けられたので、暁達は後ろを振り返った。そこには少し汗を流しながらこちらに走るせりながいた。
「そんなに、慌ててどうしたの?」
「提督が、今すぐに部屋に来るようにと言われてたよ‼」
暁達は、何故か嫌な予感がした。
司令がいる部屋に暁達は入った。そこには、なずな、すずな達の第二軽空母戦隊と前田がいた。前田は、少し浮かない顔をしていた。
「全員集まりました。」
山本がそう言うと、司令は振り返った。
「集まってくれてありがとう。急で申し訳ないが、一週間後、君たちには出撃をしてもらう。海上封鎖をされて、長い月がたった。そのせいで、国内の品物が少なくなっていて、このままでは、内乱になってしまう。それだけは避けたいから、力を貸してほしい」
とても真剣な顔で、暁達に訴えた。と、同時に皐月の願いが崩れかかっていた。
「何故、私たちの艦隊なのですか?」
暁は、質問をした。ここには自分達以外にも多くの艦隊がいることを暁は、知っていた。そんな中で、何故この艦隊なのか、わからなっかた。そして、自分と夕日は、着任して日が浅い。
「君達の航空隊は、とても素晴らしい。あれなら初めての勝利を得ることができると思った。」
「しかし、訓練を開始してからの日が浅すぎます‼」
皐月が、怒り気味で反論した。目には涙が、浮かんでいた。
「それだけではない。模擬戦闘では、暁達の艦隊の被弾率がやたら低い。これが、実戦で反映されたら仲間は、助かるじゃないか」
皐月は、言葉を失った。
「そんなの可哀そうではないですか‼」
そう言うと、皐月は扉を開けて、泣きながら走っていった。
皐月が何処かへ行ってしまった後、部屋は静まり返っていった。
「私と妹をここに着任させたのは、最初っから私たちの幸運を使いたいだけだったんですね」
珍しく暁は、怒っていた。以前から自分たちには幸運がありすぎていると薄々気付いていた。自分達は、必要だとされていたのでここに来た。しかし、実際には自分達の幸運が、必要にされていた。それならば、いなくても同じものだと思った。
「あのような事を言ってしまって申し訳ないと思っている。しかし、実際にその通りなのだ。」
「それならば、私たちは戦わなくていいということになりますよ。アイテムと同じ様に使うことになるんですよ?言っときますけど、人は物ではありませんよ!」
暁の的確な言葉に、司令はひるんでしまった。
「提督...」
山本が心配そうに、声をかけよとする。
「...上層部の人は、確かに君たちを物のように、扱おうとしている」
「なら、私たちはここをッ」
「しかし‼僕は、君たちをそんな風に扱わせない‼何が男が、偉いだ‼何が上司だ‼僕は、真の平等を選ぶ‼だから、僕は、君たちを物としてではなく、一人の人として扱う‼それだけは約束する‼」
こんなにも必死な司令は、誰も見たことがなっかた。
「その言葉、本当ですか?」
「ああ、」
「言葉ではなく、その行動で示してくださいね」
「ああ、」
司令は、とても安心した。しかし、まだ言わならない事があった。
「こんな話をした後で申し訳ないけど、君たちの出撃は決定事項なのだ。やってくれるか?」
「はい。司令が私たちを物として扱わないのであれば」
「そこは、約束する」
「なら引き受けましょう」
「引き受けるなら一人少ないのでは?」
山本が、そんな事を言った。
「そうですね。私が呼びに行ってきます。」
暁は、そう言うと、急いで探しに行った。後から、夕日もついていった。
自分の願い事が、崩れた。そう皐月は、感じた。戦いになると、あの日々のような事が二度と来ない。
皐月は、砂浜に近い階段で座り、顔をうずめていた。
「見つけた」
暁だとすぐに気が付いた。しかし、今は一人にして欲しかった。
「さっちゃん、出撃をしたら、平和じゃなくなると思ったんでしょ」
自分の思いを読まれていて驚いた。
「私、よく考えた。さっちゃんの願いを叶えるには、出撃しかないとおもうの」
「そうしたら、誰かが欠けてしまうじゃない‼」
暁とは、仲が良かった。しかし、今回ばかりは、カッとなった。
「そもそも、私たちが外に出ている事が、不思議じゃない?」
突然の問いかけに驚いたが、その通りかもしれない。海上を閉鎖されているこの世界。敵に航空母艦がいるのなら、この場所に爆弾が落とされているはずだった。
「海を取り戻したら、もっと平和になるんだよ」
「それは、暁と夕日が...」
「そんなの、敵の事情だよ。ほら、行こ」
「でも、誰かが...」
「それならば、私たちにまかせなさい♪」
皐月は、何故か申し訳なくなってきた。そして、立ち上がり顔を上げて振り向いた。
「いえ、暁たちを守るのは、私です」
「「そう来なくっちゃ♪」」
そこには、暁と夕日がいた。自分は暁と話してるつもりでいたので、驚いた。そして、多数の航空機のエンジンの音がした。それは、とても綺麗な編隊を組んでいた。標識を見ると、白鷺と蒼鷺の航空機だった。
「そういうことだったんだね」
「初めてみたよ」
暁と夕日は、そんな事を言った。何か謎が解けたようだった。やがて航空隊は、沖に向かった。皐月は、それらを目で追った。やがて、航空隊に負けないような美しいものが、目に映った。それは、ゆっくりと海に沈んでいく。皐月は、この美しい海を守るためにも、頑張ろうと思った。
「ほら、行こ♪」
暁は、手を伸ばした。
「うん‼」
暁の手をとり皐月は、二人とともに歩き出した。
司令の部屋では、三人が戻ってくるのを待っていてくれていた。
「改めて、出撃をしてくれるかな」
「はい!」
皐月は、はっきりと答えた。
大切な物、人を守るために戦う。それが、皐月の戦う理由。
戦争を終わらせるために戦う。それが、司令の戦う理由。
時代を変えるために戦う。それが、暁と夕日の戦う理由。
戦う理由は、人それぞれ。理由は違えど生きて、戦わなければいけない。それが戦争なのである。
どうも、八咫烏です。読んでいただきありがとうございます。
そういえば、気が付けばもうすぐ年末ですね。年末年始は、どうお過ごしの予定ですか?自分は、やっぱりゴロゴロ〜としたいです。
ところで、本作中で皐月が見つけた、本当に守りたい物、わかりましたか?是非、読者の皆さんも、大切な物、守りたい物を探してみてください。もしかしたら、今後の人生を変えてくれるかも知れませんよ♪
それでは、次話で会いましょう。よいお年を~